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Chapter-02『新たなる神姫、深紅の力は無窮の愛が為に』
第五章:どうか、この日々がずっと続きますように/03
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「それじゃあ遥さん、行ってきまーすっ!!」
「はい、いってらっしゃい。楽しんできてくださいね♪」
それから少しした後、いつもの私服に着替えた戒斗とアンジェは揃って戦部家を出ていた。
遥の笑顔に見送られながら、アンジェは戒斗とともに家の玄関から外界へと足を踏み出していく。
玄関扉の向こう、広がる外の景色は……やっぱり雨模様で。小雨の降りしきる外界はどこか穏やかで、細い小雨の奏でる雨音は穏やかで……少しの湿気を孕んだひんやりとした空気も、小雨の立てる音色も。その全てが、アンジェにとっては心地の良いものだった。
出来ることなら、彼にもそうであって欲しいとアンジェは思う。隣に立つ彼にとっても、雨がそういう心地の良いものであって欲しいと……アンジェは何気なく、そう思っていた。
「よし、行こうぜアンジェ」
「そうだね、行こうかカイトっ」
アンジェが内心でそう思っている傍ら、戒斗はビニール傘をバッと開いていて。彼はアンジェに先んじて玄関の軒下から一歩踏み出ると……アンジェの方に振り返り、そっと彼女を手招きする。
すると、アンジェは笑顔でそれに頷き返し。戒斗の差すビニール傘の覆う中にそっと足を踏み入れ……そのまま、傘を差す彼の左腕にしがみついたりなんかしてみる。
「えへへ……」
「おいおい、アンジェ……」
「うーん、駄目かな?」
「……まあいいか」
そうしてアンジェにしがみつかれた戒斗は、最初こそ驚いたような戸惑ったような、そんな顔をしていたが。しかし自分の左腕にしがみついたまま、ちょっとだけ照れくさそうな顔で見上げてくるアンジェの顔を見ると……まあいいか、と思い。僅かに頬を朱に染める、すぐ傍にある彼女の笑顔を眺めながら、戒斗はフッと小さく表情を緩めるだけで。そのまま、決して彼女を振り払うようなことはしなかった。
「じゃあ、行こうかカイト」
「そうだな」
そんな風に彼女にしがみつかれながら、戒斗はアンジェと二人で雨の中を歩き出して、家のガレージへと赴いていく。
いつものように電動シャッターをリモコンで開け、そこに格納されていた愛機・Z33のエンジンに火を入れる。
ささやかな雨音を全て掻き消すような大排気量V6エンジンの獰猛な音色を聴きながら、戒斗はやはりオレンジ色のボディに寄りかかり。ガレージの外に見える雨模様の空を眺めながら、暖気が終わるまでの時間をぼうっと待っていた。
「…………」
そんな彼の姿を、すぐ傍で眺めながら。アンジェはふと、何気なく思っていた。
(いつの間にか……君の背中は、すっごく大きな背中になってたんだね)
昔は自分と同じぐらいの背丈で、泣き虫で寂しがり屋な彼の……自分はお姉ちゃんみたいな感じだったのに。いつの間にか、気付かない内に彼の背丈は自分よりずっと高くなっていて。あんなに可愛らしかった背中も、知らない内に凄く頼もしい大きな背中になっていて。それがアンジェは少し寂しくて、でもそれ以上に嬉しかった。
まあ……泣き虫で寂しがり屋、甘えん坊さんという意味では……本質的には何も変わっていなくて。自分の方が姉みたいな感じだと思うことも、今でも多々あることだ。
(……あの時、君が僕を守ってくれたみたいに。いつか僕が、君の全部を守ってあげたいな)
こんなことを考えながら、アンジェは同時にそうも思っていた。
(ずっとずっと、君と一緒の時間を過ごして……いつまでも君の傍で、君だけを守っていてあげたい。それだけが……僕の、たったひとつの願い)
それは、アンジェの抱く唯一の願いだった。
昔からずっと思っていたことで……商店街での一件を経た後から、更に強くなっていたアンジェの切なる願い。ずっと彼の傍で、彼だけを守り続けてあげたいという……それがアンジェが胸の内に秘めていた、ただひとつの想いだった。
「よし、そろそろ暖まったか。じゃあ行こうか、アンジェ」
「……うん!」
そう思っている内に、Zの暖気が終わっていて。アンジェがそんなことを考えているとも知らぬまま、戒斗は彼女の名を呼び。するとアンジェは彼の方を振り向きながら、柔らかな笑顔で頷き返していた。
「はい、いってらっしゃい。楽しんできてくださいね♪」
それから少しした後、いつもの私服に着替えた戒斗とアンジェは揃って戦部家を出ていた。
遥の笑顔に見送られながら、アンジェは戒斗とともに家の玄関から外界へと足を踏み出していく。
玄関扉の向こう、広がる外の景色は……やっぱり雨模様で。小雨の降りしきる外界はどこか穏やかで、細い小雨の奏でる雨音は穏やかで……少しの湿気を孕んだひんやりとした空気も、小雨の立てる音色も。その全てが、アンジェにとっては心地の良いものだった。
出来ることなら、彼にもそうであって欲しいとアンジェは思う。隣に立つ彼にとっても、雨がそういう心地の良いものであって欲しいと……アンジェは何気なく、そう思っていた。
「よし、行こうぜアンジェ」
「そうだね、行こうかカイトっ」
アンジェが内心でそう思っている傍ら、戒斗はビニール傘をバッと開いていて。彼はアンジェに先んじて玄関の軒下から一歩踏み出ると……アンジェの方に振り返り、そっと彼女を手招きする。
すると、アンジェは笑顔でそれに頷き返し。戒斗の差すビニール傘の覆う中にそっと足を踏み入れ……そのまま、傘を差す彼の左腕にしがみついたりなんかしてみる。
「えへへ……」
「おいおい、アンジェ……」
「うーん、駄目かな?」
「……まあいいか」
そうしてアンジェにしがみつかれた戒斗は、最初こそ驚いたような戸惑ったような、そんな顔をしていたが。しかし自分の左腕にしがみついたまま、ちょっとだけ照れくさそうな顔で見上げてくるアンジェの顔を見ると……まあいいか、と思い。僅かに頬を朱に染める、すぐ傍にある彼女の笑顔を眺めながら、戒斗はフッと小さく表情を緩めるだけで。そのまま、決して彼女を振り払うようなことはしなかった。
「じゃあ、行こうかカイト」
「そうだな」
そんな風に彼女にしがみつかれながら、戒斗はアンジェと二人で雨の中を歩き出して、家のガレージへと赴いていく。
いつものように電動シャッターをリモコンで開け、そこに格納されていた愛機・Z33のエンジンに火を入れる。
ささやかな雨音を全て掻き消すような大排気量V6エンジンの獰猛な音色を聴きながら、戒斗はやはりオレンジ色のボディに寄りかかり。ガレージの外に見える雨模様の空を眺めながら、暖気が終わるまでの時間をぼうっと待っていた。
「…………」
そんな彼の姿を、すぐ傍で眺めながら。アンジェはふと、何気なく思っていた。
(いつの間にか……君の背中は、すっごく大きな背中になってたんだね)
昔は自分と同じぐらいの背丈で、泣き虫で寂しがり屋な彼の……自分はお姉ちゃんみたいな感じだったのに。いつの間にか、気付かない内に彼の背丈は自分よりずっと高くなっていて。あんなに可愛らしかった背中も、知らない内に凄く頼もしい大きな背中になっていて。それがアンジェは少し寂しくて、でもそれ以上に嬉しかった。
まあ……泣き虫で寂しがり屋、甘えん坊さんという意味では……本質的には何も変わっていなくて。自分の方が姉みたいな感じだと思うことも、今でも多々あることだ。
(……あの時、君が僕を守ってくれたみたいに。いつか僕が、君の全部を守ってあげたいな)
こんなことを考えながら、アンジェは同時にそうも思っていた。
(ずっとずっと、君と一緒の時間を過ごして……いつまでも君の傍で、君だけを守っていてあげたい。それだけが……僕の、たったひとつの願い)
それは、アンジェの抱く唯一の願いだった。
昔からずっと思っていたことで……商店街での一件を経た後から、更に強くなっていたアンジェの切なる願い。ずっと彼の傍で、彼だけを守り続けてあげたいという……それがアンジェが胸の内に秘めていた、ただひとつの想いだった。
「よし、そろそろ暖まったか。じゃあ行こうか、アンジェ」
「……うん!」
そう思っている内に、Zの暖気が終わっていて。アンジェがそんなことを考えているとも知らぬまま、戒斗は彼女の名を呼び。するとアンジェは彼の方を振り向きながら、柔らかな笑顔で頷き返していた。
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