上 下
30 / 131
Chapter-01『覚醒する蒼の神姫、交錯する運命』

第六章:目覚めよ蒼の神姫、その名はウィスタリア・セイレーン/01

しおりを挟む
 第六章:目覚めよ蒼の神姫、その名はウィスタリア・セイレーン


「これは、一体……?」
「遥さん、なの……?」
 目が眩むほどの閃光が収まった瞬間、戒斗とアンジェの目の前にあった背中はもう、今までの間宮遥のものではなく。蒼と白の、見たこともない戦士の姿に変わっていた。
 ――――装甲。
 彼女の身体を包み込む蒼と白のそれは、そうとしか喩えられないものだった。
 肩や大腿部を派手に露出しているが、しかし不思議なぐらいに打たれ弱さというか、脆さを感じない。身体を包み込む蒼と白の綺麗な神姫装甲も、右手のブレスの輝きも……それなりに露出しているはずの姿だというのに、寧ろ頼もしさすら感じてしまうほどに力強い印象を二人に与えていた。
「……まさか、怪物を倒して回っているっていう、あの噂の…………?」
 そんな遥の変わり果てた姿を見て、真っ先に戒斗が思い当たったのはそれだった。
 怪物騒動の裏で、密かに怪物を倒して回っているという、そんな可憐な乙女が存在するという噂話。とんでもない眉唾モノの、単なる都市伝説だと思っていた存在は――――きっと、彼女のことだったのだ。
 根拠はない。だが間違いないと戒斗は確信していた。変身した彼女の気高い後ろ姿を目の当たりにして、戒斗は不思議と確信を得ていたのだ。彼女こそが、あの怪物たちを倒し、人知れず人々を守っていた……そんな高潔な存在なのだと。
「これが、私の本当の姿……ウィスタリア・セイレーン。神姫という名の戦士。それが、この姿になった私の名前らしいです」
 背後で戸惑う二人に、遥は振り向かないままで語り掛ける。青く長い髪を風に靡かせながら、まるで水面のように静かな声音で。
「遥さんが、神姫……」
「ウィスタリア・セイレーン……?」
 聞き慣れない名前だ。聞き慣れているはずがない。戒斗もアンジェも、知るはずがないのだ。異形の怪人と人知れず戦っている、超常の戦士の名前なんて。
「お二人は下がっていてください。……大丈夫、奴は私が倒しますから」
 静かながらも、しかし強い意志を秘めた声音で戒斗たちに告げると。遥はそのコバルトブルーの双眸で、目の前のスパイダーをキッと鋭く睨み付ける。
「フシュルルルル……!?」
 睨まれたスパイダーは、神姫に変身した彼女を目の当たりにして戸惑っていて。何歩か後ろに後ずさりをしながら遥を指差し、そして呻き声を上げている。
 明らかに、スパイダー・バンディットは彼女を恐れていた。水に愛されし無慈悲な蒼の戦士、神姫ウィスタリア・セイレーンに変身した間宮遥を……スパイダーは、露骨なまでに恐れていた。
「貴方はやはり、あの時に取り逃がしてしまった片割れ。……絶対に、逃がさない」
 そんな風に自分を恐れるスパイダーに一歩、また一歩と近づきながら、遥は怒りを滲ませた低い声で呟き。そうすれば、バッと右手を真横に掲げた。
 すると、何もない虚空だったはずの空間がキィィン、という甲高い音とともに歪み。とすれば次の瞬間にはもう、彼女の右手は細身な長剣のつかを握り締めていた。
 ――――聖剣ウィスタリア・エッジ。
 彼女の神姫装甲と同じく、蒼と白の装飾が為された細い長剣。そんな剣を虚空より召喚した遥は、その柄を握り締め。一歩ずつ歩み寄りながら、じりじりと後ずさるスパイダー・バンディットに相対した。
「ハッ……!!」
 遥は右手に握り締めたウィスタリア・エッジを片手で構え、呼吸を整え静かに気を練り。そして、戦慄するスパイダー・バンディットと睨み合う。
「もう逃がさない、貴方を赦しはしない――――!!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

ヒューストン家の惨劇とその後の顛末

よもぎ
恋愛
照れ隠しで婚約者を罵倒しまくるクソ野郎が実際結婚までいった、その後のお話。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...