313 / 430
第五章『ブルー・オン・ブルー/若き戦士たちの挽歌』
Int.85:ブルー・オン・ブルー/舞い降りる漆黒、雷撃と焔
しおりを挟む
『キャビン減圧完了、ハッチ開放! 降下六十秒前!』
C-5JM"スーパー・ギャラクシー"大型輸送機の中、キャビンの中に横たわる漆黒のTAMSのコクピットで、独りの青年がデータリンク通信で聞こえる機長の声を片耳に、ただ瞼を閉じていた。
『おーおー、やってらやってら。雅人ぉ! 俺たちの下、すげードンパチ始まってんぜ』
「降下前だ。私語は慎め、省吾」
雅人、と呼ばれた彼が片眼の瞼を開きながら疎めれば、何処かチャラ付いた声の、省吾というらしいもう一機の彼が『えー』と不満げにぶー垂れる。
『……全く、貴方はどうしてこう、緊張感というものが持てないのかしら』
『あー! クレアちゃんまでひでーや!』
とすれば、横から割り込んでくるのはクールな女の声。省吾の口からクレアと名の飛び出してきた彼女の顔は、雅人の視界の端にも網膜投影で映し出されていた。ウィンドウに映る白すぎる肌と白銀の髪は、相変わらず眩しい。
『そうですよ、省吾さん。今回ばかりはクレアちゃんと、雅人の言う通りですっ』
『うう……。そうかいそうかい、皆で俺を虐めるのかい。俺ぁ哀しいよ、チームワークってもんは無いのか?』
「フッ、愛美に一本取られたな、省吾」
スーパー・ギャラクシーのキャビンに搭載された最後の一機から飛んでくる、今度は快活な愛美の声に心折れる省吾を、雅人がほくそ笑むような顔でニヤニヤと眺める。
『降下、三十秒前!』
何て会話を交わしていれば、また機長の声がデータリンク通信に響き渡った。
「各機、最終チェック。分かってるだろうが、特にパラシュート・ザックは念入りに確認しておけ。いざ降りてパラが開きませんでしたじゃあ、洒落にならない」
『ブレイズ04、りょーかーい。、ったく、皆ひどいぜ……』
『……ブレイズ03、問題は無い。雅人、私はいつでもいける』
『ブレイズ02、こっちも大丈夫だよっ』
最終確認をするように促す雅人の言葉に、省吾、クレア、そして愛美の順で反応すれば、雅人は「なら良い」と満足げに頷き、
「ブレイズ・リーダーより"ブレイズ・シード"。現地の状況を説明してくれ」
『――――ブレイズ・シード、了解。現在地上では京都A-311訓練小隊、及び随伴のヘリ部隊がアンノウンの襲撃を受けている模様です。総数はおよそ七機。殆どは外国機の取るに足らない有象無象ですが、一機だけ腕の立つJS-16Eが混ざっています。一応、気を付けてください』
雅人が呼びかければ、そうやって応答し簡潔に状況を報告してくれるのはコールサイン・"ブレイズ・シード"。即ち彼らの支援と管制を行うCPオフィサーの、実に冷静沈着な冷え切った少女の声だ。
「JS-16E? ≪飛焔≫が混ざってるのか。……だとすれば、厄介だな」
『降下、十秒前! お客さん方、準備頼む!』
外国機ばかりなアンノウンの中に一機だけ自国の特殊作戦機≪飛焔≫が混ざっていることを怪訝に思い、そう雅人がひとりごち唸っていれば、再び無線に轟くのはそんな、降下直前を告げる機長の声だ。
『五秒前! 四、三、二、一。……今! 射出、降下開始!』
そして、最後のファイヴ・カウントと共に機体を繋ぎ止めていたパレットの固定が外れ。キャビン上のレールを流れるようにして、まず最初の二機がスーパー・ギャラクシーの開いたハッチから機外へと滑り出していく。
続けて、奥の二機も同様に投げ出される。四機はパレットを分離し、そのまま暫くの間自由落下を継続。暫くしたところで背中に背負ったパラシュート・ザックから傘をバッと開き、一気に減速する。
星の瞬く雲の掛かった夜空に現れたのは、四機の黒いTAMSたちだった。JS-17C≪閃電≫が二機に、FSA-15J≪雪風≫が一機。そして雅人の乗る謎の一機も含めた、その全てが装甲を漆黒に染め上げていた。
ただ、その肩に光るエンブレムだけが、黒く染まる中にポッと浮かび上がっている。雷光と、燃え盛る焔を表したエンブレムの隅に刻まれるのは、"202st-Special Mobility Squadron"の文字。そして――――。
「――――こちらは第202特殊機動中隊≪ライトニング・ブレイズ≫、これより戦闘に参加する」
"Lightning-Blaze"と、刻まれていた。
暗い夜闇の中を舞い降りる、漆黒に染め上がる四機のTAMSたち。その中の一機――――雅人の駆るJS-16G≪飛焔≫が、暗闇の中にその赤い双眸を獰猛に光り、唸らせた。
C-5JM"スーパー・ギャラクシー"大型輸送機の中、キャビンの中に横たわる漆黒のTAMSのコクピットで、独りの青年がデータリンク通信で聞こえる機長の声を片耳に、ただ瞼を閉じていた。
『おーおー、やってらやってら。雅人ぉ! 俺たちの下、すげードンパチ始まってんぜ』
「降下前だ。私語は慎め、省吾」
雅人、と呼ばれた彼が片眼の瞼を開きながら疎めれば、何処かチャラ付いた声の、省吾というらしいもう一機の彼が『えー』と不満げにぶー垂れる。
『……全く、貴方はどうしてこう、緊張感というものが持てないのかしら』
『あー! クレアちゃんまでひでーや!』
とすれば、横から割り込んでくるのはクールな女の声。省吾の口からクレアと名の飛び出してきた彼女の顔は、雅人の視界の端にも網膜投影で映し出されていた。ウィンドウに映る白すぎる肌と白銀の髪は、相変わらず眩しい。
『そうですよ、省吾さん。今回ばかりはクレアちゃんと、雅人の言う通りですっ』
『うう……。そうかいそうかい、皆で俺を虐めるのかい。俺ぁ哀しいよ、チームワークってもんは無いのか?』
「フッ、愛美に一本取られたな、省吾」
スーパー・ギャラクシーのキャビンに搭載された最後の一機から飛んでくる、今度は快活な愛美の声に心折れる省吾を、雅人がほくそ笑むような顔でニヤニヤと眺める。
『降下、三十秒前!』
何て会話を交わしていれば、また機長の声がデータリンク通信に響き渡った。
「各機、最終チェック。分かってるだろうが、特にパラシュート・ザックは念入りに確認しておけ。いざ降りてパラが開きませんでしたじゃあ、洒落にならない」
『ブレイズ04、りょーかーい。、ったく、皆ひどいぜ……』
『……ブレイズ03、問題は無い。雅人、私はいつでもいける』
『ブレイズ02、こっちも大丈夫だよっ』
最終確認をするように促す雅人の言葉に、省吾、クレア、そして愛美の順で反応すれば、雅人は「なら良い」と満足げに頷き、
「ブレイズ・リーダーより"ブレイズ・シード"。現地の状況を説明してくれ」
『――――ブレイズ・シード、了解。現在地上では京都A-311訓練小隊、及び随伴のヘリ部隊がアンノウンの襲撃を受けている模様です。総数はおよそ七機。殆どは外国機の取るに足らない有象無象ですが、一機だけ腕の立つJS-16Eが混ざっています。一応、気を付けてください』
雅人が呼びかければ、そうやって応答し簡潔に状況を報告してくれるのはコールサイン・"ブレイズ・シード"。即ち彼らの支援と管制を行うCPオフィサーの、実に冷静沈着な冷え切った少女の声だ。
「JS-16E? ≪飛焔≫が混ざってるのか。……だとすれば、厄介だな」
『降下、十秒前! お客さん方、準備頼む!』
外国機ばかりなアンノウンの中に一機だけ自国の特殊作戦機≪飛焔≫が混ざっていることを怪訝に思い、そう雅人がひとりごち唸っていれば、再び無線に轟くのはそんな、降下直前を告げる機長の声だ。
『五秒前! 四、三、二、一。……今! 射出、降下開始!』
そして、最後のファイヴ・カウントと共に機体を繋ぎ止めていたパレットの固定が外れ。キャビン上のレールを流れるようにして、まず最初の二機がスーパー・ギャラクシーの開いたハッチから機外へと滑り出していく。
続けて、奥の二機も同様に投げ出される。四機はパレットを分離し、そのまま暫くの間自由落下を継続。暫くしたところで背中に背負ったパラシュート・ザックから傘をバッと開き、一気に減速する。
星の瞬く雲の掛かった夜空に現れたのは、四機の黒いTAMSたちだった。JS-17C≪閃電≫が二機に、FSA-15J≪雪風≫が一機。そして雅人の乗る謎の一機も含めた、その全てが装甲を漆黒に染め上げていた。
ただ、その肩に光るエンブレムだけが、黒く染まる中にポッと浮かび上がっている。雷光と、燃え盛る焔を表したエンブレムの隅に刻まれるのは、"202st-Special Mobility Squadron"の文字。そして――――。
「――――こちらは第202特殊機動中隊≪ライトニング・ブレイズ≫、これより戦闘に参加する」
"Lightning-Blaze"と、刻まれていた。
暗い夜闇の中を舞い降りる、漆黒に染め上がる四機のTAMSたち。その中の一機――――雅人の駆るJS-16G≪飛焔≫が、暗闇の中にその赤い双眸を獰猛に光り、唸らせた。
0
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
♡女子高生と黒ずんだアレ◆ 〜△本小説には、一部刺激の強いシーンがあります(R15♡)〜
大和田大和
SF
◆◇「私まだ女子高生なのに……子育て?」◇◆
○突然ですが、女子高生を妊娠させる方法を知っていますか?
『知りません』と答えたピュアなあなた! この小説はあなたにはまだ早いかもしれません。
あなたは今すぐブラウザバックして他の小説を読んでください。(おすすめはリゼロです!)
●本小説では、たくさんの女性が妊娠します。女子高生の妊娠に興味がない人は読むことを推奨しません(リゼロの方が面白いのでそちらを読んでください!)
○それでは以下があらすじと本編の妊娠シーンです。(リゼロが見たい方はブラバして、長月達平で検索してください!)
◆◇【あらすじ】◇◆
世界中に突如、謎の黒い箱が出現した。
それは大きさ三〇立法センチほど。
宛名も差出人もなく、ただ『開けないでね』とだけ書かれている。
ある箱は公園のベンチの上に置かれ、別の箱は浜辺に流れ着き、また別の箱は普通にポストに届いたりした。
箱を開けるとその中には、気持ちがいいことをした時にできるアレが入っていた。
この物語は、一人の女子高生が子作りと子育てをするお話。
◆◇【妊娠】◇◆
男は白いシーツがかかったベッドを指差し、私にこう言った。
「いいか? お嬢さんは今から俺にここで妊娠させられるんだ? 何をされるかわかるな?」
私はこくんと力なく頷いた。
「嬢ちゃんはベッドでの経験はあるのか?」
私は首を横にフルフルと振った。
「そっか女子高生だもんな。処女だろうな……へへ。安心してくれ、大人しくしてれば痛くしないから……よ?」
男は、ニヤケ面で私の体に視線を這わせた。太もも、胸の谷間、そして股間のあたりをジロジロと見られた。
彼は私をベッドに座らせると、
「今から俺と何するか言ってみな?」
そして、私はこう答えた。
「…………生で……セック(本編へ続く♡)」
(◎本小説は、カクヨムなどで重複投稿しています。詳しくはプロフで)
MMS ~メタル・モンキー・サーガ~
千両文士
SF
エネルギー問題、環境問題、経済格差、疫病、収まらぬ紛争に戦争、少子高齢化・・・人類が直面するありとあらゆる問題を科学の力で解決すべく世界政府が協力して始まった『プロジェクト・エデン』
洋上に建造された大型研究施設人工島『エデン』に招致された若き大天才学者ミクラ・フトウは自身のサポートメカとしてその人格と知能を完全電子化複製した人工知能『ミクラ・ブレイン』を建造。
その迅速で的確な技術開発力と問題解決能力で矢継ぎ早に改善されていく世界で人類はバラ色の未来が確約されていた・・・はずだった。
突如人類に牙を剥き、暴走したミクラ・ブレインによる『人類救済計画』。
その指揮下で人類を滅ぼさんとする軍事戦闘用アンドロイドと直属配下の上位管理者アンドロイド6体を倒すべく人工島エデンに乗り込むのは・・・宿命に導かれた天才学者ミクラ・フトウの愛娘にしてレジスタンス軍特殊エージェント科学者、サン・フトウ博士とその相棒の戦闘用人型アンドロイドのモンキーマンであった!!
機械と人間のSF西遊記、ここに開幕!!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる