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Execute.04:陰謀、そんなものは関係ない -Secret Intelligence Agency-

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「その二人が、今回排除すべきターゲットだ。加えて『サイプレス』のサンプルと研究データも破壊して貰いたいんだけれどね」
 と、ひとしきりを二人が読み終えたところで。吸い殻が山のように積み重なった灰皿に更なる一本を追加しつつ、シャーリィがそう言った。
「やることが多いな」と、資料を突き返しながらで零士が言う。
「過労死しちまいそうだ。今回の仕事、労災は降りるんだろうな?」
「はっはっは。生憎と労災が降りるような職種じゃないけれどね。報酬は普段の何十倍も出る手筈だ。それに、私の方でも二人分の色は付けておくよ」
 続けて零士が口走った冗談に、シャーリィは乾いた高笑いとともに放ったそんな言葉で応え。そうすれば新たなマールボロ・ライトの煙草に火を付けた後、「ほれ」とデスクの上に置いてあった、別の茶封筒を引っ張り出しては零士の方へと差し出してくる。
「これは?」
 受け取った零士が首を傾げて問えば、シャーリィは「ターゲットとは関係ないけど、厄介になりそうな連中のリストと資料だ」とそれに応えた。
 ひとまず、零士はその茶封筒を開け、中に収まっていた資料を引っ張り出す。
「レイ、何が書いてあるの?」
「……まあ、そうなるだろうな。見てみろノエル、多分君の予想通りだ」
 と、零士は小さく肩を竦めれば、また覗き込んで来た傍らのノエルにそう言って、手元の資料を見せてやる。
「グローバル・ディフェンス社……? ああ、さっき言ってた」
 合点がいったようにノエルがひとりごちると、シャーリィは「そうだ」と頷いた。
「リシアンサス・インターナショナルとの関係の深さから考えて、まず間違いなく厄介になる連中だ。特に非合法部門の方が、ね。
 ……とりあえず、論より証拠。私がグダグダ君らに説明するよりも、今渡したそれを読んでしまった方が早いだろうさ。質問は一応受け付けるけれど、多分大したことは答えられない」
 そんなシャーリィの言葉を片耳に聞きつつ、彼女がバカスカとチェーン気味に吹かす紫煙の匂いに鼻腔をくすぐられながら。また零士とノエルは、二人で新しい資料に眼を通し始めた。
 ――――グローバル・ディフェンス社。
 そこそこ名の知れた民間軍事会社PMSCsだ。英国人エリック・ライアンが社長として経営していて、本拠も英国に置いている。通常の警備業務で高い実績を持つことは、パリでの戦い、ジルベール・シャンペーニュ邸で戦った警備員たちのことを思い出せば頷ける。よく訓練された、質の良い兵隊ばかりだった。
 そんな通常業務の他に、グローバル・ディフェンス社の事業は幅が広いらしい。星条旗を高らかに掲げる偉大な合衆国軍を初めとし、戦場での直接、或いは後方支援や兵站支援。或いは中小国家に対する戦闘インストラクター業務なども手広く行っているそうだ。民間人相手の軍事訓練サービスや、合衆国内に存在する訓練設備の貸し出しなども行っている。
 派遣経験はイラクやアフガニスタンを初めとした中東地域が多く、また装甲戦闘車両や、輸送用ながらヘリコプターも所有している辺り、嘗てのエグゼクティヴ・アウトカムズ(EO)社、或いはブラックウォーター社を彷彿とさせる。
 また、零士たちが経験したように実働オペレータの質が高いことでも同社は有名だ。各国正規軍の元兵士を初めとして、中には英陸軍SASや米陸軍グリーン・ベレー、デルタ・フォース、米海軍SEALチームなどに所属していた経歴を持つ、元特殊部隊員の社員も多い。この辺りが通常業務の他、訓練関係のインストラクター業の人気にも繋がっているのだろう。
 だが、グローバル・ディフェンス社には裏の顔があるという噂も、まことしやかに囁かれていた。元特殊部隊員を初めとした殺しのプロフェッショナルを、世界の何処へでも傭兵として派遣する裏の業務。非合法の傭兵派遣業務が存在するという、そんな黒い噂が…………。
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