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Execute.04:陰謀、そんなものは関係ない -Secret Intelligence Agency-
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そうして『サイプレス』に資料をひとしきり眼を通し終えた零士とノエルの二人は、続いて標的となる人物、そして脅威となり得る人物をリストアップした資料の方に視線を走らせ始めていた。
資料を捲り始め、真っ先に眼に飛び込んできた人物。それはやはり、あの『サイプレス』の開発者である日本人の科学者、芙蓉博士の資料だった。
――――芙蓉誠一。
先に何度も述べてきた通り、今回の任務の発端となった新型の指向性ウィルス兵器『サイプレス』の生みの親だ。
どうやら、二年前までは都内の城南大学で教授職に就いていたと資料にはある。当然のように生物学だとか、細菌やウィルス方面の研究者だったらしく、受け持っていた講義も学生にはそこそこ人気があったようだ。尤も、出席管理がザルで、単位が楽に取りやすいという意味での人気だったらしいが。
とまあ、ある意味でありふれた教授職での生活を送っていた芙蓉だが、コトの始まりはやはり二年前にあったらしい。
端的に言えば、学会を追放されたのだ。件の『サイプレス』のプロトタイプを発表し、非人道的だ何だ、ありとあらゆる罵詈雑言を周囲の同業者たちから投げつけられた末に、自分から出て行く形で追放されたそうだ。
で、それから間もなくして芙蓉博士は、城南大学からも出奔してしまったらしい。残っていた研究データにプロトタイプのサンプルなどを根こそぎ持ち出し、大学に残っていたデータは全て始末を付けた上で。
その後、芙蓉博士は行方不明扱いとなり。二年前に大学から消えて以降は消息もバッタリ消えてしまっていたのだが、SIAの調査により、ケネス・ボートマンの元へ合流したことが発覚したというワケだ。
芙蓉博士がどうやって、どんなツテを使ってケネス・ボートマンと接触を図ったのか、それは依然として不明瞭なままだ。だが、何となく想像が付きそうでもある。資料を鵜呑みにするならば、『サイプレス』の元となるウィルスの研究が佳境に差し掛かって以降の芙蓉は何処か狂信的になり、半ばマッド・サイエンティスト化していたらしいのだから。
資料の内容から芙蓉誠一という人物の内面をプロファイリングし、思考傾向を予測してみれば。恐らく芙蓉の内側では、研究欲と名誉欲が暴走状態にあると予想される。
元から自己主張だとか、承認欲求の強い人間だったのだろう。自身の成果を世に知らしめたいという欲望が、学会で打ちのめされた末に追放された後に肥大化し、更に自分を追放した奴らに思い知らせてやりたいという、復讐にも似た思いまで加わり。その末が完全なマッド・サイエンティスト化と、そしてケネス・ボートマンとの接触だろう。芙蓉博士は恐らく、自分のしでかそうとしていることがどういうことか、本質的には理解していない。
理解していないが故に、最も危険なタイプとも言える。周囲の言葉にも耳を貸さず、今はただただ自身の子供のような存在である『サイプレス』の完成と、そして世界そのものへの復讐すら夢想している段階だろう。あくまでプロファイリングした上での予想でしかないのだが、恐らく芙蓉はもう、誰にも止められない。完全にマッド・サイエンティストとして完成してしまった芙蓉博士は、もう誰にも止められないのだ。
止められないのならば、彼を止める為に残された手段はもう一つしかない。芙蓉博士の息の根を、物理的に止めることだけだ。
資料を捲り始め、真っ先に眼に飛び込んできた人物。それはやはり、あの『サイプレス』の開発者である日本人の科学者、芙蓉博士の資料だった。
――――芙蓉誠一。
先に何度も述べてきた通り、今回の任務の発端となった新型の指向性ウィルス兵器『サイプレス』の生みの親だ。
どうやら、二年前までは都内の城南大学で教授職に就いていたと資料にはある。当然のように生物学だとか、細菌やウィルス方面の研究者だったらしく、受け持っていた講義も学生にはそこそこ人気があったようだ。尤も、出席管理がザルで、単位が楽に取りやすいという意味での人気だったらしいが。
とまあ、ある意味でありふれた教授職での生活を送っていた芙蓉だが、コトの始まりはやはり二年前にあったらしい。
端的に言えば、学会を追放されたのだ。件の『サイプレス』のプロトタイプを発表し、非人道的だ何だ、ありとあらゆる罵詈雑言を周囲の同業者たちから投げつけられた末に、自分から出て行く形で追放されたそうだ。
で、それから間もなくして芙蓉博士は、城南大学からも出奔してしまったらしい。残っていた研究データにプロトタイプのサンプルなどを根こそぎ持ち出し、大学に残っていたデータは全て始末を付けた上で。
その後、芙蓉博士は行方不明扱いとなり。二年前に大学から消えて以降は消息もバッタリ消えてしまっていたのだが、SIAの調査により、ケネス・ボートマンの元へ合流したことが発覚したというワケだ。
芙蓉博士がどうやって、どんなツテを使ってケネス・ボートマンと接触を図ったのか、それは依然として不明瞭なままだ。だが、何となく想像が付きそうでもある。資料を鵜呑みにするならば、『サイプレス』の元となるウィルスの研究が佳境に差し掛かって以降の芙蓉は何処か狂信的になり、半ばマッド・サイエンティスト化していたらしいのだから。
資料の内容から芙蓉誠一という人物の内面をプロファイリングし、思考傾向を予測してみれば。恐らく芙蓉の内側では、研究欲と名誉欲が暴走状態にあると予想される。
元から自己主張だとか、承認欲求の強い人間だったのだろう。自身の成果を世に知らしめたいという欲望が、学会で打ちのめされた末に追放された後に肥大化し、更に自分を追放した奴らに思い知らせてやりたいという、復讐にも似た思いまで加わり。その末が完全なマッド・サイエンティスト化と、そしてケネス・ボートマンとの接触だろう。芙蓉博士は恐らく、自分のしでかそうとしていることがどういうことか、本質的には理解していない。
理解していないが故に、最も危険なタイプとも言える。周囲の言葉にも耳を貸さず、今はただただ自身の子供のような存在である『サイプレス』の完成と、そして世界そのものへの復讐すら夢想している段階だろう。あくまでプロファイリングした上での予想でしかないのだが、恐らく芙蓉はもう、誰にも止められない。完全にマッド・サイエンティストとして完成してしまった芙蓉博士は、もう誰にも止められないのだ。
止められないのならば、彼を止める為に残された手段はもう一つしかない。芙蓉博士の息の根を、物理的に止めることだけだ。
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