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Execute.02:巴里より愛を込めて -From Paris with Love-
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「レイ、大丈夫!?」
と、僅か十秒にも満たない銃撃戦の幕が閉じれば。即座にノエルが心配した面持ちで、零士の方に駆け寄ってくる。
そんな風に近寄ってきた彼女に、零士は「問題ない」とノエルの肩を小さく叩いた。彼女を安心させるように華奢な肩へ触れれば、ノエルは「よかった……」と胸を撫で下ろす。
「……だが、俺としたことがトチっちまった。こんだけ派手に銃声が響いちまった以上、プランBは免れないな」
「仕方ないさ。それよりも、君が無事で何よりだ。肝が冷えっぱなしだったよ……」
「そりゃあ悪いことをした、女の子の腹を冷やすのはよくないからな。以後、気を付けよう」
「……もうっ、そんな冗談言ってる場合?」
そんな具合の、ある意味で馬鹿っぽくも聞こえるやり取りを交わしている間に、零士はPx4ストームの銃口からサイレンサーを外していた。これだけ派手に銃声が響いてしまった以上、もう隠れる必要もないだろうとの判断だ。弾倉も交換し、威力の低い亜音速弾の弾倉から、高威力のホロー・ポイント強装弾の弾倉へと入れ替える。
「さてと、そろそろ僕の出番か」
一方、ノエルの方はと言えば。大柄ながら美しいスタイルのリヴォルヴァー拳銃――六インチ銃身のマニューリン・MR73を何処からか取り出せば、その銃把を左手に握り締めていた。
「君は左利きなのか」
そんなノエルを見て、零士が意外そうに言う。するとノエルは「まあね」と微笑みながら、一旦MR73のシリンダーを振り出し。.357マグナム弾が六発全て装填されていることを確認すれば、また丁寧に両手でシリンダーを元に戻す。
「ペンも何も、僕は全部左利きなんだ」
「……一応、俺も左利きなんだがな」
「そうなの?」
不思議そうに首を傾げるノエルに、零士は「ああ」と頷く。
「ペンと箸は右だけどな。でも本来は左利きなんだ。銃に関しては、まず右を基本にしろってシャーリィから教わったから、専ら右で使ってるが」
「へぇ……じゃあ本当はレフティ・シューターってこと?」
「そういうことだ」
古今東西、銃というものは他の様々な日用品の例に漏れず、右利き用途を基本として作られている。シャーリィが基本的に右手で撃てと零士に教えたのは、そういった事情もあってのことだろうと、零士は今になって納得している。
「まあ、この話題はまた今度だ。それよりノエル、急ぐぞ」
「分かってるよ」
ノエルは言いながら、青いドレスの長い裾をビリッと思い切りよく引き裂いてしまう。綺麗な蒼の、それこそ彼女の瞳の色とそっくりだった煌びやかなドレスの足元が、無残に引き裂かれていく。そうすれば、それこそ陶磁のように真っ白い肌をした彼女の太腿が、引き裂かれた青いドレスの隙間から露わになった。
「折角のドレスなのに、何だか勿体ないな」
そんなノエルを見て、零士が少しだけ残念そうに呟けば。それにノエルは「まあね」と少しだけ苦々しい顔をして言い返す。
「でも、仕方ないじゃないか。コトこうなっちゃった以上は、動きやすい方が良いんだから」
「……ま、セクシーだから今は今で素敵かもだ。エスコートするぜ、お嬢さん」
肩を竦め、また冗談っぽく零士が言う。するとノエルは「……んもうっ」とまた小さく頬を朱色に染め、
「言ったからには僕の背中、君に預けたからね?」
「安心しろ、女の子を傷物にする趣味を俺は持ち合わせちゃいないんだ」
「その達者な口ぐらい腕っ節も良いこと、期待してるよ」
「精々、ご期待に添えてみせるさ」
そして零士はサイレンサーを外したPx4ストームを、ノエルはドデカいマニューリン・MR73を手に、一気に階段を駆け上っていく。一度沸騰してしまった空気は、
一度火が付いてしまった空気は、今宵はもう冷めてくれることはないらしい。
と、僅か十秒にも満たない銃撃戦の幕が閉じれば。即座にノエルが心配した面持ちで、零士の方に駆け寄ってくる。
そんな風に近寄ってきた彼女に、零士は「問題ない」とノエルの肩を小さく叩いた。彼女を安心させるように華奢な肩へ触れれば、ノエルは「よかった……」と胸を撫で下ろす。
「……だが、俺としたことがトチっちまった。こんだけ派手に銃声が響いちまった以上、プランBは免れないな」
「仕方ないさ。それよりも、君が無事で何よりだ。肝が冷えっぱなしだったよ……」
「そりゃあ悪いことをした、女の子の腹を冷やすのはよくないからな。以後、気を付けよう」
「……もうっ、そんな冗談言ってる場合?」
そんな具合の、ある意味で馬鹿っぽくも聞こえるやり取りを交わしている間に、零士はPx4ストームの銃口からサイレンサーを外していた。これだけ派手に銃声が響いてしまった以上、もう隠れる必要もないだろうとの判断だ。弾倉も交換し、威力の低い亜音速弾の弾倉から、高威力のホロー・ポイント強装弾の弾倉へと入れ替える。
「さてと、そろそろ僕の出番か」
一方、ノエルの方はと言えば。大柄ながら美しいスタイルのリヴォルヴァー拳銃――六インチ銃身のマニューリン・MR73を何処からか取り出せば、その銃把を左手に握り締めていた。
「君は左利きなのか」
そんなノエルを見て、零士が意外そうに言う。するとノエルは「まあね」と微笑みながら、一旦MR73のシリンダーを振り出し。.357マグナム弾が六発全て装填されていることを確認すれば、また丁寧に両手でシリンダーを元に戻す。
「ペンも何も、僕は全部左利きなんだ」
「……一応、俺も左利きなんだがな」
「そうなの?」
不思議そうに首を傾げるノエルに、零士は「ああ」と頷く。
「ペンと箸は右だけどな。でも本来は左利きなんだ。銃に関しては、まず右を基本にしろってシャーリィから教わったから、専ら右で使ってるが」
「へぇ……じゃあ本当はレフティ・シューターってこと?」
「そういうことだ」
古今東西、銃というものは他の様々な日用品の例に漏れず、右利き用途を基本として作られている。シャーリィが基本的に右手で撃てと零士に教えたのは、そういった事情もあってのことだろうと、零士は今になって納得している。
「まあ、この話題はまた今度だ。それよりノエル、急ぐぞ」
「分かってるよ」
ノエルは言いながら、青いドレスの長い裾をビリッと思い切りよく引き裂いてしまう。綺麗な蒼の、それこそ彼女の瞳の色とそっくりだった煌びやかなドレスの足元が、無残に引き裂かれていく。そうすれば、それこそ陶磁のように真っ白い肌をした彼女の太腿が、引き裂かれた青いドレスの隙間から露わになった。
「折角のドレスなのに、何だか勿体ないな」
そんなノエルを見て、零士が少しだけ残念そうに呟けば。それにノエルは「まあね」と少しだけ苦々しい顔をして言い返す。
「でも、仕方ないじゃないか。コトこうなっちゃった以上は、動きやすい方が良いんだから」
「……ま、セクシーだから今は今で素敵かもだ。エスコートするぜ、お嬢さん」
肩を竦め、また冗談っぽく零士が言う。するとノエルは「……んもうっ」とまた小さく頬を朱色に染め、
「言ったからには僕の背中、君に預けたからね?」
「安心しろ、女の子を傷物にする趣味を俺は持ち合わせちゃいないんだ」
「その達者な口ぐらい腕っ節も良いこと、期待してるよ」
「精々、ご期待に添えてみせるさ」
そして零士はサイレンサーを外したPx4ストームを、ノエルはドデカいマニューリン・MR73を手に、一気に階段を駆け上っていく。一度沸騰してしまった空気は、
一度火が付いてしまった空気は、今宵はもう冷めてくれることはないらしい。
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