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三章 街角の襲撃
57.新しい衣装-2
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「えっと、たしか名前が違うんだよね」
「僕はマリクだよ」
「俺はジェフリー」
マリーベルとジェーンはそれぞれマリクとジェフリーと名乗り、マリクは髪をきっちり固めて後ろでまとめ、着ている服も王宮の文官の制服のようにシンプルで機能的な格好だった。
一方ジェフリーは金の髪を右耳の下で緩くまとめ、胸元の開いたなかなかセクシーな格好をしていた。
マリクがふぅと息を吐いた。
「久しぶりに男の格好をするとホッとする」
「えーと、マリク君は男装の方が楽なの?」
「お化粧が苦手なんだよね。女物の服は色々キツイし」
「男装でも俺は化粧するけどな」
たしかにジェフリーは男装姿でも化粧をしているようだったが、ジェーンの時の化粧とは違い凛々しさを強調していてふりまく色気がすごかった。
「カイルもしているし、シルヴィアだって男装の時も化粧しているぞ」
「私たち王族は男女問わず人前に出る時は化粧するのが当たり前ですから」
男装したカイルに手を引かれ、シルヴィアが部屋に入ってきた。
シルヴィアの今日の衣装は身体のラインを強調するような黒い上衣の全体に銀色の細かい飾りが多数縫い付けられていて、それが光を反射してキラキラと輝く夜空のようだった。
オフショルダーと裾に向かって広がるロングスリーブの隙間から見える白い肌が眩しくて、真子は思わず目を細めた。
「だからお前は見過ぎなんだよ。あんまり見るな」
「カイルさんは私にだけ厳しくないですか?」
今回もシルヴィアと対になるような衣装に身を包んだカイルがその赤い目を鋭くして真子をにらむので、真子は口を尖らせて抗議した。
カイルは真子の抗議にぷいと顔を逸らすと、小さな声でボソリとこぼした。
「……シルヴィアはかわいいものが好きなんだよ。俺はどうしたってかわいくはなれないからな」
「え、カイルさん。今のそれ、めちゃくちゃカワイイですよ」
「お前、俺を馬鹿にしているだろ」
「まさか!」
「カイル、マコさん、楽しそうですね。何を話しているんですか?」
「え……と、シルヴィアさんの事ですよ?」
「そうですか」
カイルを見てニコニコと微笑むシルヴィアの笑顔の方がカイルににらまれるよりよっぽど怖いことに気づき、真子はカイルからそっと離れて距離をあけた。
「髪は俺がやる」
ジェフリーが真子を椅子に座らせて真子の短い髪を器用に編み込んでいく。
衣装の模様と対になるように、小さな金の花を合間に差し込んでいった。
仕上げに金糸で縁取りされた赤いリボンで大きな花を作ると、左耳の上に飾った。
「はは、これでもかってくらいに団長の色。マコはやっぱり派手な柄の方が映えるな」
ジェフリーは真子の仕上がりを見て満足そうに笑った。
「むぅ。顔が地味だから?」
「拗ねるな拗ねるな、マコはちゃんとかわいいから」
「赤とか金とか衣装にしても派手で良いよね。僕なんて目も髪も茶色だから地味でつまんなくて」
「マリク君の目の色も髪の色もマリク君らしくて優しい良い色だと思うけど」
「あーマコちゃん。嬉しいけど、あんまりそう言うこと言わないで」
マリクが目の端をほんのり赤くしながら、苦笑した。
「さて、団長も待ちくたびれてそうだから、そろそろ行くか」
「え!? アレクサンドラさん、もう帰ってきているの?」
「さっき戻ってきたみたいだよ」
「マコさんが着替え中なので団長の執務室で待ってもらっています」
「えー! どれだけ待たせているの!? 早く教えてよ!!」
真子が執務室に急ごうと立ち上がると、カイルがちょいちょいと手まねきした。
真子が近づくとカイルが耳打ちした。
「マコ、団長になんでマコって呼ばないのか聞いてみな」
「え?」
「それじゃ、がんばって」
ジェフリーにとんと背中を押され、真子は部屋から出ると急ぎ足でアレクサンドラの執務室に向かった。
執務室のドアの前に立つと、真子は胸に手を当ててはずんだ息を整える。
出発前の気まずい空気を思い出し、少し震える手で真子はドアをコンコンとノックした。
「どうぞ」
部屋の中から懐かしい声が聞こえる。
真子はゆっくりとドアを開けた。
「僕はマリクだよ」
「俺はジェフリー」
マリーベルとジェーンはそれぞれマリクとジェフリーと名乗り、マリクは髪をきっちり固めて後ろでまとめ、着ている服も王宮の文官の制服のようにシンプルで機能的な格好だった。
一方ジェフリーは金の髪を右耳の下で緩くまとめ、胸元の開いたなかなかセクシーな格好をしていた。
マリクがふぅと息を吐いた。
「久しぶりに男の格好をするとホッとする」
「えーと、マリク君は男装の方が楽なの?」
「お化粧が苦手なんだよね。女物の服は色々キツイし」
「男装でも俺は化粧するけどな」
たしかにジェフリーは男装姿でも化粧をしているようだったが、ジェーンの時の化粧とは違い凛々しさを強調していてふりまく色気がすごかった。
「カイルもしているし、シルヴィアだって男装の時も化粧しているぞ」
「私たち王族は男女問わず人前に出る時は化粧するのが当たり前ですから」
男装したカイルに手を引かれ、シルヴィアが部屋に入ってきた。
シルヴィアの今日の衣装は身体のラインを強調するような黒い上衣の全体に銀色の細かい飾りが多数縫い付けられていて、それが光を反射してキラキラと輝く夜空のようだった。
オフショルダーと裾に向かって広がるロングスリーブの隙間から見える白い肌が眩しくて、真子は思わず目を細めた。
「だからお前は見過ぎなんだよ。あんまり見るな」
「カイルさんは私にだけ厳しくないですか?」
今回もシルヴィアと対になるような衣装に身を包んだカイルがその赤い目を鋭くして真子をにらむので、真子は口を尖らせて抗議した。
カイルは真子の抗議にぷいと顔を逸らすと、小さな声でボソリとこぼした。
「……シルヴィアはかわいいものが好きなんだよ。俺はどうしたってかわいくはなれないからな」
「え、カイルさん。今のそれ、めちゃくちゃカワイイですよ」
「お前、俺を馬鹿にしているだろ」
「まさか!」
「カイル、マコさん、楽しそうですね。何を話しているんですか?」
「え……と、シルヴィアさんの事ですよ?」
「そうですか」
カイルを見てニコニコと微笑むシルヴィアの笑顔の方がカイルににらまれるよりよっぽど怖いことに気づき、真子はカイルからそっと離れて距離をあけた。
「髪は俺がやる」
ジェフリーが真子を椅子に座らせて真子の短い髪を器用に編み込んでいく。
衣装の模様と対になるように、小さな金の花を合間に差し込んでいった。
仕上げに金糸で縁取りされた赤いリボンで大きな花を作ると、左耳の上に飾った。
「はは、これでもかってくらいに団長の色。マコはやっぱり派手な柄の方が映えるな」
ジェフリーは真子の仕上がりを見て満足そうに笑った。
「むぅ。顔が地味だから?」
「拗ねるな拗ねるな、マコはちゃんとかわいいから」
「赤とか金とか衣装にしても派手で良いよね。僕なんて目も髪も茶色だから地味でつまんなくて」
「マリク君の目の色も髪の色もマリク君らしくて優しい良い色だと思うけど」
「あーマコちゃん。嬉しいけど、あんまりそう言うこと言わないで」
マリクが目の端をほんのり赤くしながら、苦笑した。
「さて、団長も待ちくたびれてそうだから、そろそろ行くか」
「え!? アレクサンドラさん、もう帰ってきているの?」
「さっき戻ってきたみたいだよ」
「マコさんが着替え中なので団長の執務室で待ってもらっています」
「えー! どれだけ待たせているの!? 早く教えてよ!!」
真子が執務室に急ごうと立ち上がると、カイルがちょいちょいと手まねきした。
真子が近づくとカイルが耳打ちした。
「マコ、団長になんでマコって呼ばないのか聞いてみな」
「え?」
「それじゃ、がんばって」
ジェフリーにとんと背中を押され、真子は部屋から出ると急ぎ足でアレクサンドラの執務室に向かった。
執務室のドアの前に立つと、真子は胸に手を当ててはずんだ息を整える。
出発前の気まずい空気を思い出し、少し震える手で真子はドアをコンコンとノックした。
「どうぞ」
部屋の中から懐かしい声が聞こえる。
真子はゆっくりとドアを開けた。
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