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三章 街角の襲撃
54.ナーゴ-2
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真子が扱える魔力の魔力玉の大きさがゴルフボールくらいになったので、次のステップに進むことになった。
祈りの部屋のドアを開けてやってきたのはジェーンだった。
「マコ! がんばってる?」
「ジェーンさん!! もう大丈夫なの?」
今日はジェーンに回復魔術を教わることになっていた。
ジェーンはマリーベルを回復した折に魔力切れギリギリまで魔力を使ったので、カイラ同様しばらく寝込んでいて会うのは久しぶりだった。
「そんなのとっくに大丈夫よ~。それよりマコ! フェリシア様に騙されて格安でこき使われてない? 私がちゃんとお給料の交渉してあげましょうか?」
「えっと、多分、騙されてないと思う」
「人聞きの悪いこと言うでない」
「あ、フェリクス様」
後ろから現れた手がジェーンの頭の後ろをパコンと叩いた。
今日はおじいちゃんの姿なので名前はフェリクスだ。
「いった~! ちょっとは手加減してくださいよ。ねぇマコ。ちなみにどれくらいもらっているの?」
「えーと、これくらい?」
頭をさすりながらジェーンが耳を寄せてきたので、真子はフェリクスに以前提示された給料の額をこっそり教えた。
「ヤダ、案外もらっているのね。フェリクス様、私も雇いません?」
「おぬしは古代文字を読めんだろうが。口じゃなくてさっさと手を動かせ!」
フェリクスがもう一度ジェーンの頭を叩こうとするので、ジェーンはささっと距離を取って逃げていた。
「あ~残念。もっと稼いでお店を増やしたいのよね~。マコはフェリクス様の弟子になれたから、これでまず仕事は困らないわよ。良かったわね」
「おぬしはほんとに騒がしいな。こやつがいると落ち着かん」
フェリクスは今日の訓練の指示だけ出して、さっさと祈りの部屋から出て行ってしまった。
「魔術はイメージよ。回復魔術も回復した元の状態をどれだけイメージできるかが大事ね」
真子はふむふむとうなずく。
回復魔術の基礎練習として、茎の折れた花や病気になった苗を治すお手本を見せてもらい、真子が真似してやってみるのをくり返す。
真子は先日のフェリシアとの会話を思い出してジェーンに尋ねた。
「ねぇ、ナーゴに回復魔術をかけてあげたのってジェーンさん?」
「えぇ、そうよ。でも血を止めてあげることくらいしかできなかったわ」
その時のことを思い出したのか、ジェーンが眉をひそめて痛ましげな顔をする。
「……マコは団長がなんで魔術騎士団の団長になったか知っている?」
真子がふるふると首を横に振る。
「シルヴィオの暴走を抑えられる人が団長しかいないからって抜擢されたのよ。シルヴィオに魔力と武力で勝てる人が他にいなくてね。カイラはいざって時にシルヴィオに逆らえないから。魔術士団には団長候補は他にもたくさんいたんだけど、その人たちを飛び越えての大出世よ」
「え、シルヴィオさんってすごいんだね」
「そんなだから私が魔術騎士団で団長の下についた当初はだいぶ反発していたのよね。だって私これでも魔術学校では同世代の中でトップだったし、魔術士団でも優秀だったのよ? それが運良くフェリシア様の弟子にしてもらっただけじゃなく、団長にまでなるなんてズルイ! って」
「えぇ?」
今はアレクサンドラととても仲良く見えるので、ジェーンの話は少し意外だった。
「でもある日、傷だらけのナーゴを抱いた団長が頭を下げて『お願い、ジェーン。この子を助けてあげて』って。……結局、大したことはしてあげられなかったけれど、ありがとうってすごく感謝してくれて。団長は戦えばすごく強いのに、反発している部下にあっさり頭を下げて自分の弱さを見せちゃうような無防備さもあって、なんか私がしっかり支えてあげないとって思ったのよ。団長と上手くやれるようになったのはナーゴのおかげね」
「アレクサンドラさんのそばにジェーンさんがいてくれて良かった」
「ふふ、それはこっちのセリフよ」
言葉の意味がよくわからず首を傾げる真子を見て、ジェーンはケラケラと笑った。
祈りの部屋のドアを開けてやってきたのはジェーンだった。
「マコ! がんばってる?」
「ジェーンさん!! もう大丈夫なの?」
今日はジェーンに回復魔術を教わることになっていた。
ジェーンはマリーベルを回復した折に魔力切れギリギリまで魔力を使ったので、カイラ同様しばらく寝込んでいて会うのは久しぶりだった。
「そんなのとっくに大丈夫よ~。それよりマコ! フェリシア様に騙されて格安でこき使われてない? 私がちゃんとお給料の交渉してあげましょうか?」
「えっと、多分、騙されてないと思う」
「人聞きの悪いこと言うでない」
「あ、フェリクス様」
後ろから現れた手がジェーンの頭の後ろをパコンと叩いた。
今日はおじいちゃんの姿なので名前はフェリクスだ。
「いった~! ちょっとは手加減してくださいよ。ねぇマコ。ちなみにどれくらいもらっているの?」
「えーと、これくらい?」
頭をさすりながらジェーンが耳を寄せてきたので、真子はフェリクスに以前提示された給料の額をこっそり教えた。
「ヤダ、案外もらっているのね。フェリクス様、私も雇いません?」
「おぬしは古代文字を読めんだろうが。口じゃなくてさっさと手を動かせ!」
フェリクスがもう一度ジェーンの頭を叩こうとするので、ジェーンはささっと距離を取って逃げていた。
「あ~残念。もっと稼いでお店を増やしたいのよね~。マコはフェリクス様の弟子になれたから、これでまず仕事は困らないわよ。良かったわね」
「おぬしはほんとに騒がしいな。こやつがいると落ち着かん」
フェリクスは今日の訓練の指示だけ出して、さっさと祈りの部屋から出て行ってしまった。
「魔術はイメージよ。回復魔術も回復した元の状態をどれだけイメージできるかが大事ね」
真子はふむふむとうなずく。
回復魔術の基礎練習として、茎の折れた花や病気になった苗を治すお手本を見せてもらい、真子が真似してやってみるのをくり返す。
真子は先日のフェリシアとの会話を思い出してジェーンに尋ねた。
「ねぇ、ナーゴに回復魔術をかけてあげたのってジェーンさん?」
「えぇ、そうよ。でも血を止めてあげることくらいしかできなかったわ」
その時のことを思い出したのか、ジェーンが眉をひそめて痛ましげな顔をする。
「……マコは団長がなんで魔術騎士団の団長になったか知っている?」
真子がふるふると首を横に振る。
「シルヴィオの暴走を抑えられる人が団長しかいないからって抜擢されたのよ。シルヴィオに魔力と武力で勝てる人が他にいなくてね。カイラはいざって時にシルヴィオに逆らえないから。魔術士団には団長候補は他にもたくさんいたんだけど、その人たちを飛び越えての大出世よ」
「え、シルヴィオさんってすごいんだね」
「そんなだから私が魔術騎士団で団長の下についた当初はだいぶ反発していたのよね。だって私これでも魔術学校では同世代の中でトップだったし、魔術士団でも優秀だったのよ? それが運良くフェリシア様の弟子にしてもらっただけじゃなく、団長にまでなるなんてズルイ! って」
「えぇ?」
今はアレクサンドラととても仲良く見えるので、ジェーンの話は少し意外だった。
「でもある日、傷だらけのナーゴを抱いた団長が頭を下げて『お願い、ジェーン。この子を助けてあげて』って。……結局、大したことはしてあげられなかったけれど、ありがとうってすごく感謝してくれて。団長は戦えばすごく強いのに、反発している部下にあっさり頭を下げて自分の弱さを見せちゃうような無防備さもあって、なんか私がしっかり支えてあげないとって思ったのよ。団長と上手くやれるようになったのはナーゴのおかげね」
「アレクサンドラさんのそばにジェーンさんがいてくれて良かった」
「ふふ、それはこっちのセリフよ」
言葉の意味がよくわからず首を傾げる真子を見て、ジェーンはケラケラと笑った。
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