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三章 街角の襲撃

34.新しい朝-1

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 次の日の朝早く、真子が目を覚ますと真子の顔を覗き込んでいるアレクサンドラの金色の柔らかな目がそこにあった。

「おはよう」

「おはよう……ございます」

 アレクサンドラの真子を見つめる目があまりにも甘くて、真子は恥ずかしくなって毛布を頭からかぶった。

「ふふ、マーコ、かわいい」

 アレクサンドラは毛布の上から真子を抱きしめてキスを落とした。

「身体に辛いところは無い?」

 真子が返事をするよりも先に、真子のお腹がグーと鳴った。

「あ……」

「昨日の夜、何も食べなかったものね。隣に美味しいお店があるから、朝ごはんを食べに行きましょうか」

「うん」

 アレクサンドラがクスクス笑いながら起き上がったので、真子は毛布からぴょこりと顔を出した。
 ちょうどアレクサンドラは背中をこちらに向けて立っており、下半身に下着一枚を身につけて長く赤い髪を背中に下ろしていた。
 女装していても違和感がない細さのはずなのに、無駄なく鍛えられている均整のとれた身体に真子は思わず見惚れてしまった。

「ん? なぁに?」

 視線を感じたアレクサンドラが振り返って真子に微笑みかける。
 サラリと揺れた赤い髪が窓から差し込む光に透けてとても綺麗だった。
 真子は下を向いて赤くなった顔をごまかした。

「あ、えっと、そうだ! 二日も家に帰ってないから、着替えをどうしようかなって」

「マーコの着替えならあるわよ」

「なんで?」

「一昨日の夜はジェーンの所に泊まったでしょう? 昨日、着替えられるようにってマーコの服を用意しておいたのよ。でも色んなところに呼び出されちゃってマーコに会えなくて」

 アレクサンドラはベッドの上に乗ると、毛布にくるまったままベッドに座っている真子を後ろから抱きしめて真子の頭にグリグリと頬擦りをした。

「ジェーンの服はさっさと洗って返しましょう」

「ふふ、なにそれ」

「マーコ」

 名前を呼ばれて真子がアレクサンドラの方に顔を向けた。
 二人は目を合わせるとそのまましばらく見つめあい、それからゆっくりと唇を重ねた。


 *****


 とても恥ずかしかったけれど、アレクサンドラの強い希望で二人は手を繋いで王宮に出仕した。魔術騎士団の待機室の前でジェーンに会った。
 ジェーンは二人の繋いだ手をジロジロ見ながらニヤリと笑った。

「あら、マコは着替えているのに団長は同じ服なの?」

「執務室に着替えが置いてあるから問題ないわ」

「そういうこと言っているんじゃないわよ。わかっていてわざとはぐらかさないでよ」

 アレクサンドラが素知らぬ顔をしてあしらうと、ジェーンがつまらなそうな顔をする。
 ジェーンは矛先を真子の方に向けた。

「ねぇ、マコ。昨日は素敵な夜だったみたいね」

「え!?」

 真子がポッと顔を赤くすると、アレクサンドラはジェーンの肩にズシッと手を置いて笑顔を浮かべた。

「ジェーン。あまり調子に乗っていると、今日の訓練アタシがみっちり相手してあげるわよ?」

「遠慮しておくわ」

 ジェーンは両手を挙げて明後日の方向に目を逸らしたながら、目が笑ってないのよね、とぶつぶつ言っていた。
 アレクサンドラは真子の方に顔を向けると柔らかく笑った。

「今度から、マーコの着替えも執務室に置いておきましょうね」

「う、うん」

(今度って、こんなことがまたあるの?)

 真子がパタパタと顔をあおいで赤くなった顔を冷ましていると、後ろからマリーベルの声が聞こえてきた。

「団長、マコちゃん、おはようございます」

 アレクサンドラの真子の手を握る力がほんの少しだけ強くなった気がした。
 マリーベルは二人の繋いだ手を見てクスリと笑った。

「マコちゃん良かったね。今さら私がこんなこと言っても信じてもらえないかもしれないけど、マコちゃんと団長がこうなってちゃんと嬉しいからね」

「そんな風に思ってないよ」

「それなら良かった」

 マリーベルが嬉しそうに笑ってくれたので、真子もようやくこの幸せを心から喜ぶことができた。
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