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一章 白い光に包まれて

15.本来の姿-1

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 着飾ったアレクセイと真子は王都の街を一緒に歩くと、街のいたるところが花やリボンで飾りつけられていた。
 よく見ると銀色の月がモチーフになっている飾りが多かった。

「銀夜祭の夜は魔術士が本来の姿に戻って銀の月に感謝する日なんだ。転じて魔術士以外でも銀夜祭は秘密を告白する日って言われている。だから好きな人に告白したりする日でもあるんだ」

「私は魔術士じゃないのに、こんな素敵な服を着せてもらって良いのかな?」

「よく似合っている。オレたちみんながマーコを着飾らせたかったんだから気にしなくて良いよ。まぁ、オレたち、というかシルヴィアが特に乗り気だったんだけど」

「こんなキレイな格好したことなかったから嬉しい」

「女の子らしい恰好は嫌じゃなかった?」

 どうやら以前、女の子らしい恰好は苦手だと言った時のことを言っているらしい。

「あ、えっと、普段から着るのはちょっと抵抗あるけど、これはなんかコスプレみたいっていうか」

「コスプレ?」

「えっと、仮装?」

「はは、そうか」

 仮装と言うと納得したようで、アレクセイは目じりを下げて微笑んだ。

「あの、昔から私が女の子らしい恰好をすると嫌がる人がいて、それでなんだか落ち着かないっていうか……。だからこういう格好は慣れてないだけで、別に嫌なわけじゃないよ」

「マーコが好きな格好をするのが一番だ」

 アレクセイが真子の頭をポンと叩くと、頭の飾りが揺れて微かに鈴の音が聞こえた。

 街はいつもの商店の他に色々な屋台も並んでいて、アレクセイと並んで歩くだけでも楽しかった。
 真子が物珍しさにキョロキョロしていると、アレクセイが顔を寄せて耳元でささやいた。

「何か買うか」

「え?」

「物欲しそうな顔している」

 そう言って真子の頬をツンとつついてからかい、楽しそうに笑う。
 いつもと変わらない距離感のはずなのに、アレクセイの姿が見慣れなくて真子はなんだかそわそわして落ち着かなかった。

 街の日が沈みあたりが暗くなってくる。
 それぞれの家の門や窓にランプが灯され薄暗くなった街並みにがぼんやりと光り、それはとても幻想的な雰囲気だった。

 街の一角にある広場では大小様々なテントが並んでいた。
 この中で銀の月を眺めるらしく、アレクセイはそのうちの一つの小さめのテントの前で立ち止まった。
 入り口の商人にお金を払ってテントの入り口を開けてもらう。

「マーコ、おいで」

 アレクセイが真子の手を引いてテントの中に入った。
 入り口で借りたランプをかけると、テントの中はオレンジ色にぼんやりと光った。
 地面には毛足の長いカーペットが敷いてあり、テントの中央には大きなものから小さなものまでいくつものクッションが置いてある。
 テントは天幕の一部を開ける事ができるようになっていて、クッションに座るとちょうど夜空が見えるようになっていた。

「ここで銀の月が昇るのを待つ」

 真子をクッションに座らせて膝掛けを掛けると、アレクセイはランプの灯を消した。
 暗くなった天幕の窓からは夜空がよく見えた。
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