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96.エロ神様○○祈願の神様になる!

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エロじじいに連れられて来られた所は、子供達が一杯いた。

『ここ学校か何かか?』
「姫さんが言ったんじゃろ。懺悔するんなら争いで親を亡くした子供の施設を作れと。作ったんじゃよ…あの子等は儂の子供じゃ。番もおらんのに、いきなし子だくさんになってしもたわい……」

そう言ったじじいの声は、少し嬉しそうだった。
成る程…、これを見せたかったのか。このじじいもエロさえなかったら、まともなんやけどな…。
すると、向うの方から元気な声が上がる。


「あっ、ルビナス様だぁーー!」


1人の子がじじいを見つけ声を出すと、そこにいた全員がこっちを見て駆け寄って来た。
膝をおり、子供達と同じ目線になるじじい。髭を引っ張られたりとやりたい放題する子供達。いつの間にか子供が群がってじじいが見えなくなる。それを見て、自然と顔が綻んだ。



子供に手を引かれながら、施設の中を案内される。



「あそこにね、学校が出来るんだ~」



小さい女の子が嬉しそうにまだ何もない平地に、指を指す。


『学校かぁ。沢山のこと学んどいでな。ほんで、こっから羽ばたいていき。あんた等の未来はきっと、広く大きなものになんで』

「うん!」




施設の中を見終わり、中庭の東屋で休む。
一緒に手を繋いで来た子供等は、中庭にあった大きな噴水で遊び始めた。私等は、そんな子供等を眺めてベンチに座る。

『じじい・・、よう頑張ったな、褒めたるわ』
「・・・」
『何やねん?』
「初めて姫さんに褒められた…」
『言うとくけど、じじいがエロに結び付けるから誉められへんかっただけで、結構褒める所はあってんで…。おっと、図に乗るなやっ』

図に乗ってこっちに抱き着こうとしたので、片手で顔面を抑え込む。

「ぷぅー!」
『何可愛く拗ねてんねん。拗ねて可愛いのは、子供と・・・』
「子供と?」

私の番認定者に限ると言いかけて飲み込んだ。



────マジ・・・私はこの頃、おかしい。




『///子供とっ、じょ、女子に限るっ!、、、』

そう言うとふん!と言って拗ねるのをやめたじじい。

遊んでいる子供達の明るい声を聞きながら、この子等に差し伸べられた手はあったかかってんなと実感する。じじいがその手を離さへん限りあの子等は、安心して笑っていられる。
再度まじめにじじいに頼む。

『────親の恩は次第。これ、日本のことわざや。親から受けた恩をあの子等が受け取り、あの子等が親となりまたその子供へって意味や。……じじい、しっかり子に伝えや。最初の導き手が肝心やで。私も応援したる』
「姫さん……マジ結婚してくれんかのぉ。子ができたら、欲が出た。今度は嫁さんが欲しい……。嫁さんにするなら、姫さんがええ……儂も年じゃ、短い命を姫さんと一緒に過ごしたい………傍におってくれんか?」

声のトーンから、ギャグってないと推測される。その為、私は枯れ専ちゃうぞ!って突っ込めない状態になった…。これは非常にピンチな告白である。

じじいも面白い人間であることは確かだ。つるめるかつるめへんかで言えば、確実つるめる口。
じゃ、番になるかと言えば、無理な範疇に入る。付喪神になろう年齢の人間を恋愛対象には見れない。傷つけんようここは、定番なセリフで逃げる。


『ルビナス様は、素晴らしい人。私には、勿体ないわ。私なんかよりこれからいい人がきっと見つかると思うのっ!』
「・・・」
『///(逃げられたか?)』
「……………何かそのとってつけた物言い腹が立つぞ!しかも、儂が余生が短いと言っているにも関わらず、これから・・・・という言葉を付けた所に、何も考えずに言った感がありありじゃ……儂がエロで残念なら、姫さんも大概その無自覚な失礼さが残念じゃ…もういいわいっ」


そう言って、大きな溜め息をつかれた。
どうやら私は、気の使い方を間違ったようである。
乙女な声を出すため声のトーンを上げ、関西弁はやめたのが空々しく聞こえたようだ。そして、定番な少女漫画のセリフは、余生が短い奴には適していなかったと心にメモる。

そんなやり取りをしている時に、声が掛かる。


「トーカ姫?」


振り向くとミランダ妃が侍女さんと護衛騎士を伴って立っていた。
じじいと私が慌てて立ち上がりお辞儀をする。そして、私に小声でじじいが説明した。


「儂が施設を作ると言ったら、祖の王達や妃様が親を亡くしたのは自分達のせいだと言ってな…、さっき言っていた学校は王達が建ててくれるんじゃ……」

あぁ・・、この人も心を痛ためてるのか・・・・・。

ミランダ妃が傍まで来たので、改めて挨拶する。

『・・・ご無沙汰です、ミランダ妃』
「///私、エドワードから何も聞いていないわっ!」
『親父達に内緒で、宰相さん達が工作したみたいで…。私も行き無し呼ばれて…ははははは……』
「まぁ!」

そう言うと、私の都合も考えずに連れ戻したことに怒ってはいたが顔は嬉しそうだった。
ミランダ妃も東屋のベンチに腰を掛けた。
じじいはさっき子供等に手を引かれて、魔術で噴水を使った水芸を強要されている・・。それを見ながらミランダ妃に礼を言う。


『学校を建ててくれるってさっき聞いたけど、ありがとうな』
「いいえ、礼を言うのは私達です。本来私達が気づかなければいけなかったのに…」
『これは、実体験してる人間やから気づけてんけどな』
「!、、、苦労・・・なさったのでしょうね・・・」
『手を差し伸べてくれた人間が、私の周りに結構いたから苦労というようなもんはなかったな。それよりも、寂しかったかな。だから、暴走族みたいなチームでつるんでた』
「……寂しいという気持ちは、どうしても人恋しさになってしまうものよね…」

そう言って、溜息をついた。

『…何か悩み事でもあるんか?』
「…………情けないと思わないでね。…毎年この繁殖期は、私にとって辛い時期なの。1人になるとどうしても色々と考えてしまって…。今年は施設が出来て子供達との時間を作るのだけれど、今度はそんな子供達を見ると別の意味、寂しい気持ちが湧いて来て…。こればっかりは、どうしようもないのにね、、、」

情けない顔で笑うミランダ妃。子供が出来ないことを気にしてるんか・・・

う~む…それは、どうしようもないなぁ…。近代の医者と設備が此処にあったら、何とかなるかもしれんけど、この世界ではそれは神様頼みや…………。
ふと水芸をしてるエロ神様が目に付く。慌てて自分のポーチからハンカチを出し、侍女さんに今すぐ小さい袋状の入れ物を急遽作ってくれと頼む。そして紙と書くものも用意してもらう。あとは、じじいをこっちに呼ぶだけ。

『じじい、ハウスっ!』

私がそう叫んだら、素直に戻ってきたじじい。そんなじじいの髪を躊躇なく引っこ抜く。

「うぎゃぁーーー!!」

手の平には、剥げたんちゃうかってぐらいの髪の毛が抜けていた。こんなぎょうさんはいらんかったのに……。毛がふさふさしてるが、意外とじじいの毛根は弱いとまた心にメモる。そして、2、3本だけ残して、無情にも残りは捨てた。

「行きなし何するんじゃっ!しかも抜いておいて、捨てるのかっ?!!」

ピョンピョン跳ねて怒るじじい。それを無視して、紙と書くものを持ってきた侍女さんからそれを受け取り、ちゃっちゃと文字を書く私。

「トーカ姫・・、何をしているの?」
『日本のお守りを作ってるんや』
「お守り?」
『これや』

そう言って、紙に書いた"子宝祈願"の文字を見せる。
それに、エロ神様の髪の毛をくるんで侍女さんに即席で縫ってもらったお守り袋に入れた。



エロ神様に柏手を打って願を掛ける。怒っていたじじいが、きょとんとした感じで黙ってそれを受けいれた。

『どうか、ミランダ妃に子供が出来ますようにっ!!付喪神様、エロ神様、叶え給え~!!南無南無・・・』

お守り袋を、ミランダ妃のお腹あたりのドレスのリボンに括り付けお腹をさする。
ちょっと、恥ずかしそうにするミランダ妃。

『迷信やと思うかもしれんけど、昔話に神頼みで子が授かったっていうのようあるねん。私の念も入れといたし、試しにこのこの繁殖期だけでも肌身離さず付けてみて。辛い気持ちも、寂しい気持ちも、もしかしてっていう期待感から少しは、和らいでくれたら嬉しいんやけど…』
「トーカ姫・・・。」

涙ぐむミランダ妃。

『因みに、このエロ神様のご利益は子宝の方もやけど、健康や長寿にも効くと思うで。なんたってこの神様100歳近いからなっ!』

その瞬間、皆の動きが止まった。
そして、全員の声がハモる。


「「「はっ?!」」」


ミランダ妃もエロじじいの歳を知らなかったようだ…
空気の存在の護衛の騎士達が自分と同じように声が出た事に、苦笑いしてるホルスさん。

当の本人は、どうだすごいだろうとふんぞり返っていた。



だがどうしても私には、その姿がオールド・イングリッシュ・シープドッグがチンチンしてるようにしか見えなかった。マジ残念な風貌である・・・・。
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