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94.ポポvs赤毛→ポポvsチンカス

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「ポポ、ちょっと俺の部屋に来い」



部屋で寛いでいると、威圧たっぷりな声で赤毛に呼び出しを受ける。

そろそろばれる頃だと思ってましたけど、出来ればもうちょっと後の方が嬉しかった。トーカさんの理性があと少しで崩壊かな…と思ってた分残念だ。ここ2、3日連日連夜トーカさんを煽りまくっていたからだ。

でも、まぁこのままばれなかったらあの番認定者達は、バカ揃いと断定したところだ…。
たぶんばれたのは、毎朝、目の下クマぞうになってるトーカさんの顔だろうと予想がついた。口だけの魔術のトーカさんが、そこまで疲れるはずがないからだ。マルクスさんと健太さんには術で深い眠りについてもらっている為、この2人にトーカさんが寝れていないのかと聞いても意味がない。同室の僕は魔術を使え、そして依然と雰囲気が変わった。そんな僕もトーカさんの番認定者。
この3つで考えられる事は、"僕が何かを仕掛けている"と判断できる。


さて、このドアの向こうで怒り心頭で、あの人達は待ち構えてるんでしょうね…。
はぁーと、ため息をついてドアを開ける。

案の定番認定者達が勢ぞろいしていた。しかも、マルクスさんも居て僕を睨んでいる。此処に居ないのは、場を荒らす健太さん、そしてトーカさんとグランさん達とギルスさんだ。今日、あの人達だけでザルビア国に開墾用の耕作機を買いに行った。そしてそのまま今日は、ザルビアの王城に泊まる。


なるほど、仕組まれてたということか…。


「ポポてめぇ、俺を騙してたのか!」


マルクスさんに、いきなりてめぇ呼ばわりされる。これは、ちょっと吃驚だ。

「・・・騙したつもりは、ありませんよ。僕とトーカさんの時間を邪魔されたくなかっただけです」
「ポポ、やっていい事と悪い事があるんだよ!仲間を騙してまで、女を自分の物にしてぇのか?!」
「マルクスさん、おかしな事を言いますね。本来、番は一生もので1対1だ。でもトーカさんは違う。今現状1対7だとトーカさんは言う。1対1にする為に、自分の番に対してアピールして何が悪いんでしょうか。逆に聞きたいのですが、貴方達は今後どうするつもりですか?自分達を番と認めてもらった事に浮かれているようですが、根本の解決になっていない。こういうやり方しかないのでは?それに、あなた達の中で僕は番候補とさえ見てもらっていない。いつまでも、子供扱いだ。どうです。これで少しは、僕を番候補として認識しましたか?」
「・・・」

皆が黙る中、赤毛が大笑いする。訝しげに赤毛を見る。

「認めてやるよお前が男だってな。そして、番候補としてもな。それと、お前が言うように1対7じゃ、唯一無二の番になれないのは確かだ。此処は、それぞれが嬢ちゃんに男をアピールする必要があるって事でいいんだよな、ポポ?」

この人のこの言い方の時は要注意だ。何かを仕掛けるつもりで聞いてきてる。何故なら、全く目が笑っていない。ルビナス様も一番やりづらいのはこの男だと言っていた。騎士であり、策士でもあるからだ。あのローレリアの時を見てもやり手だと思う。だから下手な返答は命取りだ。

赤毛は未だ返事をしない僕に再度聞いてきた。

「ポポ、答えろ」

唇を噛んで、仕方なくその通りですと答えた。

「ほんじゃ、俺達は遠慮なくアピールするわ。但し、お前が姑息にマルクス達に掛けた催眠術の件も、お前を蹴落とす材料の1つに使わせてもらう。嬢ちゃんは、こういう姑息が一番嫌いだからな。折角、いい処まで持っていったのに──────すまねぇな、ポポ」


やられたと思った。攻めどころを失敗した。他に言い方はなかったか自問自答する。だが今更そんな事を考えても仕方がない。言った言葉は、消せない・・・。僕はやはり子供だと認識する。この人達をけん制する事ばかりが頭にあって、当事者であるトーカさんの性格を考えなかった。赤毛がいう通り、こういうやり方をあの人は一番嫌う。涙が出そうだ・・・。負けた涙でなく、浮かれていた自分に情けないという涙だ。項垂れたままの僕に、マルクスさんが誰かに入ってくるように言う声が聞こえた。隣室のドアが開き、入ってきた人を見て愕然とした。


「なっ、なん・・で・・・・?」




入ってきたのは、トーカさんだった。すぐに赤毛を睨むと俺じゃねぇよと言って、マルクスさんを見た。あぁ…、この人も策士だった事を思い出す。赤毛が戦場の策士なら、この人は訊問と政治交渉の策士だ。いわゆる言葉の駆け引き・・・。そこで赤毛が考えた筋書きでないと悟る。

「いいか、ポポ。俺や健太にした事は、俺等2人に謝れ。それが筋だ。それで、俺等はチャラにする。じゃ何故、トーカに俺達の話を聞かせたんだっていう話になると、これはベルナール達に意識を持たせるためだ。ポポ自身、さっき言ったよな。皆から認めてもらっていないって。トーカがお前を番候補と認めてるのに、こいつ等と来たらお前を子供扱いして、肩を並べた位置に見てねぇ。それは、お前を認めたトーカに対しても失礼だし、仲間としても失礼だ。この場を借りて、もう一度言わす。トーカがその証人だ」

そう言った後、赤毛やその他の番候補達が僕に向かって、はっきり言った。


ポポは仲間であり、ライバルであると・・・・


今度は、違う涙が出そうだった。この人はこういう面倒見がいいから、貧乏くじの鞘になるんだなと思う。損な性格だ。でも、そういう性格だからこそ、トーカさんはこの人に懐くんだと思った。


「ほんじゃポポ、整理するぞ。トーカは、相部屋を自分で割り振った以上、ポポに部屋替えを言い出せなかった。ベルナール達はお前を番候補と認めた。もう何が言いたいか分かるよな?」

その言葉に頷くと、僕とガントさんが入れ替えとなった。正直、赤毛と同室は嫌だと言いたかったが、仕方なく同意した。

そんな時、隣室からドスンという音と共に、健太さんが僕の足元まで転がって来る。
その健太さんを見ると、ロープでぐるぐる巻きにされ、口に詰め物をされていた。なんだ、全員いるじゃないか。買出しに行くということ自体が、嘘だったのか…。

フゴフゴ言う健太さんに、ガントさんが怒る。

「てめぇが加わると纏まる話も纏まらねぇんだよ。じっとしてろよ!」
「フゴ!フゴ!フゴ!」


何を言っているのか分からないが、怒っているのは分かる・・・

マルクスさんが話も終わったし外してやれよとガントさんに言うのが聞こえ、何か嫌な感が働く。

巻かれたロープを外され、口の詰め物を吐き出して怒り心頭で言った言葉に僕とトーカさんはピシっと固まった。


「絶対、皆の交尾を邪魔してやるっす。作戦名は、トンビに油揚げを攫われろ!っす」
「・・・」
『・・・』


何故その作戦名をチンカスは知っている?!!
それを言ったのは、トーカさんとそういう事になりかけたあの時だけだ。僕の足元でそう叫んだチンカスに口だけ動かせるよう縛りの術を掛け、そして床にけり倒した。僕とトーカさんしか分からない、この冷たい空気。トーカさんも寄って来て床に転がった健太さんに唸る。

『おい、その作戦名、何で知ってんねん』
「・・・」
『答えんかい!!』
「ま、まさかあなたもルビナス様の回し者ですか?!」
「それはないっす!ポポさんと同じ修行したら、ち〇こが腫れてマツタケが、松ぼっくりみたいな形になるっす」

速攻そう答えたチンカスに、人生最大の怒りを覚える。続けてまだ言うチンカス。

「ポポさんのブツは発展途上で大きくなかったから、腫れなかったんすよ。平然と自慢話みたいに言ってましたけど、それって女性の中で擦れもしない短小ち〇こって自分で言ってるようなもんす。あの時、どんなにそこを突っ込みたかったか~。漸くこうやって、言えて良かったっす。今後は、余り人に言わない方がいいっす。通常値にち〇こが育成してから、俺は絶倫だ!を自慢してください」


後ろの方で、ザワザワ声が聞こえる。1週間ぶっとうし?短小?発展途上って?絶倫?


「///死ね!!」


そう言って、竜巻を起こして空のかなたに飛ばす。その後ボロボロになって帰って来たチンカス。トーカさんから催眠術が何故チンカスに効いていなかったかを聞いて脱力した。


"術を掛けられる前に、もう寝てたから~"


その為、途中で目が醒めたチンカスは、僕たちの会話を盗み聞きしていたという事だった・・・。

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