ヤンキー・モンキー・ベイビー！

12.熊vs猿…マルクス視点

ラムス邸に着き俺はげっそりしながら、将軍閣下に面会の旨をメイドに伝える。
目の前のメイドが「今…その…えっと……」と歯切れが悪い。

その様子にベルナールが眉間に皺を寄せ「早々に案内されよ」と言ってラムス殿の居る部屋まで案内させた。
そして、唖然とする俺達。案内したメイドも苦笑いしている。

俺達の目の前では、実戦に近い模擬戦をしてる大男と女子……………。
思わずベルナールを見る。多分これは、何だ…んー、呆れ顔？落胆？というやつか…？
お前、結構この女子が絡むと表情豊かになるよな。

案内したメイドは退出してもうい居ない。俺等２人はバルコニーに出た。よく見ると、将軍が苦戦しているのが分かった。というより、相手にされてない感じだ。


将軍の戦いは力任せの"動"。押して押して叩き潰せ的な戦い方。そして、横のこいつは"静"。相手の力も利用して流れるように戦う。その性質は普段の生活をも表し"優美"という言葉が相応しい。
因みにその場合、将軍は"粗雑"。これはあくまで俺の意見だが………。

もう一度戦う２人を見ると、状況がすでに変わっていた。
おい、おい……何マジで将軍キレてんだよ！審判のフレドリックも、この豹変した将軍のせいで慌てて中止させようと右往左往している。狂戦士…？もう本能丸出しの狂った熊ってとこか……。

カチっと音がして横のベルナールが鞘に手をあてたのが分かった。お前この戦いの中に入る気か？すげぇチャレンジャーだな。

俺は遠慮するぞと後ろに身を引いた瞬間、俺の横の壁に何かが飛んで来た。それは先程本能のまま暴れていた将軍閣下。

驚いた拍子に「どわっ！！」と声が出た。
その声でこちらを向いた女子と目が合う。俺と同じ黒い眼…俺は茶色がかった黒い眼だが、その女子は黒曜石のような黒い眼だった。なるほど見た目も異質か…。

そして、すけすけの下着が見えてる事も分からずにふんぞり返って威張る姿は、今横に転がっている熊に何処か似ているなと思った。所謂"粗雑"の分類だ。

再度横のベルナールに目を向け、そして俺は三歩後ろに下がった。お前の沸点は何処にあるんだ！
鞘に手をあてたままのこいつは、女子を睨み付けていた。向うもそれが分かったのか、バツが悪そうにヘニャリと笑った。

へぇ…結構可愛いじゃねーかと思ったら、行き無しベルナールが剣を抜き、目の前のカーテンを叩き切った。悲鳴が出なかった事を褒めてほしい。目の前の女子も同じだったようだ。

ずんずんとそのカーテンを持って女子に近づきそれを被せるベルナール。
そして怒り心頭で女子に命令した様は、馬車内で俺が死にかけた言葉れんあいを肯定する行動のように思える。



"優美"と"粗雑"―――――。



人は自分に無いものを相手に求めるというが、ベルナールはこの女子に何を感じたのだろうか。
行きの馬車内で「会えば分かる」とお前は言ったが、俺の第一印象は将軍閣下の女版だった気がするぞ………。