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これからの
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「じゃ、そろそろ、行ってくる」
早朝。
ぎりぎりまであれこれ調べ物をして、目が冴えて眠れなくて。遠足前の子供かと自嘲して、けれどそれくらい緊張して楽しみにしている自分を、決して否定はできなかった。用意していた服に袖を通し、準備していたリュックを背負う。
リビングでは母も仕事に行くための準備をしていた。声を掛けると、にこやかな笑みが返ってくる。
「うん。お母さんまた夜勤だから、帰りの時間は気にしなくていいからね」
「わかった。えっと……気をつけて」
「あはは。最近、気遣ってくれるじゃん」
「なっ。そ。そんなこと、ねぇって」
からかうような母の言葉に、太は思わず言葉を濁してしまう。恋人相手ではなくても、親しい愛情表現はまだまだ太にとっては扱いが難しいものだ。しかし彼女は優しい表情を浮かべ、どこか、感慨深く、言う。
「……太、かっこよくなったね」
「はっ!?な、なんだよ、いきなり」
「光くんと付き合うようになったからかな?表情が明るくなったし、ちゃんとお母さんの目を見て、話してくれるようになった」
「っ……。」
「光くんと仲良くなれてよかったね、太」
「うん。……良かった。」
親であるからこそ理解しているのだろう太のその「変化」に、そして歓びに、太は強く頷き、ぎこちなく笑う。恥ずかしくも少し泣きそうになって、けれどこれから楽しい一日が始まるのだから、気合を入れなくてはと思った。母はそんな太の気持ちを汲み取るようにそれ以上はなにも言わず、笑顔で太を送り出す。
「いってらっしゃい。気をつけて」
「うん……いってきます!」
その想いに応えるように、自分でも意識的に大きく声を上げて、太は家を出る。
晴れた空。
爽やかな風。
もうすぐ5月へ向かう、春の季節。
──今日は大好き大好きな光との、大事な、大切な、初デートだ。
早朝。
ぎりぎりまであれこれ調べ物をして、目が冴えて眠れなくて。遠足前の子供かと自嘲して、けれどそれくらい緊張して楽しみにしている自分を、決して否定はできなかった。用意していた服に袖を通し、準備していたリュックを背負う。
リビングでは母も仕事に行くための準備をしていた。声を掛けると、にこやかな笑みが返ってくる。
「うん。お母さんまた夜勤だから、帰りの時間は気にしなくていいからね」
「わかった。えっと……気をつけて」
「あはは。最近、気遣ってくれるじゃん」
「なっ。そ。そんなこと、ねぇって」
からかうような母の言葉に、太は思わず言葉を濁してしまう。恋人相手ではなくても、親しい愛情表現はまだまだ太にとっては扱いが難しいものだ。しかし彼女は優しい表情を浮かべ、どこか、感慨深く、言う。
「……太、かっこよくなったね」
「はっ!?な、なんだよ、いきなり」
「光くんと付き合うようになったからかな?表情が明るくなったし、ちゃんとお母さんの目を見て、話してくれるようになった」
「っ……。」
「光くんと仲良くなれてよかったね、太」
「うん。……良かった。」
親であるからこそ理解しているのだろう太のその「変化」に、そして歓びに、太は強く頷き、ぎこちなく笑う。恥ずかしくも少し泣きそうになって、けれどこれから楽しい一日が始まるのだから、気合を入れなくてはと思った。母はそんな太の気持ちを汲み取るようにそれ以上はなにも言わず、笑顔で太を送り出す。
「いってらっしゃい。気をつけて」
「うん……いってきます!」
その想いに応えるように、自分でも意識的に大きく声を上げて、太は家を出る。
晴れた空。
爽やかな風。
もうすぐ5月へ向かう、春の季節。
──今日は大好き大好きな光との、大事な、大切な、初デートだ。
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