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Epilogue
鍵盤上の踊り場の上で
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ユニゾンで始まるこの曲。そのユニゾンは、僕らの心の合わさりようを表しているようだった。何年も合わさっていなかったメロディーなのに、それは何十年も寄り添った親友のような合わさりようだった。割と息ぴったりな僕らの演奏に、僕らはお互いに笑い合っていた。
6年前。鍵盤上の踊り場の上で、僕は君に手を差し伸べた。澪にピアノを弾くきっかけをつくったのは、明らかに僕の方だった。
それを澪は手に取って、ぎこちなく踊り始めた。踊れば踊るほど、君は楽しそうに、嬉しそうにしていた。
段々と技術が気持ちに追いついて、澪は本当に嬉しそうだった。
けれど、それはある日突然壊された。
現実という名の攻撃が、澪の元に降りかかったからだ。
澪は、踊り場から姿を消した。ドアの内側に引きこもり、踊ろうとしなかった。
けれど僕は諦めなかった。
もう一度、澪と踊りたい。澪の楽しそうな顔を見たい。ドアをノックして、声をかけて。
そうして君は、また戻ってきてくれた。
君は楽しそうに踊って、僕に踊る意味を見つけさせてくれた。
その後は物理的に離れたけれど、それはきっと別の場所でお互いに踊り続けていたようなものだ。
そして、時を超えて僕らはまた出逢った。あの日と変わらぬ踊り場で、あの日と変わらぬ表情で。
そんな物語を奏でるような指先は、あの日よりも一回り大きくなった気がする。前に苦戦していたオクターブ続きの箇所も、今はこんなに楽に弾ける。
時折、1番小さな指先がぶつかりそうになったり、少し苦戦することもあったけれど。
澪は、楽しそうだった。ピアノを弾くことに、喜びを感じているようだった。そんな澪の様子を見て、僕までもが嬉しくなっていた。
もっと、鳴らそう。
もっと、響かせよう。
あの夏の日から続いてきたメロディの、続きを今、重ねていこう。
6年前。鍵盤上の踊り場の上で、僕は君に手を差し伸べた。澪にピアノを弾くきっかけをつくったのは、明らかに僕の方だった。
それを澪は手に取って、ぎこちなく踊り始めた。踊れば踊るほど、君は楽しそうに、嬉しそうにしていた。
段々と技術が気持ちに追いついて、澪は本当に嬉しそうだった。
けれど、それはある日突然壊された。
現実という名の攻撃が、澪の元に降りかかったからだ。
澪は、踊り場から姿を消した。ドアの内側に引きこもり、踊ろうとしなかった。
けれど僕は諦めなかった。
もう一度、澪と踊りたい。澪の楽しそうな顔を見たい。ドアをノックして、声をかけて。
そうして君は、また戻ってきてくれた。
君は楽しそうに踊って、僕に踊る意味を見つけさせてくれた。
その後は物理的に離れたけれど、それはきっと別の場所でお互いに踊り続けていたようなものだ。
そして、時を超えて僕らはまた出逢った。あの日と変わらぬ踊り場で、あの日と変わらぬ表情で。
そんな物語を奏でるような指先は、あの日よりも一回り大きくなった気がする。前に苦戦していたオクターブ続きの箇所も、今はこんなに楽に弾ける。
時折、1番小さな指先がぶつかりそうになったり、少し苦戦することもあったけれど。
澪は、楽しそうだった。ピアノを弾くことに、喜びを感じているようだった。そんな澪の様子を見て、僕までもが嬉しくなっていた。
もっと、鳴らそう。
もっと、響かせよう。
あの夏の日から続いてきたメロディの、続きを今、重ねていこう。
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