鍵盤上の踊り場の上で

紗由紀

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Epilogue

きっかけ

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「ねぇ、覚えてる?なんで私が教師を目指そうとしたか」
「覚えてない」
「え、私前に言った気がするんだけど」
「そうだったか?」
前に言っていたとしても、6年前の記憶だ。忘れるに決まってる。むしろ覚えている方が信じられない。
「君がきっかけなの」
「え?」
「だから、君なの」
澪は僕の目をじっと見つめてそう言った。その純粋な眼差しに、目を逸らしたくなる衝動に駆られる。
「君があの夏の日にピアノを教えてくれたから。私も君みたいになりたいって思ったんだよ。ちなみに教科は国語ね」
「…そうだっんだ」
覚えていなかった。というより、知らなかった。澪が僕をそんな風に見ていたなんて。嬉しくなって、僕の顔は綻んだ。というか、ちなみにと言った情報はいらなくないか。
「何笑ってんの~?」
「笑ってない」
「嘘つきっ」
そんな会話を交わしていれば、いつの間にか音楽室についていた。久しぶりに澪と開ける音楽室のドア。いつかのように少し湿気の籠った空気が、ドアを開けて開放される。
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