鍵盤上の踊り場の上で

紗由紀

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第3章 Challenge

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「水瀬、弾けそうか?難しくない?」
楽譜を先程よりも更に細かく確認した。僕は鍵盤の左側、つまり低音域を、水瀬は右側の高音域を弾くことにした。
曲の構造はこうだ。
まずは、Aパート。このパートはユニゾンで始まる。テンポも速く、音符数も多いところなので、ここを合わせるのはかなり苦労が必要そうだ。
次に、Bパート。
ここは、主に水瀬が主旋律。僕は水瀬の引き立て役として伴奏形式のハーモニーを演奏する。水瀬の主旋律は、先程のAパートに比べれば音符数は少ない方だが、問題は僕。スタッカートの軽快なリズムを速く正確に弾かなくてはいけない。ここはかなりの難所になりそうだ。
中間の、Cパート。
このパートで、僕と水瀬の共同作業がある。掛け合いのパートだ。お互いが話し合うように、似たようなリズムを異なる音程で投げかけ合う。ここでは、主旋律と副旋律のときのメリハリが必要だ。
そして、Dパート。ここでは僕が主旋律となる。
低音域の主旋律は、どうしても伴奏のようになりがちだ。単調で、強弱の差もあまりない演奏に。そして、これまで主旋律が多かった高音域が副旋律になるのだから、誤って高音域が主旋律のように弾いてしまうこともある。
フィナーレを飾る、Eパート。音符数の多かったAパートよりも更に音数が増えて、音域の幅も広がる。基本的に強弱はf以上で構成されていて、体力も必要な箇所だ。
...というのが、僕なり解釈である。先程よりも細かく見たからわかったが、これはかなり難しい。立花先生が水瀬のレベルに合わせたと言っていたが、かなりギリギリのレベルだろう。
「うん、平気平気。それに、もしわからなくても最高の指導者が隣にいるからね」
水瀬はそう言って、僕の目をじっと見つめた。からかうような目である。僕はそれに耐えられなくなって、目を逸らしてしまった。水瀬が笑っているのが気配でわかった。
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