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第2章 Disabled
真実
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義足。
水瀬の右足は、膝から下が消えていた。代わりにあったのは、冷たそうな金属の塊だった。衝撃の事実に、僕の身体は硬直する。どうにか言葉を紡ごうとするが、口が微かに動くだけで声は伴わない。
「私、障害者、なの…」
水瀬の声は震えていて、今にも泣きそうだった。何故水瀬が泣きそうになるのか。泣きたいのは僕だ。
障害者。言葉でしか知らなかった存在。そんな存在が、目の前にいた。しかも、それは僕の大事な人で。
なぜ、今まで気づかなかったのだろう。ずっとそばにいたし、異変なら気がつくチャンスはいくらでもあったのに。たとえば、体育前にたまたま会ったときに長袖ジャージを着ていたこと。あれもきっと、そうだった。ヒントだった。水瀬の葛藤を知るための、一歩だった。
僕は目の前にある真実に、ただ呆然とした。
「ペダルを使って練習するって聞いて、私、怖かった。障害者って気付かれて、相原くんに軽蔑されたりするんじゃないか、って…」
目の前の少女は、必死に訴えていた。
私を差別しないで、と。
生きづらい世の中だと思う。
たった少し、何かが他人と違うだけでその集団から跳ね除けられるのだから。それは障害者だけに当てはまるものではなく、きっと全世界の人が悩み、苦しんでいることだろう。
水瀬はきっと、その辛さというものを痛いほど理解している。どんなに「差別はいけない」と言われても、どんなに誰かが平和を訴えても、世界は変わらない。障害者には、悲哀の目や侮辱の目が向けられる。時に笑われ、除外の対象にすらなってしまう。
今の僕にできることはなんだろう。
水瀬を勇気づけるには、どうすればいいだろう。
水瀬の右足は、膝から下が消えていた。代わりにあったのは、冷たそうな金属の塊だった。衝撃の事実に、僕の身体は硬直する。どうにか言葉を紡ごうとするが、口が微かに動くだけで声は伴わない。
「私、障害者、なの…」
水瀬の声は震えていて、今にも泣きそうだった。何故水瀬が泣きそうになるのか。泣きたいのは僕だ。
障害者。言葉でしか知らなかった存在。そんな存在が、目の前にいた。しかも、それは僕の大事な人で。
なぜ、今まで気づかなかったのだろう。ずっとそばにいたし、異変なら気がつくチャンスはいくらでもあったのに。たとえば、体育前にたまたま会ったときに長袖ジャージを着ていたこと。あれもきっと、そうだった。ヒントだった。水瀬の葛藤を知るための、一歩だった。
僕は目の前にある真実に、ただ呆然とした。
「ペダルを使って練習するって聞いて、私、怖かった。障害者って気付かれて、相原くんに軽蔑されたりするんじゃないか、って…」
目の前の少女は、必死に訴えていた。
私を差別しないで、と。
生きづらい世の中だと思う。
たった少し、何かが他人と違うだけでその集団から跳ね除けられるのだから。それは障害者だけに当てはまるものではなく、きっと全世界の人が悩み、苦しんでいることだろう。
水瀬はきっと、その辛さというものを痛いほど理解している。どんなに「差別はいけない」と言われても、どんなに誰かが平和を訴えても、世界は変わらない。障害者には、悲哀の目や侮辱の目が向けられる。時に笑われ、除外の対象にすらなってしまう。
今の僕にできることはなんだろう。
水瀬を勇気づけるには、どうすればいいだろう。
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