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第二章「王国を目指して」

第六十九話「意思を受け継ぐ者」

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「サシャ、俺の代わりに魔王を倒してほしい……世界を守るためにも」
「魔王ですか、俺に魔王が倒せるかは分かりませんが……」
「今すぐにとは言わない、十分に力を蓄えた時で良い。魔王もすぐには襲って来ないだろう……」
「そうですか。もし、魔王が人間を襲うようでしたら、俺が魔王を倒します」
「ありがとう……いつかきっと、俺の仇を討ってくれ。これは俺が生前使っていた魔装と大剣だ」

 デュラハンはそう言うと、黒い金属から作られた魔装と大剣を俺に差し出した。魔装はまるで羽根のように軽い。一体どんな金属で出来ているのだろう。

「俺の力と技術。全てを授けよう。俺の体に触れてみるんだ。俺の力を全て渡す」

 俺は右手でデュラハンの亡霊に触れた。デュラハンの亡霊は穏やかな光を放つと、俺の右手には爆発的な魔力が流れ込んできた。途方もない量の魔力だ……これがデュラハンの力なのか? これだけの力を持っていても、デュラハンは魔王に勝てなかった。魔王か……俺がいつか必ずデュラハンの代わりに魔王を討つ。

「サシャ……世界を頼んだぞ……」
「はい。お任せ下さい」

 体に魔力で満ちている、しかも人間の魔力ではない。魔族の魔力だ。確かに以前との違いを感じる。

「これでサシャも私と同じ魔族ね……」
「サシャ、何か変わった感じはあるか?」
「魔力の総量が増えた様な感じはするし、力がみなぎってるよ」
「うむ。サシャの体から強い魔力を感じる。また強くなったという訳か」

 デュラハンが託してくれた魔装を身につけると、不思議とサイズは丁度良く、顔以外の全てを包み込んだ。まるで生き物の様にサイズが自在に変わる。これが魔装の性能なのだろう。魔装は俺に対して魔力を供給してくれているみたいだ。使い切れない程の魔力が体に流れている。それからデュラハンの大剣を持つ。大剣は驚くほど軽く、片手でも十分に扱える。きっと魔装との相性が良いのだろう、

「魔装が俺に魔力を与えてくれている……」
「サシャと魔装の相性が良いからでしょう。魔装は装備した者の魔力と力を大幅に上昇させる効果がある。ただし、元々強い魔力を持つ者が身に付けなければ、魔装は効果がないの」
「力も増えているのかい? 道理で大剣が軽いと思った」
「私の魔装は魔力しか増えない仕組みになっているけど、古い時代の価値ある魔装は、装備した者の身体能力も大幅に上昇させるの。それは戦士長が身に付けていた最高の魔装よ。大剣だって片手で扱えるでしょう」

 どうりで大剣が軽い訳だ。ギルドカードで詳細を確認してみよう。

 武器:デュラハンの大剣
 防具:デュラハンの魔装
 魔法:グランドクロス スラッシュ ガード ハック ハウリング マジックドレイン
 効果:戦士長デュラハンの誓い(魔力上昇・攻撃速度上昇)デュラハン(攻撃速度上昇・回避速度上昇)

 魔法の「グランドクロス」は剣技だろうか。今度試してみる事にしよう。マジックドレインを使えるようになったのはありがたい。魔族特有の魔法まで使えるようになったみたいだ。デュラハンの装備を身に付けた俺の体には、感じた事も無い程の魔力と力で満ち溢れている。今ならメテオストームを何発でも撃てそうだ。

「サシャから感じる魔力が変わったの……サシャなら魔王だって倒せるの」
「サシャ、また強くなったね。ルナの事、守ってくれるんだよね」
「ああ、勿論だよ。これがデュラハンの力か……魔王が何処に潜伏しているかは分からないけど、アルテミス王国に着いたら魔王に関する情報も調べようか」

 今日も色々な事があったな。まずは家に入って休むとしよう……。
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