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第一章「冒険者編」

第四十三話「宴と召喚の準備」

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 暫くしてクーデルカが浴室から出てくると、俺達は早速宴の会場に移動した。アルテミス大陸料理の店に入ると、既にゲルストナーとアラスターさんがお酒を飲んでいた。すっかり打ち解けたのだろう。

 大量の肉料理を頼んでから、俺も葡萄酒を飲む事にした。今日はアイリーンとキングが隣の席に座っている。アイリーンは俺のゴブレットに葡萄酒を注ぐと、次々と料理を盛ってくれた。ルナやクーデルカとは俺に対する接し方が少し違うんだな。

「ありがとう、アイリーン」
「どういたしましてなの」
「ボリンガー様、頂きます」
「沢山食べるんだよ」
「はい!」

 今日も楽しい宴が始まった。ルナはクーデルカの腕輪を見つめると、不思議そうな表情を浮かべた。それから仲間達の新装備を見て、自分の事の様に喜んだ。キングはルナに新しいメイスを渡すと、ルナは立ち上がってメイスを振り下ろした。爆発的な風が店内に吹くと、店員は腰を抜かした。

「これがキングの新しいメイスなんだ!」
「ソウ……」
「ルナ。私、サシャに腕輪を作って貰ったのよ」
「この腕輪はサシャが作ったの? いいな……だけど、私はサシャと同じ首飾りをしているもん」
「嘘……知らなかった……だけど、ルナ。サシャは胸元に私のカメオを付けているでしょう? 気が付かなかった?」

 俺の胸元にはクーデルカの横顔が彫られたカメオが留まっている。ルナが俺の胸元のカメオを覗き込むと、ルナは目に涙を浮かべた。俺は直ぐにルナを抱きしめると、クーデルカは申し訳なさそうにルナに謝った。

「全く。泣き出してしまうなんて、ルナは本当に子供なんだから」
「だって……サシャの服にクーデルカの顔がついているんだもん……」
「サシャは確かにあなたを育てているかもしれないけど、私を召喚してくれたんだから、私の主でもあるの。主が私のカメオを付けるのは当然でしょう?」
「サシャは私のだもん!」

 ルナが俺の体を引き寄せると、クーデルカも対抗して俺の腕を引いた。

「サシャはわたしのものよ」
「サシャ……タイヘン……」
「ああ、キング……助けてくれ」

 キングが二人をなだめると、俺はすっかり疲れて仕舞って椅子に座り込んだ。朝の訓練だけでも体力の限界を迎えているのに、二人に振り回されては体が持たない。更に訓練を積んで体力を付けなければならないな。

「サシャは良い仲間に恵まれたな! 流石、俺が人生を賭けた男だ!」
「ゲルストナー。俺は最高の仲間と出会えて幸せだよ」
「うむ。店を畳んで正解だったようだ。こんなに充実した毎日を送れるのはサシャと皆のお陰だ、ありがとう」

 ゲルストナーが頭を下げると、俺は暫く彼と二人で語り合いながら葡萄酒を飲んだ。酔いが回ったきた頃、猛烈な眠気を感じたので、俺はルナを連れて一足先に休む事にした……。


 今日は久しぶりにアシュトバーン村とフィッツ町の拠点に戻る日だ。仲間を起こして支度を始める。鎧を着込み、グラディウスとショートソードを腰に差す。ガントレットを手に嵌めてからグリーヴを履き、父の遺品の鞄を背負う。支度を終えて一階のロビーで仲間を待つと、仲間達が次々と降りてきた。

 アシュトバーン村とフィッツ町の拠点に戻るには二日もあれば十分だろう。用事を終えたら、久しぶりにリーシャ村に戻る。往復で四日以内に戻る事にしよう。今回の帰省にはルナとクーデルカを連れていく事にした。キングとアイリーン、ゲルストナーにはアレラ山脈に関する情報を集めて貰う。

 まずはワイバーンの召喚だ。この召喚だけは絶対に失敗出来ない。ブラックドラゴンとの戦闘にもワイバーンの力は必要だと思う。それに、空の移動手段も欲しいと思っていたところだ。町の中心で召喚の準備を始める。鞄から召喚書とワイバーンの頭骨を取り出て地面に置いた。召喚の準備をしていると、町の人達が集まってきた。

「何やってるんだ? あの小僧、召喚魔法でもする気なのか?」
「たまにああいう子供が居るのよね。冒険者ごっこかしら」
「勘違いしたガキは見てられないな。本物の召喚士に失礼だろうが」

 レイリス町の人達は俺を怪訝そうな目で見ている。周りが何を言おうが、俺自身が冒険者である事には変わりない。自分の力を証明するには行動で示せば良い。周りの声に耳を傾けずに、今やらなければならない事に集中する。

「キング、ルナ、少し手伝ってくれるかな?」
「どうしたら良いの?」
「俺の背中に魔力を注いでくれるかな?」
「ワカッタ」

 召喚の成功率を上げるために、二人の魔力を借りる事にしよう……。
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