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15 予想外れの、独占欲!(1)

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 ついに私は十五歳になり、学園に入学することになった。

 この魔法学園の制服はとっても可愛い。白いブラウスに赤いリボン、黒のジャンバースカートには赤と金の刺繍が施してあり、その裾はフリルがついている。その上に大きな襟の付いたローブを羽織るのだ。いかにも魔法学園! という装いでワクワクする。

「ようこそ。リディ」
「クリス様」

 お兄様と学園にやってきた私を、クリス様が出迎えてくださった。婚約から約三年。私たちは今のところ良好な関係を築いている……と思う。

 クリス様とお兄様が学園に入学したら、なかなか会えなくなると思っていた。
 だが、その予想はあっさりと崩れた。クリス様は事あるごとにに公爵邸にやってきたし、王妃様からは頻繁にお茶会と称して王宮へ招待された。さらには、王宮で妃教育が始まったので、クリス様とはかなり頻繁に顔を合わせてきた。

 変わったことといえば、鍛錬にクリス様も混ざるようになったことだ。学園のない日は必ず我が家に来て一緒に剣術の稽古をしたり魔術の修行に加わってくる。
 そして、いつの間にか私よりも力をつけ、剣術も魔法も敵わないほどの使い手になってしまった。攻略対象者のチートなのか、ものすごいスピードでめちゃくちゃ強くなっていて悔しい。

 ちなみにアラン様には全くお会いしていない。アラン様に会うのを、クリス様が徹底的に阻止しているらしく、推しのご活躍を見学したいのに、全く会えない。お父様は完全に買収されているのか、聖騎士団のことなのに全く教えてもらえなかった。

 同じ学園にいれば、さすがにヒロインとの恋路を見学できるかしら。

「制服、よく似合っている」
「まぁ! そうですか? 嬉しいです」

 気に入っている制服を似合うと言われて嬉しくなる。クリス様は、何を着ても様になるが、制服姿ももちろんかっこいい。
 男子は紺のブレザーにネクタイ、そして女子によく似た、襟が小さいローブを羽織っている。その長めのローブが、背が伸びてスチル通りになられたクリス様によく似合うのだ! これぞリアル王子様! 三次元万歳!

「馬子にも衣装だな」
「お兄様何かおっしゃった?」
「別に」

 お兄様は意地悪に育ってしまった。だが、チャラ男にはなっていない! ただ、聖石のせいで沢山のご令嬢にアタックされすぎて、少し女性不信になってしまった。その反動かちょっと妹に意地悪が多い。
 魔王のことが済んで生き残れたら、可愛らしい令嬢をお兄様に見つけてあげて、意地悪の仕返しもして差し上げますからね!

「さぁ、入学式に行こうか」
「クリス様がご挨拶してくださるのですよね?」
「あぁ。リディも新入生代表だろう?」
「えぇ。少し緊張いたします」
「リディなら大丈夫だよ」
「リディ、緊張してるといつも以上に顔が怖いぞ」
「お兄様! うるさい!」

 いよいよ、ゲームのオープニングが始まる。

 ヒロインは私と同じ学年だ。つまり今年の新入生。入学式に遅れてきたヒロインは、学園の警備をしていたアラン様に助けてもらう。その後、他の攻略対象者達に道案内をしてもらったり、ぶつかったりして出会いを果たしていくのがこのゲームのオープニングである。

 その出会いのシーンも見学したかったけれど、シナリオ通り私が新入生代表挨拶をすることになってしまったし、クリス様の在校生代表挨拶も聞きたいので我慢することにした。
 クリス様はさすが王子様というだけあって、貫禄もあり威厳もあり、後光まで差している気がするほど眩い出立ちで、私たち新入生のハートを撃ち抜いた。挨拶の後、観客席に座る私に手を振ったので、黄色い歓声が沸き、直後私はものすごく注目されてしまった。

 その後の私の挨拶は何事もなく終了したが、噂や注目の的になってしまって大変居心地が悪く、私は早々に抜け出してクリス様の元へと移動したのだった。

「リディ、今日から君と同じ学園に通えるなんて。嬉しいよ」
「色々とご教示頂けましたら嬉しいですわ」
「もちろんだよ」

 クリス様のそばには、お兄様、そしてキース様が控えている。アラン様はいない。お兄様とクリス様自身がめちゃくちゃ強くなったことで、クリス様の護衛はお兄様になってしまった。シナリオ通りならばここにアラン様もいて、四人でつるんでるはずなのに。なんだか色々改変してしまって、ヒロインさんごめんなさいね。

「こちらはキース。以前にも紹介したと思うが、僕の側近だよ」
「リディア・メイトランドです」
「キース・バリントンと申します。こちらこそよろしくお願いいたします」

 キース様も攻略対象者の一人で、水魔法の使い手である。頭脳派だが多少腕も立つ。サラサラのブロンドヘアに、クリス様より濃い群青の瞳。この国では珍しい眼鏡姿のインテリ系イケメンだ。アラン様のように興味を示すと、キース様までお会いできなくなるので、あまりジロジロ見ないように心がけた。
 ちなみにヒロインがキース様を選んでも、私は魔王戦に巻き込まれて死亡しまーす。

「先程のご挨拶、お二人とも流石でしたよ。未来の王太子夫妻のご挨拶を一度に聞けたのだと自分達の幸運を喜ぶ生徒が数多くいました」
「まぁ!」

 嬉しい。「殿下の婚約者があんな目つきの悪いやつだなんて!」と噂されているものだと思っていたから、好印象をもってくれたようでよかった。

 クリス様は昨年正式に王太子に任命され、時期国王となることが決定している。つまり、お母様の「めざせ次期王妃様」計画は着々と現実味を帯びている。今のところは。

「私のリディが褒められるのは嬉しいが、あまりその魅力的な姿を見せてファンが増えても困るな」
「出た。恋は盲目発言」
「お、お兄様!」
 
 こうして私達は、いつも通りに過ごしていたのだが。

 この世界が、ゲームと色々かけ離れてしまっていることに気づいた者がいた。

「なんで聖女様がもう存在してるの? どうしてディーン様はチャラ男じゃないの!? クリス様には会えないし、イベント全然ちがーう!!!」

 校舎裏、訳もわからないことを叫ぶ女子生徒が一人。
 名前はステラ・オールブライト。かなり稀少な光魔法の使い手である彼女は、この物語のヒロインだったはずだった。

「な、なんでよ……どうしてなのー!?」
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