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結局
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学園に戻るまでエストレヤの屋敷に世話になっていた。
両親は仕事もあるため屋敷に戻り俺一人エストレヤの部屋に…客室に泊まっていた。
食事に侯爵からの呼び出し、更には「部屋に籠ってないで散歩しろ」など言われるとエストレヤは素直に実行していた。
俺は部屋にいても構わなかったのに、エストレヤは散歩をしたがった。
外でお茶をすることもあり、当然俺の膝の上にエストレヤを座らせていた。
なのに、どこから嗅ぎ付けたのか侯爵が飛んできて俺からエストレヤを引き剥がす。
「侯爵もお忙しいんですから、俺たちの事は気にしなくて結構ですよ。」
百パーセントの作り笑いで対応した。
「いやっ、私もちょうどお茶がしたかったんだ。」
と言って許可なく居座る。
「態々庭まで来る必要はないんじゃないんてすか?執務室で休憩していた方が良かったのでは?」
自身を押さえ優しく伝えた。
「気分転換だ。」
流石は侯爵家の使用人、手際よく侯爵の紅茶が用意されていく。
「婚約者同士の大切な時間を邪魔しているとは思いませんか?」
「婚約者を見極めるのに親の意見も大事ではないか。」
「既に婚約者となりましたので、その心配はいりません。」
「常識のない人間であれば、いくら爵位が上であろうと婚約解消は検討しなければならない。」
「俺は婚約解消なんて受け入れません、俺達は結婚するんで。」
「まともでない人間と結婚すれば一生苦しむ事になる、私はエストレヤの幸せを願っているんだ。」
「俺がエストレヤを全力で幸せにするつもりなんで心配はいりませんよ。」
「エストレヤの願う幸せと君の思い描く幸せは果たして一緒なのか?」
「侯爵が望む幸せよりかは、俺の幸せとエストレヤの幸せは近いですよ。」
「…ぁっあのっ二人共っ、喧嘩は…やめて。」
笑顔で攻防していると、弱々しくエストレヤが止めに入って来た。
「エストレヤは俺と婚約解消する気なんて無いよな?」
「ないです。」
間髪入れずにエストレヤは答えた。
「エストレヤはこう言ってますよ、お義父さん」
どや顔をしながら「お義父さん」を強調すれば「お義父さんと呼ぶな」という台詞が聞こえてくるようだった。
「恋は盲目と言って熱に浮かされている今、冷静な判断できていない状態でもある。」
「恋は障害がある程燃え上がりますけどね。」
「障害が無くなった時、一気に覚めるぞ。」
「幸せな家族計画があるんでご心配には及びませんよ、それより侯爵の方はどうなんですか?」
「ん?どう言うことだ?」
「今現在エストレヤは俺と婚約してます。」
「あぁ、不本意だが。」
あっ遂に本音出ちゃったよ。
「行く行くは公爵家に嫁ぐんですよね?」
「あ゛あ゛。」
不満顔ぉ。
「では、侯爵家は誰が継ぐんです?」
「養子を迎える。」
「ふぅん。」
「なんだ?」
「今からでも遅くないんじゃないですか?」
「ん?」
「本音は自身の息子に譲りたいんじゃないんですか?」
「………。」
「第二妃に成れなかった時、エストレヤの為に養子迎えなかったんじゃないんですか?」
「…ぇっ。」
エストレヤも気付いていなかったんだな。
「もう、安心して後継者を望んでも平気ですよ。」
「………。」
「俺はエストレヤを離す気はないんで。」
「………。」
「早くしないと、子供と孫が同じ学年に通うことになりますよ。」
「なっ。」
「学園に在学中は我慢しますが、卒業してしまえば…。」
「…エストレヤの身体を労ってくれ。」
「当然です。」
「エストレヤの身体は弱くはないが強くもない。」
「はい。」
「何人も産ますなよ。」
「………。」
「お゛い゛っ。」
「それは、二人でじっくり話し合っていきます。」
「あぁ…。」
納得したように侯爵は紅茶を飲み干し去っていった。
「あ…アティランさっ…。」
エストレヤは咄嗟に様付けをしてしまいそうになりながらも馴れていこうとしてくれていた。
「ふっ、ゆっくり慣れていこうな。」
「ぅん」
「で、どうした?」
「アティランさ…はお父様の気持ちどうして分かったの?」
「なんとなく…俺だったら大事な奴の幸せを守るためにはどうするかなぁって思っただけだ。」
「…お父様が…。」
「ん?」
「…僕ずっと家のために第二妃になれって言われたんだと思ってた…僕はお父様の跡を継げるような能力を…持ってないから…。」
「あの父親に言ったら泣くぞ。」
「えっ?」
「どう見ても親バカ、過保護過ぎだろう?」
「…そう…なの?」
「じゃなかったら俺にあんなに突っ掛かってこねぇよ。」
「…仲良いよね…。」
「んあ゛、どこをどう見たら仲良いって思えんだよ。」
「息がピッタリ。」
「好みが似てんだな。だけど俺とあのおっさんは同族嫌悪だな。」
「…同族嫌悪。」
「あぁ、俺がどれだけエストレヤを愛してるかわかんだろ?」
「…ん…ぅん。」
まだ、俺の思い信じてねぇなこいつ。
「エストレヤ」
「ん?」
「座る時は…。」
「…はぃ」
俺がどうして欲しいかちゃんと伝わり、エストレヤは立ち上がって俺の真横まで移動してくる。
腰に触れると俺の膝を跨ぎ座る。
話すにはお互い顔を見ることが出来ちょうど良い距離かもしれないが、俺が求めてるのはそんな距離じゃない。
腰に腕を回して力技で引き寄せ、背凭れに寄りかかりながらエストレヤ抱きしめる。
衣服が邪魔なほど近い距離でエストレヤの存在を確認した。
使用人達も俺達に見慣れ、それ程視線を感じることはなくなった。
そして明日には学園に戻る。
両親は仕事もあるため屋敷に戻り俺一人エストレヤの部屋に…客室に泊まっていた。
食事に侯爵からの呼び出し、更には「部屋に籠ってないで散歩しろ」など言われるとエストレヤは素直に実行していた。
俺は部屋にいても構わなかったのに、エストレヤは散歩をしたがった。
外でお茶をすることもあり、当然俺の膝の上にエストレヤを座らせていた。
なのに、どこから嗅ぎ付けたのか侯爵が飛んできて俺からエストレヤを引き剥がす。
「侯爵もお忙しいんですから、俺たちの事は気にしなくて結構ですよ。」
百パーセントの作り笑いで対応した。
「いやっ、私もちょうどお茶がしたかったんだ。」
と言って許可なく居座る。
「態々庭まで来る必要はないんじゃないんてすか?執務室で休憩していた方が良かったのでは?」
自身を押さえ優しく伝えた。
「気分転換だ。」
流石は侯爵家の使用人、手際よく侯爵の紅茶が用意されていく。
「婚約者同士の大切な時間を邪魔しているとは思いませんか?」
「婚約者を見極めるのに親の意見も大事ではないか。」
「既に婚約者となりましたので、その心配はいりません。」
「常識のない人間であれば、いくら爵位が上であろうと婚約解消は検討しなければならない。」
「俺は婚約解消なんて受け入れません、俺達は結婚するんで。」
「まともでない人間と結婚すれば一生苦しむ事になる、私はエストレヤの幸せを願っているんだ。」
「俺がエストレヤを全力で幸せにするつもりなんで心配はいりませんよ。」
「エストレヤの願う幸せと君の思い描く幸せは果たして一緒なのか?」
「侯爵が望む幸せよりかは、俺の幸せとエストレヤの幸せは近いですよ。」
「…ぁっあのっ二人共っ、喧嘩は…やめて。」
笑顔で攻防していると、弱々しくエストレヤが止めに入って来た。
「エストレヤは俺と婚約解消する気なんて無いよな?」
「ないです。」
間髪入れずにエストレヤは答えた。
「エストレヤはこう言ってますよ、お義父さん」
どや顔をしながら「お義父さん」を強調すれば「お義父さんと呼ぶな」という台詞が聞こえてくるようだった。
「恋は盲目と言って熱に浮かされている今、冷静な判断できていない状態でもある。」
「恋は障害がある程燃え上がりますけどね。」
「障害が無くなった時、一気に覚めるぞ。」
「幸せな家族計画があるんでご心配には及びませんよ、それより侯爵の方はどうなんですか?」
「ん?どう言うことだ?」
「今現在エストレヤは俺と婚約してます。」
「あぁ、不本意だが。」
あっ遂に本音出ちゃったよ。
「行く行くは公爵家に嫁ぐんですよね?」
「あ゛あ゛。」
不満顔ぉ。
「では、侯爵家は誰が継ぐんです?」
「養子を迎える。」
「ふぅん。」
「なんだ?」
「今からでも遅くないんじゃないですか?」
「ん?」
「本音は自身の息子に譲りたいんじゃないんですか?」
「………。」
「第二妃に成れなかった時、エストレヤの為に養子迎えなかったんじゃないんですか?」
「…ぇっ。」
エストレヤも気付いていなかったんだな。
「もう、安心して後継者を望んでも平気ですよ。」
「………。」
「俺はエストレヤを離す気はないんで。」
「………。」
「早くしないと、子供と孫が同じ学年に通うことになりますよ。」
「なっ。」
「学園に在学中は我慢しますが、卒業してしまえば…。」
「…エストレヤの身体を労ってくれ。」
「当然です。」
「エストレヤの身体は弱くはないが強くもない。」
「はい。」
「何人も産ますなよ。」
「………。」
「お゛い゛っ。」
「それは、二人でじっくり話し合っていきます。」
「あぁ…。」
納得したように侯爵は紅茶を飲み干し去っていった。
「あ…アティランさっ…。」
エストレヤは咄嗟に様付けをしてしまいそうになりながらも馴れていこうとしてくれていた。
「ふっ、ゆっくり慣れていこうな。」
「ぅん」
「で、どうした?」
「アティランさ…はお父様の気持ちどうして分かったの?」
「なんとなく…俺だったら大事な奴の幸せを守るためにはどうするかなぁって思っただけだ。」
「…お父様が…。」
「ん?」
「…僕ずっと家のために第二妃になれって言われたんだと思ってた…僕はお父様の跡を継げるような能力を…持ってないから…。」
「あの父親に言ったら泣くぞ。」
「えっ?」
「どう見ても親バカ、過保護過ぎだろう?」
「…そう…なの?」
「じゃなかったら俺にあんなに突っ掛かってこねぇよ。」
「…仲良いよね…。」
「んあ゛、どこをどう見たら仲良いって思えんだよ。」
「息がピッタリ。」
「好みが似てんだな。だけど俺とあのおっさんは同族嫌悪だな。」
「…同族嫌悪。」
「あぁ、俺がどれだけエストレヤを愛してるかわかんだろ?」
「…ん…ぅん。」
まだ、俺の思い信じてねぇなこいつ。
「エストレヤ」
「ん?」
「座る時は…。」
「…はぃ」
俺がどうして欲しいかちゃんと伝わり、エストレヤは立ち上がって俺の真横まで移動してくる。
腰に触れると俺の膝を跨ぎ座る。
話すにはお互い顔を見ることが出来ちょうど良い距離かもしれないが、俺が求めてるのはそんな距離じゃない。
腰に腕を回して力技で引き寄せ、背凭れに寄りかかりながらエストレヤ抱きしめる。
衣服が邪魔なほど近い距離でエストレヤの存在を確認した。
使用人達も俺達に見慣れ、それ程視線を感じることはなくなった。
そして明日には学園に戻る。
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