29 / 177
遂に
しおりを挟む
イグニス家へ向かう当日。
衣服を整え両親と共に馬車に乗り込んだ。
俺の屋敷からイグニス家は馬車で三十分程の距離らしい。
イグニス家は侯爵家であり、家柄や権力等もグラキアス家と同格の為婚約は至って問題ないそうだ。
あとは二人の相性だが、それこそ問題ない。
性格もエッチも俺好みで、これ以上の相手はいない。
馬車が停車しイグニス家へ到着したことを知る。
扉が開くとすでにイグニス家と使用人が整列し俺達を出迎えていた。
「グラキアス様、お待ちしておりました。」
「本日は時間を頂き感謝します。」
「エストレヤ」
二人の社交辞令の会話をぶった切ってエストレヤの元へ近づき、いつものように唇を重ねた。
顎を掴み逃げられないように深いキスに変わっていく。
予想もしていない俺達の行動にその場に居た者が硬直していた。
エストレヤもまさか両親の前でキスされるとは思っておらず、驚きの余り抵抗を忘れ流され甘い吐息を漏らしていた。
「……ぁっ…まず中へ…どうぞ」
「あぁ」
必死に冷静さを取り戻そうとイグニス家の当主が屋敷へと促し、ゲフリーレンも続き俺達も後を追った。
応接室に案内されている間もいつものようにエストレヤの腰を抱いていた。
学園と同じように俺やエストレヤの両親そして使用人の視線がチラチラと感じる。
案内され入る応接室のソファに家族で座った。
今は仕方なくエストレヤを膝に座らせることはなく解放した。
「訪問した理由も先触れの通り、エストレヤ様との婚約についてです。エストレヤ様はまだ婚約者がいらっしゃらないと聞いております。」
「えぇ、決めかねていたところです」
決めかねている…王子に近付けって言ってたんだろ?
狸めっ。
…親父も気付いてんな。
なんか怖ぇなこの二人。
これが貴族の腹の探りあいか…。
「我がグラキアス家としてはエストレヤ様との婚約を望んでいます」
「…とても素晴らしい話ではあるのですが…アティラン様は以前は殿下と婚約をされていましたよな?」
「えぇ、既に解消済みです。なんの問題もなく解決しております。」
「…聞いたところによると、記憶の方が曖昧だと…。」
俺を見て告げてくる。
確かに記憶を失った男との婚約は親としては不安だよな。
「記憶は有りません、戻る気配もありません。一生このままの可能性も有ります。不安だと思いますが俺はエストレヤと婚約したいと思っております。」
俺の気持ちを侯爵に伝えた。
視界に入るエストレヤが泣きそうな顔をし始め、抱きしめたくなるのを我慢しているからそんな顔すんな。
「万が一記憶が戻った場合はどうします?」
親として当然の質問だが…。
エストレヤは家門の為の道具なのか、本当に心配されてるのか…。
「王子に近付け」そんな指示を出すような父親だ、エストレヤを大事にしている理由は愛情からとは思えない。
「以前の俺は知りませんが、真面目なら一度婚約した相手を簡単に手放すとは思えません。」
「…確かに、以前のアティラン様でしたら婚約解消はしなかったでしょう。」
おっ嫌味か?
確かに婚約解消は俺からしたが、させたのは金髪野郎で記憶を失うきっかけもアイツだからな。
「王家とは穏便に解決済みであり、今後についても問題有りませんので。アティランについても後継者としてこれから鍛えます。」
鍛えられるんだ俺…。
「そうですか…エストレヤとしてはどうだ?」
突然話を振られたエストレヤは驚いていたが、両手を握り締めていた。
「ぼぼくも…グラキアス様と婚約したいです。」
「…では、こちらからも婚約をお願いします。」
侯爵は頭を下げた。
もっとなんか粘られるかと思ったが、意外に呆気ないな。
それから書類にサインをし、俺達の婚約は正式に決まった。
「それでは婚約も無事に決まりましたので、どうですか?我が家で食事でも。」
食事に誘われ了承し、和やかな雰囲気となった。
衣服を整え両親と共に馬車に乗り込んだ。
俺の屋敷からイグニス家は馬車で三十分程の距離らしい。
イグニス家は侯爵家であり、家柄や権力等もグラキアス家と同格の為婚約は至って問題ないそうだ。
あとは二人の相性だが、それこそ問題ない。
性格もエッチも俺好みで、これ以上の相手はいない。
馬車が停車しイグニス家へ到着したことを知る。
扉が開くとすでにイグニス家と使用人が整列し俺達を出迎えていた。
「グラキアス様、お待ちしておりました。」
「本日は時間を頂き感謝します。」
「エストレヤ」
二人の社交辞令の会話をぶった切ってエストレヤの元へ近づき、いつものように唇を重ねた。
顎を掴み逃げられないように深いキスに変わっていく。
予想もしていない俺達の行動にその場に居た者が硬直していた。
エストレヤもまさか両親の前でキスされるとは思っておらず、驚きの余り抵抗を忘れ流され甘い吐息を漏らしていた。
「……ぁっ…まず中へ…どうぞ」
「あぁ」
必死に冷静さを取り戻そうとイグニス家の当主が屋敷へと促し、ゲフリーレンも続き俺達も後を追った。
応接室に案内されている間もいつものようにエストレヤの腰を抱いていた。
学園と同じように俺やエストレヤの両親そして使用人の視線がチラチラと感じる。
案内され入る応接室のソファに家族で座った。
今は仕方なくエストレヤを膝に座らせることはなく解放した。
「訪問した理由も先触れの通り、エストレヤ様との婚約についてです。エストレヤ様はまだ婚約者がいらっしゃらないと聞いております。」
「えぇ、決めかねていたところです」
決めかねている…王子に近付けって言ってたんだろ?
狸めっ。
…親父も気付いてんな。
なんか怖ぇなこの二人。
これが貴族の腹の探りあいか…。
「我がグラキアス家としてはエストレヤ様との婚約を望んでいます」
「…とても素晴らしい話ではあるのですが…アティラン様は以前は殿下と婚約をされていましたよな?」
「えぇ、既に解消済みです。なんの問題もなく解決しております。」
「…聞いたところによると、記憶の方が曖昧だと…。」
俺を見て告げてくる。
確かに記憶を失った男との婚約は親としては不安だよな。
「記憶は有りません、戻る気配もありません。一生このままの可能性も有ります。不安だと思いますが俺はエストレヤと婚約したいと思っております。」
俺の気持ちを侯爵に伝えた。
視界に入るエストレヤが泣きそうな顔をし始め、抱きしめたくなるのを我慢しているからそんな顔すんな。
「万が一記憶が戻った場合はどうします?」
親として当然の質問だが…。
エストレヤは家門の為の道具なのか、本当に心配されてるのか…。
「王子に近付け」そんな指示を出すような父親だ、エストレヤを大事にしている理由は愛情からとは思えない。
「以前の俺は知りませんが、真面目なら一度婚約した相手を簡単に手放すとは思えません。」
「…確かに、以前のアティラン様でしたら婚約解消はしなかったでしょう。」
おっ嫌味か?
確かに婚約解消は俺からしたが、させたのは金髪野郎で記憶を失うきっかけもアイツだからな。
「王家とは穏便に解決済みであり、今後についても問題有りませんので。アティランについても後継者としてこれから鍛えます。」
鍛えられるんだ俺…。
「そうですか…エストレヤとしてはどうだ?」
突然話を振られたエストレヤは驚いていたが、両手を握り締めていた。
「ぼぼくも…グラキアス様と婚約したいです。」
「…では、こちらからも婚約をお願いします。」
侯爵は頭を下げた。
もっとなんか粘られるかと思ったが、意外に呆気ないな。
それから書類にサインをし、俺達の婚約は正式に決まった。
「それでは婚約も無事に決まりましたので、どうですか?我が家で食事でも。」
食事に誘われ了承し、和やかな雰囲気となった。
67
お気に入りに追加
1,894
あなたにおすすめの小説

転生したら同性の婚約者に毛嫌いされていた俺の話
鳴海
BL
前世を思い出した俺には、驚くことに同性の婚約者がいた。
この世界では同性同士での恋愛や結婚は普通に認められていて、なんと出産だってできるという。
俺は婚約者に毛嫌いされているけれど、それは前世を思い出す前の俺の性格が最悪だったからだ。
我儘で傲慢な俺は、学園でも嫌われ者。
そんな主人公が前世を思い出したことで自分の行動を反省し、行動を改め、友達を作り、婚約者とも仲直りして愛されて幸せになるまでの話。

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います
緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。
知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。
花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。
十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。
寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。
見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。
宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。
やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。
次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。
アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。
ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません
くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、
ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。
だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。
今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。

婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw
ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。
軽く説明
★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。
★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。

悪役令嬢の兄、閨の講義をする。
猫宮乾
BL
ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。

僕は人畜無害の男爵子息なので、放っておいてもらっていいですか
カシナシ
BL
僕はロローツィア・マカロン。日本人である前世の記憶を持っているけれど、全然知らない世界に転生したみたい。だってこのピンク色の髪とか、小柄な体格で、オメガとかいう謎の性別……ということから、多分、主人公ではなさそうだ。
それでも愛する家族のため、『聖者』としてお仕事を、貴族として人脈作りを頑張るんだ。婚約者も仲の良い幼馴染で、……て、君、何してるの……?
女性向けHOTランキング最高位5位、いただきました。たくさんの閲覧、ありがとうございます。
※総愛され風味(攻めは一人)
※ざまぁ?はぬるめ(当社比)
※ぽわぽわ系受け
※番外編もあります
※オメガバースの設定をお借りしています

生まれ変わったら知ってるモブだった
マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。
貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。
毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。
この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。
その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。
その瞬間に思い出したんだ。
僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。

【完結】家も家族もなくし婚約者にも捨てられた僕だけど、隣国の宰相を助けたら囲われて大切にされています。
cyan
BL
留学中に実家が潰れて家族を失くし、婚約者にも捨てられ、どこにも行く宛てがなく彷徨っていた僕を助けてくれたのは隣国の宰相だった。
家が潰れた僕は平民。彼は宰相様、それなのに僕は恐れ多くも彼に恋をした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる