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連休初日

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今日もエストレヤは俺の部屋のベッドで眠っていた。
普段ならまだイチャイチャしていたい時間だが、ベッドから出て身支度を整えた。
俺は婚約の為グラキアス家に帰ることになり、エストレヤも同じでイグニス家に一度戻る事になった。

「エストレヤ…愛してる。」

「んっ…ぼぼ僕も。」

恥ずかしそうに、けれど思いを伝えようとしてくれるエストレヤが好きだ。
深く口づけを交わし、お互い別々の馬車に乗り込んだ。
数時間の馬車で屋敷につき、使用人のニルに出迎えられた。
相変わらず隙がなく無口な男だった。
公爵家の使用人は見た目も採用基準に入るのか?という程整っている人間が多い。
そんなことを考えながら、案内されるまま談話室に行き父親が来るまでソファで寛いでいた。

ガチャ

現れたのは両親と呼ぶべき人だった。

「アティラン、お帰り…調子はどうだ?」

父親であるゲフリーレンの方から話しかけられた。

「問題ないっす。」

「…記憶は戻ってないようだな。」

俺の返事から記憶がまだ戻っていないことを悟ったらしい。

「はい。」

「確手紙を受け取ったが、エストレヤ イグニスとの婚約を望んでいるんだよな?」

「はい。」

「相手側にはすでに話は通してある。」

「はい。」

「明日伺う事になっている、構わないな?」

「はい。」

「何か思い出したことはあるか?」

「全く。」

「私たちの事は?」

「…いいえ。」

「そうか…学園から報告があったんだが、属性以外の魔法も使えるようになったとか…。」

「あーはい…言ってなかったんですが、目覚めて魔法の練習したら火属性も使えた…っすね。」

「そうか…他は?」

「特には…」

「アティランは忘れているかも知れないが、属性が増えるのは貴重であり価値がある…今までアティランは公爵家という身分以外に優秀な頭脳を見込まれ王家に惚れ込まれていた。記憶を失ったので婚約も滞りなく解消されたが校外学習で多くの生徒が目撃する中、魔法の能力が開花させたと…王族にも報告されているはず。再びアティランへの注目が高まり婚約とは言わないが、王子の側近候補が持ち上がってしまった。」

「…お断り致します。」

即答で答えた。
当然だろ?あの金髪野郎の側近?
元婚約者で浮気野郎の側にいるなんて、なんの罰だよ?
浮気したのは向こうだろ?
だから奴は金髪浮気野郎なんじゃねぇかよ。

「…あぁ、断った。その事を知っておくべきだと思い、伝えたまでだ。もしかすると学園でも王子の側近から誘いが来るかもしれない。」

「…面倒だな…ん?既に側近居んじゃねぇかよ。」

「優秀な人間であれば何人でも設けられる。」

「…あっそ。」

「話を戻すが、王族も簡単に諦めてくれればいいが、弱みは見せるなよ。」

「…あぁ。」

「…本当に彼と婚約するんだな…彼をちゃんと守るんだぞ。」

「あぁ、分かってる。」

「アティ…エストレヤ様の事どう思っているんだ?」

今まで静かに見守っていた母親のセリオンが口を開いた。

「俺はエストレヤを愛してる、エストレヤ以外と婚約も結婚もする気はない。」

「そうか…わかった。」

ん?意外だ…すんなり引き下がった…。
俺の言葉に満足したのか今は静かに微笑んでいる。

「…二人は…政略?それとも恋愛結婚?」

深く考えず疑問が口からでていた。

「「………」」

やべっなんか聞いちゃ不味かったのか?

「いえ、なんでもないっす。」

「あっ平気だ。私たちは恋愛結婚だ。」

ゲフリーレンは少し照れたように告げた。

「へぇ意外。」

素直な感想が漏れた。

「僕たちは学園では対立関係だったの。」

おっ、こういう話は母親役の方が話しやすいよな。

「僕は魔法が優れ、ゲフリーレンは剣術の方で優秀だったんだ。当時は、魔法対剣術で派閥争いがあったんだ。僕達は大して気にしてなかったんだけど、周囲がね盛り上がっちゃって…気が付いたら意識するようになっちゃったのかな?」

あぁ、ロミオとジュリエットね。
障害があればあるほど盛り上がるってやつか。

「二人は隠れながら密会を続けた?そんで、周囲にバレて告白し全てが丸く収まった?」

「………。」

「そんな感じ…かな…ふふ」

なんだよ、気になんじゃねぇかよ。

「ふぅん、まぁ二人が恋愛結婚なら俺の事も反対はないんだ?」

「無いよ。」

「あぁ。」

「…寧ろ何で金髪と婚約してたの?」

「「………」」

あぁ、もしかしてこれこそ聞いちゃ不味かった?

「王族からの打診があった時に、アティに確認したんだ…アティは王族が望むのであれば構いませんと…。」

おー、クールな返事。

「…それって俺がいくつの時に?」

「アティが十歳の時だ。」

「じゅっ………。」

十歳でそんな決断したのかよ?
婚約の意味がわかってなかったのか?
それとも、王子の事が好きだった?
…あの金髪野郎を好きになるってないか…いやっ子供の頃は純粋で今よりも仲がよかったとか?

「当時の俺は金髪の事どう思ってたんすかね?」

「王族と思っている、と答えたよ。」

答えたよって、同じ質問したのか?
「王族と思ってる」って…王族としか思ってないってことだよな?
中身は?

「………二人の仲って?」

「……お互い一定の距離で尊重していたよ。」

一定の距離で尊重していたって…それってずっと他人行儀だったって事なのでは?

「……なら、婚約解消は俺達にとっては問題なかったってことか。」

「「………」」

なんでそこで黙るんだよ…。
まさか、本音は好きだったのか?

「あいつもピンク頭に乗り換えたわけだしな。」

「「………」」

二人を試すように話したがなんも…なんか言ってくれよ。

「ん?親から見て、以前の俺って金髪に惚れてたの?」

聞いといた方が…いいよな。

「…ん~感情を隠すのがうまかったから…。」

それでも子供だろ?
親なら分かるんじゃねぇの?

「興味なかったんじゃねぇ?金髪からの贈り物とかは?」

「…アティはしてたかな。インクとか乗馬用の鞍とか…。」

若干気まずそうに話し出す。

「ふぅん、「アティは」って事は金髪からは無かったって事?」

「……そうだな…。」

質問したこっちが申し訳なくなってくる程の表情しないでくれ。

「俺はエストレヤにそんなことはしないんで。」

「自ら婚約を望んだのなら相手に誠意を忘れるな。」

「はい」

当然の事だな。

「…それとアティ…」

「はい」

「…王子を金髪と呼ぶのは止めなさい。」

「…あいつ?」

「…王子と…」

「……」

「まさかとは思うが王子本人に…」

「言った、金髪野郎って。」

「…っ……。」

「金髪はなんも言ってこねぇし、金髪を王子だなんて言いたくねぇわ。金髪は金髪だ。」

「「………。」」

二人はそれ以上なにも言って来なかった。
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