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二人きり

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私は会場を後にし、王宮の一室に王子と向かい合ってソファに座っている。
ここへくる途中、何人かの学生ではない貴族と遭遇したが皆私が聖女であるのを知っていた。
彼らは、王宮に勤めている人だろう。

「あなたに会えて光栄です」
「我が国は聖女を…貴方を歓迎します」
「今日という日を忘れないでしょう」

と、皆が私を待ち望んでくれていたのを知る。
「聖女」というものは、どの世界でも重宝されるものなんだ。
多くの人に求められても、酷い言葉の方が記憶に残ってしまう。
クレアベールから何度も「いらない」と言われてきたので、この国では聖女は必要ないのでは?と思うこともあったので、国の重責を担う立場の方達に受け入れられると、やはり私は必要な人間なんだと思えた。

王子が室内にいた使用人に合図を送れば、紅茶が運ばれてくる。

「…あの、クリストフ王子」

先に口を開いたのは私だった。

「…何だ?」

「きょっ今日から…よろしくお願いします」

言っていて、ちょっと恥ずかしかった。

「…あぁ」

クリストフ王子の様子が心ここにあらずのようだ。もしかしたら、クレアベールの事を考えているのかもしれない…

「クリストフ王子?」

「ん?」

「ジョバルディー公爵令嬢のことですが…」

「彼女は大丈夫だ」

大丈夫とはどういう意味?

「…婚約を続けるのですか?」

「ん?それはどういう意味だ?」

クリストフ王子の鋭い視線に威圧される。

「ぁっいぇ…その…ジョバルディー様が隣国へ行くと仰っていたので…そういう意味なのかと…」

何で王子は不機嫌になるの?
え?そういう事じゃないの?

「あぁ、クレアと婚約解消することはない」

婚約解消することはない…?

確かに、王族の婚約は王命だと聞く。どの話でも簡単に解消出来るものではないし、王命を独断で解消した場合の代償も大きい。

では、これから二人は…どうするの?
私はいったいどういう立場になるの?

私が考えていた方向では無いことに困惑し、落ち着く為に目の前の紅茶に手を伸ばし喉を潤す。
身体が水を欲していたのか、身体全体に紅茶が染み渡る感覚がした、

「クレアも我が国にとっての聖女については理解している。時間は掛かるが、いずれは理解するだろう。我が国の魔力保持者は減少し魔力量も微々たるものになりだした。現状を打破するには、聖女の能力は必要となる。今は考える時間だと思っている、すぐに隣国まで迎えに行くつもりだ」

え?迎えに行くの?わざわざ?二人はって結局どんな関係なの?私は何?

「あの…クリストフ王子、私はどんな立場ですか?」

「立場?君は聖女だ」  

愚問だな、みたいな顔をされてますが誰もがこの状況を疑問に思うだろう。

「…聖女ですが…王子にとって…私は…」

「聖女だ」

そうではなく、一人の女性として見てもらえているのか…
私はいずれ王子と結婚できるのかを知りたい。

「私は王子と結婚するんですよね?」

聖女が現れれば大体の話では、聖女は爵位の高い者や王族と結婚する。
なので私も…

「そんな事を考えていたのか?」

そんな事…

「聖女は誰とも結婚できない」

「えっ?」

結婚できない?
それは…その…純潔を守れってこと?

「聖女は…」

…聖女は…あれ?クリストフ王子が歪む…目を…開けていられない。凄く…眠くなってきた。

「聖女?眠ったのか?…はぁ…私は君にクリストフと呼ぶことを許可した覚えがないよ?」

完全に落ちる前に王子の声が聞こえる。
確かに私は王子からクリストフと呼ぶ許可を得ていない…ゲームでの癖が出てしまったようだ…王子、気にしてたんだ…

「おい、すぐに準備を」

「はい」

王子は使用人に命じ、数人の足音が聞こえる。瞼を開けることは出来ないが聴覚は確りしている。
身体が宙に浮き、誰かに抱えられた。
王子なのか確認したいが、もう…ねむ…ぃ。

「早くそれを連れていけ」

王子の声が遠くに聞こえた。
「それ」とは、私の事なの?
王子の言葉は冷たく、私を不快なもののように表現していた。
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