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本当の姿?
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ここがゲームの世界で、登場人物の性格は作られたものかもしれないと思うも、私は生きているし考えることもできる。
酷いことを言われれば傷付くし怒りも覚える。
あの公爵令嬢は本物の悪役令嬢で、私の敵となった。
あんな人が婚約者だなんてクリストフ王子が可哀想だし、ヒロインでなくても別の女性に肩入れしてしまうのは致し方ない気もする。
ハッピーエンドの選択肢を知っている私が本気で恋愛ゲームをすれば、必ず王子を手に入れる事ができる…そんな考えが頭をよぎる。
「捨てておきなさい」…王子の物でさえ簡単に捨てる事が出来てしまう人…
そんな人が王子の事を本気で慕っているとは思えない。あんな人が王子の婚約者なんて…
私は王子に「学園で返す」って約束した…そのまま捨てておくなんて事は出来ない…
「あの…大丈夫ですか?」
か細く震える声に近くに人がいたことを知る。
黄色いドレスの令嬢…ゲーム中のお助けキャラ、シェリルだ。
「…ぁっはい大丈夫です」
彼女は私の目の前で屈み、落ちていた王子の匂袋を手に取り、パンパンと叩いて土を落としてくれた。
「はい」
シェリルの優しい笑顔はゲームと一緒だった。
彼女は私の右手を取り、左手で私に匂袋を差し出した。
「ありがとう…ございます」
「クレアベール様のこと誤解しないでくださいね?」
「へっ?」
誤解?あんなこと言われたのに誤解も何もないと思う。
目の前の彼女は悪くないのに、少し睨んでしまった。
「えっと、最近男爵家の養子になった…」
「あっはい、ワンダーソン男爵の養子になりましたエレナ・ワンダーソンです」
「私の名前は、シェリルビーナ・フィリップスです。…クレアベール様のことですが、以前も似たようなことがあったんです」
「…似たような…ことですか?」
私のように王子に近付く下位令嬢に嫌がらせをした、ということなんだろうか?
「はい、学園入学前のことなのでワンダーソン令嬢は存じてないかと思いますが、ある子爵令嬢が伯爵令息からの贈り物を個人的に受け取ったことがあったんです。子爵令嬢は誕生日も近く、当日はなんらかの事情があり事前に渡しに来たという感覚だったのですが、令息には婚約者がおりました。相手は侯爵家の令嬢で自身の婚約者が格下の令嬢に個人的に贈り物をしたことを知り彼女はお茶会や年齢の近い令嬢達に手紙を送り、「子爵令嬢は婚約者のいる男性に娼婦のように近づく浅ましい女性なので気をつけてください」と触れ回っていたのです。私は子爵家なので侯爵令嬢の助言を止めることも出来ず静観してしまい、その後気付いたクレアベール様が諌めてくださったのですが…既に多くの家門が知ることになっていました」
何それ酷い、ただ贈り物を貰っただけなのに…
「…そんなことがあったんですね」
知らなかった。
ゲームではなく実際に生きてないとわからないことだ。
だけど、それと今回は関係あるの?
「それから私達令嬢は婚約者のいる男性からの贈り物や、婚約者がいるかわからない男性からの個人的な贈り物は誤解されぬよう受け取らないようにすることとなったんです。今回のことでワンダーソン令嬢があの時の子爵令嬢と同じにならないよう、他貴族に知られる前に、クリストフ王子の婚約者であるクレアベール様が今回の件はこれで「終わり」とさせたんだと思います」
「そう…だったんですね、考えが及びませんてした。その…話の子爵令嬢は…その後は…」
「私達と同じ学園に入学予定でしたが、直前に隣国へ留学してしまいました」
シェリルは少し顔を歪めて教えてくれた。
きっとその令嬢は留学というより、この国に居づらくて…なんだろう。
「…私が彼女と同じようにならないよう…クレ…ジョバルディー公爵令嬢が終わらせたということなんですよね?」
「私は…そう思いました」
…私、先入観だけであの人は悪役令嬢だから酷い人だと決めつけていた。
けど、実際は私が無知で今後起こりうるであろう貴族同士の諍いからあの人は事前に守ってくれたってことになる…んだよね?
言葉はきついが悪役令嬢は悪い人じゃないのかもと考えてしまうのは、私が単純だから?
私は手の中にある匂袋を見つめていた。
酷いことを言われれば傷付くし怒りも覚える。
あの公爵令嬢は本物の悪役令嬢で、私の敵となった。
あんな人が婚約者だなんてクリストフ王子が可哀想だし、ヒロインでなくても別の女性に肩入れしてしまうのは致し方ない気もする。
ハッピーエンドの選択肢を知っている私が本気で恋愛ゲームをすれば、必ず王子を手に入れる事ができる…そんな考えが頭をよぎる。
「捨てておきなさい」…王子の物でさえ簡単に捨てる事が出来てしまう人…
そんな人が王子の事を本気で慕っているとは思えない。あんな人が王子の婚約者なんて…
私は王子に「学園で返す」って約束した…そのまま捨てておくなんて事は出来ない…
「あの…大丈夫ですか?」
か細く震える声に近くに人がいたことを知る。
黄色いドレスの令嬢…ゲーム中のお助けキャラ、シェリルだ。
「…ぁっはい大丈夫です」
彼女は私の目の前で屈み、落ちていた王子の匂袋を手に取り、パンパンと叩いて土を落としてくれた。
「はい」
シェリルの優しい笑顔はゲームと一緒だった。
彼女は私の右手を取り、左手で私に匂袋を差し出した。
「ありがとう…ございます」
「クレアベール様のこと誤解しないでくださいね?」
「へっ?」
誤解?あんなこと言われたのに誤解も何もないと思う。
目の前の彼女は悪くないのに、少し睨んでしまった。
「えっと、最近男爵家の養子になった…」
「あっはい、ワンダーソン男爵の養子になりましたエレナ・ワンダーソンです」
「私の名前は、シェリルビーナ・フィリップスです。…クレアベール様のことですが、以前も似たようなことがあったんです」
「…似たような…ことですか?」
私のように王子に近付く下位令嬢に嫌がらせをした、ということなんだろうか?
「はい、学園入学前のことなのでワンダーソン令嬢は存じてないかと思いますが、ある子爵令嬢が伯爵令息からの贈り物を個人的に受け取ったことがあったんです。子爵令嬢は誕生日も近く、当日はなんらかの事情があり事前に渡しに来たという感覚だったのですが、令息には婚約者がおりました。相手は侯爵家の令嬢で自身の婚約者が格下の令嬢に個人的に贈り物をしたことを知り彼女はお茶会や年齢の近い令嬢達に手紙を送り、「子爵令嬢は婚約者のいる男性に娼婦のように近づく浅ましい女性なので気をつけてください」と触れ回っていたのです。私は子爵家なので侯爵令嬢の助言を止めることも出来ず静観してしまい、その後気付いたクレアベール様が諌めてくださったのですが…既に多くの家門が知ることになっていました」
何それ酷い、ただ贈り物を貰っただけなのに…
「…そんなことがあったんですね」
知らなかった。
ゲームではなく実際に生きてないとわからないことだ。
だけど、それと今回は関係あるの?
「それから私達令嬢は婚約者のいる男性からの贈り物や、婚約者がいるかわからない男性からの個人的な贈り物は誤解されぬよう受け取らないようにすることとなったんです。今回のことでワンダーソン令嬢があの時の子爵令嬢と同じにならないよう、他貴族に知られる前に、クリストフ王子の婚約者であるクレアベール様が今回の件はこれで「終わり」とさせたんだと思います」
「そう…だったんですね、考えが及びませんてした。その…話の子爵令嬢は…その後は…」
「私達と同じ学園に入学予定でしたが、直前に隣国へ留学してしまいました」
シェリルは少し顔を歪めて教えてくれた。
きっとその令嬢は留学というより、この国に居づらくて…なんだろう。
「…私が彼女と同じようにならないよう…クレ…ジョバルディー公爵令嬢が終わらせたということなんですよね?」
「私は…そう思いました」
…私、先入観だけであの人は悪役令嬢だから酷い人だと決めつけていた。
けど、実際は私が無知で今後起こりうるであろう貴族同士の諍いからあの人は事前に守ってくれたってことになる…んだよね?
言葉はきついが悪役令嬢は悪い人じゃないのかもと考えてしまうのは、私が単純だから?
私は手の中にある匂袋を見つめていた。
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