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あれから

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始業式の検査以来、私は一人になる時間が極端に減り、一人で歩いていても誰かしらに声をかけられるようになった。

私への対応は男女でわかりやすく違う。

女性の場合、平民の生徒からは羨望の眼差しを向けられ、貴族は爵位によって違う。同じ男爵位からは自称友達が増え、子爵伯爵位からは冷たい視線に嫌味。侯爵、公爵位は遠くから値踏みされている。

男性は、婚約者いて相手の爵位が上であれば愛人を仄めかされ、婚約者の爵位が低い者や婚約者がいない者はストレートに口説いてくる。

うんざりするような日々に終われながら毎日を過ごしているので、今のところ攻略対象との接点はない。彼らがいそうな所は把握しているので、その場に極力近づかないようにはしている。

少々神経質になりすぎているのかもしれない。

ヒロインに転生したからと好き放題行動し、流行りのざまぁを受け無一文で他国などに放り出されたくないという思いが私を過剰にさせていた。
私は置かれた状況を勘違いすることなく、大人しく学園を卒業し慎ましやかに過ごすと決めていた。

それに、どこかゲームのタイトルが引っ掛かっていた。

「本日の授業は…」

授業を進めるのは攻略対象の一人、教師のジャック・グリード。
魔法に関する授業を担当し、今日は実践の前に魔法について基礎を学ぶ。

「魔力量は両親の器を受け継ぐと言われ、そこから本人の訓練次第で増減されます。実力以上に魔力を使えば身体に負担が掛かりすぎて倒れてしまう生徒も毎年現れています。なので、まず始めの授業では自身の魔力量を知ること。それから基本応用と入り、卒業する頃には今よりも増大しているでしょう」

「はい先生、質問をいいですか?」

一人の生徒が手を上げた。

「はい、なんでしょう」

「魔力はどのくらい増えるものですか?」

「それは個人差が有りますね。あまり変わらない生徒もいれば、過去には三倍も変わった生徒もいました」

三倍と聞き「おぉ~」と通販番組のように生徒の声が揃った。

「はい」

それから次々と質問が上がった。

「魔力が増えるコツなどはあるんですか?」

「私の教えと、本人の努力次第ですね」

授業を真面目に受けること、と遠回しに言われた。

「はいっ」

「どうぞ」

「人類が進化し魔法発祥の地とされる地域には特別な力を持った聖女がいたと聞きました。聖女には誰でもなれるものですか?」

ゲームによくある設定…聖女、とても稀有な存在でヒロインがなりがちのもの。聖女だとわかれば国に保護され、身分関係なく王族や高位貴族との結婚が許される。聖女を輩出した家門は陞爵し、平民であれば叙爵もある。

女性であれば聖女に憧れ、男性は妻に望むことが多い。

「他国では訓練や修行を積み儀式を行い聖女になれることもありますが、我が国では加護や治癒能力、それ以外に特別な力を持った者のみとされ修行などで認められた者は聖女補佐として働くことができます」

「その土地に住んでいた民族には特別な力が受け継がれると聞いたことがありますが、それは本当ですか?」

「過去の伝説としては、サクリフィスの山奥に住む民族は巨大な魔力を保有している者が多かったとも言われています。彼らは信仰心が深く、他の民族と交わらず独自の生活を送ってきた純潔種と呼ばれる彼らの魔力は豊富で、それは神に愛されし力、「聖女」と言われることもありました。ですが何十年も前に山火事に見舞われ、彼らは滅びたとされています。生存者も今のところ確認されていないと伝えられていますね」

「先生、「神に愛されし力」であれば、伝説ではなく神話というんじゃないですか?」

「ん~、人それぞれだとは思いますが、神話ほど不確かで昔の事ではなく、語り継がれるうち飛躍してしまったが「聖女」の元になった人物はいたと私は思っています。そこには、いてほしいという願望も含め伝説と言いましたが、そこは各々がどう受け入れるかですね。私の授業は様々な知識を伝える事はしますが、その後どう受け入れるかは本人次第です」

ゲームで攻略に関係していなさそうな話のときは飛ばしてしまっていたので、こんな話があったかは覚えていないが、こういうのをフラグって言うのよね?
この後、大抵ヒロインに何かが起きて聖女としての力が覚醒する…
ヒロインが聖女として覚醒するイベントは覚えている。
王都から少し離れている町に獣が大量に現れ、作物を荒し人にも危害を加え始めたために貴族達の狩猟大会が開催され、エレナも貴族の一人として参加する。
狩りを行うのは男性だが、大会中に仕留めた獲物を婚約者や気になる令嬢に贈りアピールするイベントだ。
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