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オマケの続き

パーティーの救世主は…

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「ヴァレリア嬢、疲れてしまいましたか?」

 振り向くとオルフレッドが近くにいた。

「まぁ、オルフレッド様ぁ。わざわざ私の為にパーティーに参加していただきありがとうございます」

 私が応えるよりも先に、チャースティン侯爵夫人が立ち上がり彼にすり寄る。

「…これは、チャースティン侯爵夫人。本日はご子息の八歳の誕生日おめでとうございます」

「まぁ、息子の事まで気にしてくださり嬉しいわぁ。でも、チャースティン侯爵夫人だなんて。以前のようにとお呼びくださいオルフレッド様ぁ」

「チャースティン侯爵夫人?誰かと勘違いしているようですが、私が夫人をファーストネームで呼んだことはございません。私達は既に離縁した他人です。そのような呼び方は周囲に誤解を招きます。ですので私の事も今後はランクーベとお呼びください」

 オルフレッドがハッキリと拒絶を見せる姿に驚いた。先程から驚くことが多すぎる。

「…ルルーシアン公爵令嬢、あまりオル…公爵様を困らせるものではありませんよ?」

「へ?」

 チャースティン侯爵夫人は私に振り向き睨んだかと思えば、先程の令嬢のように忠告をする。

「夫の交遊関係に女性が口出しするのは社交に弊害をもたらしますのよ。お若いからその辺の事まだ分からないので、私が教えて差し上げないとならないようね?」

 チャースティン侯爵夫人は、オルフレッドの言動は私がワガママを発揮し言わせたことで、彼の本心ではないと思っているようだ。

「私がヴァレリア嬢に困らされたことはありませんよ。ヴァレリアといると満たされますし、何より妻の助言により領地の問題も解決出来ました」

「それは素晴らしい。私もランクーベ公爵夫人に挨拶したかったのですよ」

 オルフレッド以外の男性の声に振り向き確認すると、先程挨拶したチャースティン侯爵がいた。つまり、オルフレッドの元嫁の今の夫。

「これは、チャースティン侯爵様。本日は招待していただき…」

「いや畏まった挨拶はいいよ。先程しましたからね、公爵夫人と話してみたかったですよ」

「私…ですか?」

高位貴族男性に興味を持たれる要素が私にあっただろうか?侯爵は既に結婚もされているし、私もしている。こらは…社交辞令…なんですよね?

「はい。夫人には王妃選定の頃から注目しておりまして、良ければ息子とと思っていたんですが公爵に先を越されてしまったようで残念です」

「…そう言っていただけで嬉しいです」

 これって世に言う、お世辞…ですよね?
 だけどチャースティン侯爵の笑顔は真意が読み取れない。まさか本気じゃないよね?…ん?まさか、王妃選定後に婚約者候補として手紙が来たって…違う違う…よね?

「ヴァレリア夫人はランクーベ公爵と夫婦になれて、幸せそうですね」

「はい幸せです」

 私は侯爵の言葉が嬉しくて正直に応えた。

「チャースティン侯爵夫人も侯爵と結婚してからの方が幸せそうで、何よりです」

 オルフレッドは大人のマナーとして、相手の言葉に返しただけなのかもしれないが、それはチャースティン侯爵夫人を追い詰めた。

「ぁ…はぃ…し…幸せ…です」

 今でも気持ちがある人にそんなことを言われては…否定したいと思っても夫が傍にいるので不可能。絞り出した声も震え、表情もひきつらせている。

 それからも会話は続き、私が公爵邸の「呪い」は全ては改修を怠っていたことが原因と突き止め全面的に修繕したことで解決した話や、領地の長雨の被害が原因でカビが蔓延してしまい領民に被害が出ていたことも見抜いた話で盛り上がっていた。公爵が私を紹介する為に私の事を侯爵に語り、侯爵はそれを楽しそうに聞き、大袈裟に聞こえてしまう公爵の話に私が謙遜する。その間チャースティン侯爵夫人だけが一言も言葉を発することはなかった。

 オルフレッドは分からないが、チャースティン侯爵は夫人の態度に気付いているはず…もしかしたら、オルフレッドに「結婚して幸せそうだ」と言わせるためにわざと先に私を見て「幸せそうだ」と言ったのか?
 チャースティン侯爵だって、夫人の元夫がオルフレッドなのは知っているはずだから…そう考えると、笑顔で武装するのは女だけじゃないんだと知り、貴族社会は男女関係なく恐ろしい事を知る。

 そして、主催者である侯爵が「他の招待客にも挨拶を」ということで夫人を連れていく。私達は主催者に挨拶も終え、主役に贈り物もし最低限の社交を済ませたのでパーティーを退出することにした。
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