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オマケの続き
一年前
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夫婦となる書類を提出してからもうすぐ一年になろうとしている。
色んな事がありすぎてとても短く感じたが、王妃選定も同じ一年なのにこれ程充足感が違うとは。
私が彼らの不興を買ってしまい、一方的に決められた結婚相手は社交界で有名な「呪われた公爵」。どうなるかと多少の戸惑いはあったが、今はかなり本気で好きになっている。
彼は優しくて紳士的、少し不器用だがとても誠実で見た目は恐ろしく妖艶。女性的な意味ではなく男性として格好いい。そんな人、惚れないわけがない。どんな表情でも絵になり、いつまでも見ていられる。
この時期は長雨が続き気分が滅入っているのか、常に優雅で包容力のあるオルフレッドにも翳りが見え哀愁が漂い色っぽさが増していた。
彼の領地は東部にあり、この時期は長雨に悩まされているんだとか…
領地経営の仕事について全く想像できない私が無理に話を聞いても余計に疲れさせてしまうだけで、屋敷にいる時ぐらい休んでほしいと思っている。
なのでオルフレッドに直接聞くのは控え、彼の仕事を把握しているイーサンに尋ねた。
「今、領地は何で困っているんですか?」
「…長雨は毎年の事ですが去年は特に酷く、領民に深刻な被害が起きました」
この時期の東部に出向いたことが一度もないと話すと、「王都の長雨よりも期間も降水量も桁違い」と、教えてくれた。私がランクーベ公爵に嫁いだ時もオルフレッドは災害の対応に追われ、報告書を受け取るだけでなく危険な現地で指揮を執っていた。何か起こる度に彼は自身の呪いが原因なのではないか?と考えていたので、長雨による川の増水等の対策はどこの領地よりも念入りに準備されている。それでも何かしらの被害が起き、前年は謎の疫病が広まった。
そんな事がなければ東部の雨水を南部の干ばつ対策にと思ったのだが、体調不良を訴える者が多く亡くなった者もいる。なので、オルフレッドは「自身の呪いが水を通して南部の領民を苦しめるわけにはいけない」ということで、援助はしない選択をした。
オルフレッド自身も次にどんな「呪い」が出現するのか恐ろしく、少しでも対応出来るよう医療関係に積極的に支援を行っていたが、今回の「疫病」については原因究明が果たされることはなく、東部の領民の間では「疫病はランクーベ公爵の呪い」と噂され、オルフレッド自身も噂を受け入れてしまった。
今現在疫病は身を潜めたが、解決したわけではない。
なので、この時期のオルフレッドは長雨の影響による被害を最小限にするべく模索中だが、今年は去年の恐ろしい疫病が脳裏にこびりつき神経質になっているんだとか…
「疫病…領地でそんな事が起きていたんてすね…」
私は何も知らず嫁いだ当初、私に対する彼の対応に少なからず不満を覚え、「ランクーベ公爵によく思われていない」「王妃選定に落ちた令嬢を王族に押し付けられた結婚だから煙たがられているだ」と思い込んでいた。
領民に原因不明の疫病を自身のせいだと囁かれ、解決するために奮闘しつつも突然の結婚相手の私に手紙を残してくれていた…
苦しみ悩んでいる姿を見せないことを美徳と考えているのかもしれないが、少しでも話してほしかった…嫁いだばかりの…王子妃選定に落選したワガママ令嬢にこのような重たい話をする必要はないと判断したのは分かってはいるんだけど…私はいつも自分の事しか考えられていないんだと思うと、自分が嫌になる…
呪われた領地とは思いたくないが、疫病…彼が私の事を「生命力に溢れた令嬢」「生きていてほしい」と言ったのは、体を弱くした元婚約者の事があってからと思ったいたが、領地でそんな疫病が蔓延していたとは知らなかった。
今までの屋敷の呪いとは違い、彼はずっと私が死ぬのではないかと不安だったのだろう…だからあんなに呪いに怯えていたのか…私の考えはいつもその場しのぎで浅い…
色んな事がありすぎてとても短く感じたが、王妃選定も同じ一年なのにこれ程充足感が違うとは。
私が彼らの不興を買ってしまい、一方的に決められた結婚相手は社交界で有名な「呪われた公爵」。どうなるかと多少の戸惑いはあったが、今はかなり本気で好きになっている。
彼は優しくて紳士的、少し不器用だがとても誠実で見た目は恐ろしく妖艶。女性的な意味ではなく男性として格好いい。そんな人、惚れないわけがない。どんな表情でも絵になり、いつまでも見ていられる。
この時期は長雨が続き気分が滅入っているのか、常に優雅で包容力のあるオルフレッドにも翳りが見え哀愁が漂い色っぽさが増していた。
彼の領地は東部にあり、この時期は長雨に悩まされているんだとか…
領地経営の仕事について全く想像できない私が無理に話を聞いても余計に疲れさせてしまうだけで、屋敷にいる時ぐらい休んでほしいと思っている。
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オルフレッド自身も次にどんな「呪い」が出現するのか恐ろしく、少しでも対応出来るよう医療関係に積極的に支援を行っていたが、今回の「疫病」については原因究明が果たされることはなく、東部の領民の間では「疫病はランクーベ公爵の呪い」と噂され、オルフレッド自身も噂を受け入れてしまった。
今現在疫病は身を潜めたが、解決したわけではない。
なので、この時期のオルフレッドは長雨の影響による被害を最小限にするべく模索中だが、今年は去年の恐ろしい疫病が脳裏にこびりつき神経質になっているんだとか…
「疫病…領地でそんな事が起きていたんてすね…」
私は何も知らず嫁いだ当初、私に対する彼の対応に少なからず不満を覚え、「ランクーベ公爵によく思われていない」「王妃選定に落ちた令嬢を王族に押し付けられた結婚だから煙たがられているだ」と思い込んでいた。
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今までの屋敷の呪いとは違い、彼はずっと私が死ぬのではないかと不安だったのだろう…だからあんなに呪いに怯えていたのか…私の考えはいつもその場しのぎで浅い…
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