上 下
31 / 91
オマケの続き

会いたかったな…

しおりを挟む
私は朝早く南部を出発した。
南部と王都は遠い…早く…会いたい…
移動中の馬車内ではずっと公爵の事を考えている。
早く帰りたくて昨日はよく眠れなかったのが、今ここに来て眠さに襲われている。王都に着く頃には公爵は仕事で屋敷にはいないのは分かっているのに、少しでも早く帰りたかった…

「奥様…奥様…ヴァレリアお嬢様っ」

「ふぇっ」

「到着しました」

「あっうん」

私はいつの間にか眠りジャネットに起こされるまで熟睡していて、既にランクーベ公爵家に到着していた。
馬車から降り屋敷に入るも、出迎えた執事のイーサンから「私の帰りを待つことなく、今日は先に休んでいてください」と、公爵の帰りが遅くなることを伝えられた。
私は初めての恋に、一喜一憂を繰り返している。
早く会いたくて浮かれ、会えないことに沈んでいる。
必死に落ち込んでないフリをするも、ベテランなイーサンや私が幼い頃から一緒にいるジャネット、それに公爵家の使用人でいつも私の身の回りの世話をしてくれるルーリにも見破られてしまっていた。

皆に甲斐甲斐しく世話をされ、食事にお風呂を頂くと急激な睡魔に襲われる。
公爵を待っていたかったのに、寝不足や長距離移動で私の体力は限界で更には宿とは違う柔らかいベッドにあっさりと眠りに落ちた…

キャンキャンキャンキャン

「んっ…ん゛~っ何?」

目覚まし時計のように、犬が吠え続けている。公爵家にいて初めての事だ。
何かあったのだろうか?私の知っている犬の鳴き声ではなく、甲高い声で鳴いている。もしや、誰かが怪我を負って助けを求めているのかもしれない。
嫌な予感に眠気も一気に吹き飛び起き上がる。
この世界では寝巻きを夫以外の男性に見せるのは「はしたない行為」らしいが今はそんなことを言っている場合ではない。
ワンピースなので私としては全く恥ずかしくない格好だが、一応寒くもないのにガウンを羽織った。

犬舎に向かうと使用人が何かを囲うように手を拡げ檻を作っていた。その中心には一匹の犬が転げ回っている…遊んでいるのか?
彼らの様子を確認の為眺めていると、犬は突然走りだしたかと思えば急に倒れ身体を地面に擦り付けていた。その間も甲高い声で犬は鳴くので、何らかの異変なのだろう。

「どうしたの?」

「奥様っ」

執事のイーサンや世話係のルーリ以外にも私をちゃんと「奥様」と呼んでくれている。

「昨日の夕方からフェップンの様子がおかしくて、走り回り甲高い声で鳴いたりと…きっと呪いのせいかと…ですので、奥様は近づかないでください」

「…呪い…ですか?」

犬は駆け回り体を振ったりと忙しなく動き続ける。確かに普段の犬をよく知らないが、異常行動であるのは分かった。

「呪いが伝染する前に…」

「前に…何ですか?」

何をするつもりなの?嫌な予感しかない。

「…楽に…してやるんです」

使用人は顔をしかめながら口にした。
彼も本意ではないのだろう…長く苦しめるくらいなら…と犬のためを思ってだろう。

「楽にって…殺すって事ですか?」

私はそこを確認せずにはいられなかった。

「はい」

「やめてくださいっ」

そんなの酷すぎる…
二つ目の呪い、呪われた犬
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】もうやめましょう。あなたが愛しているのはその人です

堀 和三盆
恋愛
「それじゃあ、ちょっと番に会いに行ってくるから。ええと帰りは……7日後、かな…」  申し訳なさそうに眉を下げながら。  でも、どこかいそいそと浮足立った様子でそう言ってくる夫に対し、 「行ってらっしゃい、気を付けて。番さんによろしくね!」  別にどうってことがないような顔をして。そんな夫を元気に送り出すアナリーズ。  獣人であるアナリーズの夫――ジョイが魂の伴侶とも言える番に出会ってしまった以上、この先もアナリーズと夫婦関係を続けるためには、彼がある程度の時間を番の女性と共に過ごす必要があるのだ。 『別に性的な接触は必要ないし、獣人としての本能を抑えるために、番と二人で一定時間楽しく過ごすだけ』 『だから浮気とは違うし、この先も夫婦としてやっていくためにはどうしても必要なこと』  ――そんな説明を受けてからもうずいぶんと経つ。  だから夫のジョイは一カ月に一度、仕事ついでに番の女性と会うために出かけるのだ……妻であるアナリーズをこの家に残して。  夫であるジョイを愛しているから。  必ず自分の元へと帰ってきて欲しいから。  アナリーズはそれを受け入れて、今日も番の元へと向かう夫を送り出す。  顔には飛び切りの笑顔を張り付けて。  夫の背中を見送る度に、自分の内側がズタズタに引き裂かれていく痛みには気付かぬふりをして――――――。 

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

婚約者の浮気相手が子を授かったので

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。 ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。 アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。 ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。 自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。 しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。 彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。 ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。 まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。 ※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。 ※完結しました

【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。

たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。 わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。 ううん、もう見るのも嫌だった。 結婚して1年を過ぎた。 政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。 なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。 見ようとしない。 わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。 義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。 わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。 そして彼は側室を迎えた。 拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。 ただそれがオリエに伝わることは…… とても設定はゆるいお話です。 短編から長編へ変更しました。 すみません

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。