上 下
326 / 414
二章 ハーレムルート

悩みが解消されたんだよね?

しおりを挟む
学園では日常が戻ったように心が軽く、廊下を歩く足取りも軽くまるでスキップしているよだ。

「随分ご機嫌だな?」

「ふにゃぁ~」

後ろから突然抱きしめられ、耳元で囁かれた。

「ふぅん?もしかして朝からあいつらと?」

「あにゃぁん」

お尻の奥を撫でられ指が深くを確認し、つい気持ちいい声が上がってしまった。
疎らでも人のいる廊下で恥ずかしい喘ぎ声が響いた。
口を押さえても今更で、僕の声を聞こえた人たちが振り返り僕に視線を向けた。

「なぁ、俺とも気持ちいいことしようぜ?」

手のひらをはずす事を躊躇い、首を振って主張した。

「俺の事も婚約者にしてくれよ。」

「…へ?あれっ?」

婚約者候補の話は終わったんじゃ?
僕を利用するためじゃ?…あれっ?

「俺はフィンコックの婚約者を諦めたつもりはないぞ?」

「……そうなの?」

「当たり前だろ?」

「………。」

「…猫がフィンコックに会いてぇって…放課後来るか?」

「行くっ」

「ふふっわかった。」

んふふ、猫さんに会えるぅ。
猫さん猫さん猫さん。
放課後楽しみだにゃー。

僕は浮かれすぎて皆に不審に思われていることにも気付かず、昼休みにはアドルフに母乳を上げて「放課後少し遅れちゃうけど許してね、いつかアドルフにも紹介するね?」と声をかけてしまっていた。「きゃっきゃっ」とはしゃぐアドルフしか見えていなかった。

その場にいたライとエド、リックは聞こえない振りをしていた。

アドルフと別れ学園に戻り午後の授業を受けた。
授業が終わると同時にいそいそと帰り支度を整えあの庭に向かった。
周囲を見渡しながら猫さんの為に彼を探した。
まさか誰かにつけられているなんて考えが頭を過る事はなく、浮かれすぎた無防備な後ろ姿を晒していた。

「猫さーん、ねーんーこーさーーん…あっ」

彼を見つけた。
彼が居るところに、猫さんがいるはずっ。
駆け足でにゃんこさんの元へ。
がさがさと草木を掻き分けて一直線に進んだ。

「ばぁっ」

猫さんが驚いてくれるかな?と飛び出したが全く相手にされず彼の膝の上で気持ち良さそうに撫でられていた。

「………。」

…むっ…虚しい。

「ふっフィンコック…こっちに来いよ。」

「…ぅん」

大人しく彼らの側に座った。

「にゃぁあん」

「にゃぁん」

愛しい猫さんと顔を近付けて鼻と鼻をこ擦り合わせた。
猫同士の挨拶。
猫さん…可愛いっ。
猫さんの色気にノックアウトされていた僕には周囲からどんな風に見られていたかなんて想像できなかった。

「にゃ゛っ?にゃ゛ー」

「あっ猫さぁん…んっなにしたの?」

突然猫さんが走り去ったので側にいた彼を睨んだ。
ここには僕か彼しかいない、僕はそんなことしてないからきっとこの人に違いない。

「俺はなんもしてねぇよ。」

「嘘だっ…」

「猫が俺を避けるはずないだろ?」

「…じゃぁなんで?」

「ん~…あれじゃね?」

「あれ?」

彼の視線を辿ると大きな影が三つ、眩しくてよく見えなかった。

がさがさ

「だ…れ?」

「シャル?なんでここにいるんだ?」

「これはどう言うことだ?」

「ちゃんと説明してください?」

「………。」

あまりの光景に言葉がでなかった。

「シャル?」

「ルマン?」

「シャルマン?」

ライ、エド、リックの三人に名前を呼ばれただけなのに…怖い。

「…ぁっ…猫…猫さんがね…」

「猫?何処にいるんだ?」

責めるようなエドの声。

「…あっその…逃げちゃって…。」

「「「………。」」」

本当なの…居たの…でも逃げちゃって…嘘じゃないのに…疑われてる。

「なら、なんでそいつの足に顔を近付けたりしていたんだ?」

「顔を近付け?…あっ」

確かにそんなことはした…。
けど、そこには猫さんがいて…決して彼の足の彼のモノを…したわけじゃ…。
あっ猫がいた場所って彼の…。

「ちがっ違うの、そこに猫さんがいて僕は猫さんに挨拶をして…」

「そこにいる猫ねぇ?」

ん?なんか違う意味に捕らえられた?

猫さんは本当にいたの。

「シャル…こいつはお前を脅迫した人間だぞ?」

「あっでもでも、猫好きに悪い人はいないと思うしっ。」

僕は彼を守ったんじゃなく…僕と彼はそんな関係ではないと言ったつもり…。

「………。」

「シャルマンが嘘を突いているとは思わない。きっと僕らが来たことで、猫が魔力に驚いて逃げたんだろうね。」

「あぁ、かもな…」

リックの言葉でエドも分かってくれた。

「ふっ、そう。俺達には猫は驚いて逃げたりしないんだよ、三人が近付けばあの猫はこの学園を走り回ってでも逃げるだろうな。」

今まで静かだった彼が語った。
もう少し柔らかく言ってくれたら…。

「………。」

「猫が好きなフィンコックには悲しい事実だな。その点俺は、猫が逃げる程の魔力は持っていないからフィンコックと一緒に猫と戯れることが出きる。因みにあの猫は俺が入学した時からの仲だ。」

ん~なんかその言い方は…。

「………。」

「猫さん…会っちゃだめ?」

僕が会いたいのは猫さんだと伝えた。

「…あいつがいるんだろ?」

「ぅん…だけど、彼の猫さんだから…。」

僕があの猫さんと居たら彼から猫さんを奪ったことになっちゃう…。

「わかった…けど会いに行く時は俺達に言えっ、隠し事はなしだ。いいな?」

「うん」

報告さえちゃんとすれば猫さんに会えるんだ、やったぁ。

「…管理されてんな?」

「なんだと?」

彼の言葉でエドが怒りを隠さなくなっていた。

こんな状況にしたのは僕が皆に黙って猫さんに…彼に会いに来ちゃったからだよね…。

ごめんなさい、皆に迷惑を…。

「それだとフィンコックも息が詰まんだろ?だから、猫に癒されてぇんじゃねえの?」

「………。」  

「あっ僕はそんな風に思ってない…です。」

僕が悪いのにエドが責められるのは嫌だ。
なのに、喧嘩が苦手で弱々しい返事しか出来なかった。

「なぁ、フィンコック?猫と赤ん坊会わせたくないか?」

「ん?うん…出来るなら…。」

会わせてあげたいな。

「なら、俺が猫を連れてってやるよ。俺もフィンコックの子供に会いてぇし。」

「ダメだっ。」

僕が返事をする前にライが強く否定した。

「赤ん坊がフィンコックではなくお前らに似ていたら二度と猫には会えねぇだろうな。」

ライ達は魔力豊富なAクラスでアレックスも魔法省さらお声がかかる程の魔力の持ち主…であればきっと魔力の高い子供になる…。
となると本物の猫に会う機会は魔力が覚醒する子供のうちだけ。
そう思うと可愛い茶トラさんに会わせてあげたいな…。

「………。」

会わせてあげたいな…。
会わせてあげたいな…。
ねぇ聞いて…。
会わせてあげたいな…。

と訴える目で皆を見つめた。

「わかった…けど、乳母も騎士も同席だ。」

「…そいつらが魔力が無ければな。」

ライ達が一緒に出来ないのは魔力が有りすぎるから…。
アドルフの護衛が魔力が無いなんてことはあり得ない。

となるとシャルマンとアドルフ、そしてスティーヴン シリクレッチの三人だけとなる。
結局会うことを合意してしまっているので三人は不本意ながら納得することにした。

「「「………」」」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】

瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。 そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた! ……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。 ウィル様のおまけにて完結致しました。 長い間お付き合い頂きありがとうございました!

僕はただの妖精だから執着しないで

ふわりんしず。
BL
BLゲームの世界に迷い込んだ桜 役割は…ストーリーにもあまり出てこないただの妖精。主人公、攻略対象者の恋をこっそり応援するはずが…気付いたら皆に執着されてました。 お願いそっとしてて下さい。 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎ 多分短編予定

処理中です...