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一章 純愛…ルート

逆上せないように注意しないと

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「シャルマン、多分遅くなるけど行くから。」

「はいっ」

あの日から僕達の距離はとても縮まり、すれ違うことが多くなった気がする。
今も食堂ですれ違い様に声をかけられ誘われると顔がにやけちゃう。

今日も来てくれるんだ。
ふふ。
遅くなるのかぁ。
最近は待つのも楽しい。
少し前までは本当に来てくれるのか、不安でソワソワしてた。
今はドキドキしてる。

ライアン様が来る前にお風呂に入っておこう。
いつもの柑橘系の石鹸とシャンプーを使って…。
僕は良い匂いだと思うけど、ライアン様から何か言われたこと無いな…。

嫌いだったかな?

ライアン様は何でも受け入れてくれるけど、好きとか嫌いって話したことは無いな。
僕もだけど…ライアン様は僕の事好きかな?
僕達はペアの期間だけの関係かな?
今凄く幸せなのに、悪いことが頭に浮かぶ。
この幸せがずっと続けば良いのに…。

シャワーを頭から浴び、涙の痕を…僕は泣いてなんかない。

全身を洗い湯船に入ろうとした時、ふと泡のお風呂に入りたいと思った。

泡風呂ってどうするんだったっけ?

石鹸を少量のお湯でバシャバシャと泡立ててみたが、思った程泡が生まれなかった。
そこにシャンプーを入れて再び挑戦した。
泡が出来はじめたので、水圧をかけると理想の泡が沢山出来た。
浴槽に移して泡を沢山作った。
何かに没頭すると嫌なことが頭から消えていき、お湯と泡を掻き混ぜて泡風呂が完成した。
僕はまだ十六歳だけど童心に帰るっていうのかな?
初めての泡風呂は楽しくて、ふーって飛ばして遊んだり泡ダルマを作った。

僕達の関係は泡のように消えてしまうのかな?

一人の人に感情移入しちゃダメなのかな?
この世界では…。

「ペアがずっと続けば良いのに…。」

かちゃ

扉が開いた。
そこにはライアン様が居た。

…何で?
今日は遅くなるって…。
もう、そんな時間なの?

「ぁっご、ごめんなさい。僕…」

「いや、俺も入っていいか?」

「ぇっ、ぁっうん」

状況があまり理解できずにいた。
頭の整理がつく前に裸のライアン様が現れた。
僕とは全然違う体に目が釘付けになってしまう。

綺麗な身体。

ライアン様は全身をシャワーで流し僕の方へ。
浴槽に浸かる前に僕の前で屈み優しくキスをした。
向き合う体勢でライアン様が浴槽に浸かると少しお湯が溢れた。

一緒に浴槽に浸かるなんて恋人みたい。

「風呂好きなのか?」

「ん?はいっ」

お風呂好きじゃない人なんているのかな?

「珍しいな。」

「…めずらしぃ?」

「あぁ、大体の奴は洗浄魔法やって終わりだろ?貴族なら尚更効率の悪い風呂を好むのは珍しい。」

…そうなんだ…。
そういえば僕が使う前のお風呂場は使った事がないんじゃないかってくらい綺麗だったのは本当に使ってなかったのか…。

「…ライアン様もお風呂入らないの?」

「あぁ」

「そう…なんだ…。」

お風呂…入らないんだ…。

「この匂いだったんだな。」

「へぇ?」

「髪とか身体。」

あっ柑橘系の香、伝わってたんだ…。

「はい…嫌い…でしたか?」

「ん、嫌じゃないな。」

言葉通り受け取って良いのかな?
本当に嫌いじゃない?
我慢…してないかな?
匂いってダメな人は慣れることが無いって聞くし…。
止めた方が良いのかな?
ライアン様は浴槽の縁に肘をつきリラックスしているように見える。

「んにゃっ」

ライアン様にデコピンするように泡を飛ばされ、顔に泡を受けた。
びっくりした…ライアン様もこんな事するんだ?

「はは」

ライアン様のそんな笑顔始めてみた。
嬉しくなって、泡を両手で救いフーっと吹いた。
泡はライアン様の頭や顔にくっついた。
泡って凄い。
いつも格好いいライアン様を可愛く見せてくれる。

「ふふ」

ライアン様とだと何でも嬉しくなる。
泡の中で腕を掴まれたライアン様に引き寄せられ、ライアン様との距離が近づく。
泡が僕達の周りに集まり顔にも沢山ついた。
こんなに近くなのにキスが出来ないのは残念。
泡風呂の欠点だ。
手をライアン様の首に回すも泡だらけで、自分の身体さえ分からなくなる。
お湯の中でライアン様の腕が腰に巻き付き、距離がなくなる。
わざと鼻に泡をつけ、ライアン様の鼻に僕の泡をつけた。
離れるとライアン様の鼻に泡が残った。

えへ。

ライアン様はどこまで許してくれるのかな?
泡泡の手でライアン様の頭に触れた。
モシャモシャと頭全体をマッサージしながら、普段はしないであろう髪型にしてみたりといくら遊んでもライアン様は怒らず受け入れてくれる。
気がつけば一生懸命になっていた。

「顔が真っ赤だな、逆上せたか?」

ライアン様の言葉で全身がポカポカ熱いのを認識した。
腰を抱えられ、されるがまま立ち上がった。
浴槽から出るために足を上げた時ふらついた事で逆上せていたことに気付いた。
少し冷たさを感じるシャワーで泡を勢い良く流され、身体を隠していた泡が消えていく。
なんだか急に恥ずかしくなった。

「一人で出られるか?」

「んっ」

疑いの目で見られてる。
ちょっと屈みたくなるだけだから平気だよ。

「………」

「へぇきだよぉ。」

「…いや、少しここで座ってろ。」

浴槽の縁に座らされた。
ライアン様が頭の泡を流す姿をボーっと眺めていた。
シャワーを浴びる男の人の綺麗な背中。

ずっと見てたい。

シャワーを止め振り返り、近付いてくる姿を瞬きせずに見続けた。
顎から首を触られ優しいキスをされた。
もっとしたいとライアン様の身体に触れよう…。

「まだ、熱いな。」

あれ?
えっ?
エッチな感じじゃなく、熱を測るキスだったの?

宙に浮いてしまった行き場の無い手が虚しかった。
大人しく浴室を出て、バスローブを着た。
ライアン様の風魔法で一気に乾かされ、ソファで二人で寛ぐというより僕から熱が引くのを待つという感じだった。
ライアン様が冷たい飲み物を渡してくれ、一気に飲むつもりはなかったのに飲みきっていてライアン様との泡風呂が楽しすぎて長湯し過ぎたようだ。
次回があれば気を付けないと。

その後は服を着て二人で大人しく眠った。
クローゼットの中には様々なサイズのゆったりとした服が用意されていたのでライアン様の服に困ることはなかった。
多分どの部屋にも準備されているんだと思う。
あの授業のために。
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