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1章 棄てられたテイマー

24話:村の安否 ~ダークエルフ・ジェニスの焦燥~ 前書き編集

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「ふぁぁ~……朝か」
 ベルカとシーリアはまだ寝てるのか。大将たちは……もう起きてるな。

 昨日は凄かったな。霞様とヴリトラの戦いッ……!
 
 オレも霞様の力になりたかったけどなー、オレなんかが助太刀に入っても、あのレベルじゃあ逆に足手まといだよなー……。
 オレも大将にテイムされれば、霞様みたいに強くなれるか?

 ……なんてな!

「大将、霞様、おはようございます!」

「おぉ……朝から元気だな。おはよう」
「おはよう」
 大将は人族だ。と言ってもただの人族じゃあない。どこかの国に召喚された異世界人って話だ。
 そんな異世界の人族だから、ウンディーネの霞様をテイムすることができたんだろうな。

 異世界か……どんな場所なんだろうな? 今度話しでも聞いてみたいぜ。

「昨日は大変だったが、ジェニスたちは大丈夫だったか?」

「あぁ、グラットンスパイダーが護ってくれたおかげで、オレたちは無傷だぜ」

「キ」
 このグラットンスパイダーもヤバイ存在だ。間違いなくこの一匹でオレたちの村を壊滅させることができる魔物なんだよな……。

 ほかにも、アルゲンタヴィスや見慣れない魔物もいるし……そもそもこの森の魔物たちが、テイムされていることがおかしいんだよなぁ。

 この森の魔物たちは強すぎてテイムする余裕なんかないから、普通はテイムができないはずだ。それを次から次にテイムしている大将は流石としか言えないぜ。

「ところでジェニス、ここから村まで、あとどれくらいかかりそうだ?」

「そうだな……朝に出発すれば、暗くなる前には行けると思うぜ」

「……そうか。もしかしたらもう一日かかるかもしれないな。あまりみんなに無理はさせられない。誰も欠けないように安全に進んでいくぞ」

「主は慎重だな」

「キ」

「こんな危険な場所だぞ、慎重にならないほうがおかしいだろ」

「主はもっと私たちを信用するべきだと思うぞ」

「キキ!」

「信用はしてる。だがそれでもお前たちを上回る存在が現れたとき、万が一の事故が起きる可能性はある。だからそれを避けるために、慎重に立ち回っていくんだよ」

「……大将はそこまでオレたちのことを考えてくれてるんだな!」

「お、おぅ……」
 族長は人族を、他人のことなんかかえりみず、自分のことしか考えていない身勝手な存在だって言ってたけど、大将はそんな人族じゃない。
 ちゃんとオレたちの安全のことまで考えてくれてるし、夜も護ってくれた。
 飯だって平等にくれるし、ホントに良い人族だぜ!

「ヴリトラを傷つけたヤツが現れたときが一番面倒だからな、遭遇しないことを祈る限りだ」
「確かに。あのヴリトラを追いやった存在だ。私でも手を焼くだろうな」
 霞様が面倒そうに息を吐いてるな……そこまでか。
 大将が言う通り、ヴリトラと戦ったヤツと出会わないことを祈るぜ。
 
 ヴリトラは天災だ。オレたちじゃどうしようもない。出会ったら死なないように逃げることしかできない。
 
 そんなヴリトラをあそこまで傷つけたヤツだ。もしかしたら憑き物の可能性もある。
 ヴリトラと互角に戦えるのは、霞様含めてもそう多くない。
 ……でも大将はそんなヴリトラをテイムしちまったんだよな。ホントスゲーよ。

 いや待て――ヴリトラは山のほうにいたはずだぞ。それが今ここにいる。じゃあ途中にあるオレたちの村は……?

「ジェニス、もう起きてたのね」

「なんだかジェニスの顔色が悪いわねぇ?」

「ベルカ! シーリア!」

「ど、どうしたジェニス……」

「ヴリトラがここにいるってことは、オレたちの村はどうなったんだ!?」

「「!?」」
 二人の顔が青くなった……そりゃそうだよな。
 もしかしたら、既にヴリトラに……?

「どうした三人とも」

「た、大将……」

「キョータロー様……ヴリトラによって私たちの村が壊滅しているかもしれないのです……」
 ベルカの言う通り、ヴリトラに村を破壊されてるかもしれない。
 あれだけ怒り狂って暴れてたんだ。村が襲われてたら生き残りは……。
  
「そうか……霞、ヴリトラに聞いてくれるか?」

「分かった」

「大将?」

「霞にヴリトラが村を壊滅させたかどうか聞いてもらうが……覚悟はしておけ」

「あ、あぁ……」
 霞様がヴリトラに話を聞いてくれている……。頼むッ、無事であってくれ……!!

「主、ヴリトラは村は知らないと言ってるぞ」

「……それは気づかなかったという意味じゃなくて、破壊していないという意味でか?」

「そうだ」

「だ、そうだ。村は無事らしいぞ」

「よ、良かった……」

「大将、霞様、わざわざ聞いてくれてありがとな……とりあえず安心できたぜ」
 オレとベルカとリーシアで無事を喜び抱き合った。シーリアなんて泣いてるぜ……!

 考えてみれば、オレたちの村は大きくないし、この広い森の中でヴリトラに見つかって壊滅させられるなんて、そうそうあることじゃないよな。

 いや、大将がヴリトラをテイムするっていう、そうそうあることじゃないことが、今目の前で起きてるんだ。やっぱり油断できないぜ……。

「なによりだ。そうだジェニス、一安心したところ悪いが、アルが魔物を狩ってきてくれたから、それで朝飯作ってくれないか?」

「おう! オレに任せてくれ!」
 そんな大将に頼られて嬉しくないわけがない! 村の無事も知れたし、大将の期待に応えてやるぜ!
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