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10の扉 わたしの せかい

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「  ん? 」

 あの 見覚えのある 茶色

  長髪の シルエット
   なんだか 尊大な 歩き方

 しかし 懐かしい 匂いのする
          あの フワフワ髪 は。

 きっと レシフェだ。


今日は 「流れる雲」を 見たくなって 。

 いつもの散歩コース
「神殿散策」へやって来ている。

しかし 直ぐに中へ入ってしまうと「流れる雲」が 見れない、と
とりあえずブラブラしてから神殿へ向かうつもりだった 自分
 そうしてくるりと踵を返して「そろそろ戻ろう」そう思った時に。

丁度 貴石の辺りだったから。
ふと 飛ばした視線の先にあの懐かしの茶色が見えて 思わずピョンと飛び跳ねた。

 「かっこいい」って 直接言っちゃ駄目よ

そう言っていたレナの瞳がチラリと過ぎって。
それを思い出した私の胸が「ドキン」と跳ねたからだ。


「  いや しかし。久しぶりだな。」

そう呟きながらも一瞬、迷ったけれど
「後ろめたい事ゼロパーセント」の私に 声を掛けぬ理由が ない。

多分 話すと「レナとどんな感じか」それも分かる筈だ。

 フフフ
    それは 声を掛けねば
     ならぬでしょう な。


そんな事を考え ニヤつきつつも。
とりあえず、久しぶりのその背中に 声を掛けたのだった。


始めは 少し驚いた様子のレシフェはしかし
「私がこの辺りを彷徨いている」それは周知の事実 だった様で。

直ぐに馴染んだ 私達は自然と並び、連れ立って神殿への道を 歩いていた。
 もう、直ぐ 崩れ掛けの入り口は見えていて
 なんだか二人で歩くと「始めの頃」の彼の反応が思い出され
 ホッコリと暖かい風が 胸に吹く。


「 最近、どう ?」

なんとなく
私は「レナとの事について」訊いた つもりだったけど。

返ってきたのは 意外な返事でしかし
それは彼の「生来の真面目さ」を、思い出させる そんな内容だった。


「お前、クテシフォンの事を覚えてるか?」

「 うん?そりゃ。」

流石に私の記憶力もそこまでではない。

首を傾げながらも その「質問の意図」は何処なのだろうと
その「懐かしく甘い色」を思い出す 茶の瞳をじっと見つめる。

「なんだろうな、あいつの持つ石の色、なのか。あの、受け取った時暫くボーッとしていただろう?あれから、奴自身も自分の中を整理するのに時間がかかったみたいだけどな。今は皆の調整役をしている。あれから…まあ、色々あったんだが、少しずつみんなの石を確認し始めてる。あの、シェランみたいに色の合わない奴、逆に強過ぎる「継いでいる石」、「持たない奴」も、そうだ。それぞれが納得いく形で。なんとか上手くやれる様に、立ち回ってるよ。」

「  そうなんだ 。凄いね。」

「ああ。だが、全く変わってない奴も勿論、いる。それはこちらからどうこう、する事は無いんだが溜まってるんだろうな。………なんだ、あの「素直になれない」?のか。お前流に言えば。俺からしたらアイツらは変わらない。だからまた穴に落としてやってもいいんだが、………解ってるよ。そうじゃないんだろう?だから今はとりあえず「抑え込んでる」だけだ。いつか爆発するかもしれんがそれは、それ。逆に「受け入れた」、と思ってる奴がいきなりおかしくなったりしてな。やっぱり、根は深いよ。」

「   うん。」

 コツン コツンと響くリズム
  私達の足取りも遅く なってきて。

いつの間にか もう 礼拝堂の前
 少し暗い空間に 入るか 入らないか
 そんな場面で。

しかしレシフェが「悩んでいる」訳でもないのが、その「いろ」から伝わって来るから。
「流石だな」と 思いながら安心して続きを聞いて いた。


「しかし、今ならお前の目指していた所が分かる気は、する。俺らは力でなんとかしようとしようとしてきたし、実際しかし。ウイントフークが言う様に、ジジイどもはもっと、その上を行ってた。なんだ、「意思を削ぐ」?それは光を失くすのか、空を失くすのか、そこまで奴等の仕業なのかは判らんが、そもそもそこまで抵抗する様に俺らみんなは教育されていないし、逆に祈りで相手に力を与えてた。原因を探りゃ、色々あるんだろうがそもそも「騙されていた」様になっていて。そこで「いざ、立ち上がろう」と思っても一番大事な、その「芯」の部分が弱いんだよ。「軸」なのか「意思」なのか。…だから、戦わない、戦えない、立ち上がれない奴も、いる。まあ、戦わないに越した事はないんだろうが巧妙だよ。…お前が変えようとしていたのは、そこだろう?だから、光だったのかって。改めて、解ったよ。あの時は能天気だからとしか思ってなかったけどな。俺も、まだまだだ。」

「  フフフ」

 そんなこと ない。
だって「立ち上がったのは彼だけ」なんだ。

しかし、何も言わずとも 「私がそう思っている」、それはこの瞳に伝わっているのだろう。

 落ち着いた、芯の強い 色が。

それを匂わせて、また彼の変化も 知れる。


「もう、全ては「誰が、何が」という部分を超えている。が、それが、どうか。愚直で素直な奴ほど。………難しいのかもな。しかし素直じゃないと飲み込めない事でも、ある。「誰も悪くありませんでした」、そうやって簡単に納得できるなら、済ませられるなら、楽なんだろうが…しかしその先が明るいとは思えないしな。だからこそ、そうやって自分の中で消化するしかないんだろうが…。まあ、お前は気にするな。…なんだ、思ったより大丈夫そうだな。」

「  うん。」

私が落ち込む事を心配してくれたのだろう、覗き込む その瞳が「意外」という色に変化しているのが 面白い。


それに レシフェが言っているのは。

 きっと 「何処で納得するか」
そんな様な「位置」の 話で

確かに「本当真実」は 複雑ではないけれど
私達それぞれの辿ってきた色の 「どの点、面を 採用するのか」「含むのか」、それによって見える世界は変わるし 違うし
しかしそれは 「個々の決めた位置」でもある。

だから
 それが 「どんな場」で あろうとも。

 「自分の本当の位置」ならば
 「収まる様に できている」のだろうし
 そこで苦しみを感じるというならば
 それはまだ「含まならければならない色がある」
 そういうことだ。

何処まで行っても「本当の自分」と ズレていたならば。
 「居心地が悪い」それは そうなのである。


ってのは。嘘じゃなかったって事か。俺からすればお前はいつもくるくると表情を変えて、飛び回ってる印象だもんな。………ふぅん、しかし。まあ、いい。」

じっと 覗き込んだ後、くるりとそっぽを向いた背中に。
なんだか「含み」を 感じる。

「   」

 えっ なに  それ。

 でも なんか。
 「墓穴」を 掘りそうだから 訊かないけど 。


そうして 先へ進む茶色を見ながら
それを明るく照らす 円窓からの光を追って 大きく息を 吸い込む。

 自分の中が 一旦洗われて。
 また 切り替えて「こらからの いろ」が
 入って来れる 様にだ。


そうして 少し。
すっきりとした私の口から出てきた 言葉は
何故だか この頃自分が「感じている そのまま」の 思いだった。

「  なんかね。 「鐘の音」が するんだ。 何処からか なんか。 だから。 それを待ってるのかも 知れない。」

「………。」

突然、私の話が跳ぶのは ある意味いつもの事だけれど。

久しぶりの彼はしかし 戸惑う事なく「そのまま」、言葉を受け止めてくれたのが その沈黙からわかる。


 徐々に 徐々に
  沁み込んでくる 澄んだ 音

  近づいている 鐘の音

それは私が どうしても「降ろせなかった 世界」との「決別」が近づいている 証で。

 掘っても
 降ろしても
 捨てても
 流しても
 、それが。

 「自然に 流れようと している」
 それなのが わかるんだ。


「………ふぅん。まあ、いい。そうして結局。の望む通りに、なるのかもな。」

「 あいつ ?」

「ふん、解ってるんだろう。あいつが。どれだけ………望む、とは違うのかも知れないが。お前の事をのかを。」

「  」

確かに。

 彼は 「望んで」はいないんだ 
  きっと

 だけど。 
 確かに「ずっと見て」くれては いて。

 「私に何も望まぬ」、その 姿を
 なによりも尊いと 思うんだ 今も。


「  待って。 る、のかなぁ  いや は。いないんだろうけど。 」

「だな。………お前の望む様に、って事なんだろうが。」


「そうだね。 変わった、様でいて 変わってないんだ。 うん。」

そう 「彼の外側身体」は 変わったんだろう
 確かに。

しかし それを大きな なかみ
 ずっと私が目指している 光
 「そう なりたいもの」
 「美しくひかる もの」
 「揺らぎなくそこに あるもの」。

そうして お手本の様に 光ってある あれだから。


「   うん。」

「いや、お前。変わったのは、丸わかりだからな??お前も、アイツも。まあそれ以上は突っ込んでやらないが。」

「ぅ うん?  ゴホッ」

そうして 風が「怪しい方向」へ 吹き始めたから。

 なにしろとりあえず
 スキップして 階段の上に逃避する事に
 したのであった 。



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