1,080 / 1,636
8の扉 デヴァイ 再々
子供達と 造船所 3
しおりを挟む「お姉ちゃん!」「ヨルだ」
「女神さま」「久しぶり!」
「遊ぼう!」「ねえねえ!」
結果的に 「ワッ」とみんなに取り囲まれた私は、自分でも自分が「なに扱い」なのか 分からないまま。
とりあえず「簡易まじない講座」を開かされ、一番小さな子に「むん、とやって ほっ、と出す」と相変わらず意味不明な事を言い ナザレに笑われていた。
そうして暫く
みんながそれぞれに試し始め、興味が移ってきた所で こっそり現場を離れようと、「ススス」と後ろに移動していると。
そんな私に近付いてきた、影がある。
あれ? バレた ??
しかし、くるりとそちらを見ると
それは随分と成長した、グラーツだった。
「久しぶりだな。」
「うん、みんな元気だった?大丈夫?なんか、困ったこととか無い?あ 幻の魚はどう ?あれって何食べてんだろ 。?」
「お前…………あんま変わってないな………いや、見た目は変わったけど…。」
「 ん?」
ブツブツと言っているグラーツに視線を向けると、ピタリと言葉が止まってしまった。
なんだ ろうか
なに ?
てか グラーツも背が随分伸びた ね ??
しかし、じっと見つめ始めた私に 逆に相手がまごまごして いる。
「いや、それはいいんだ。だけど、ありがとう。なんか、上手くやってくれたんだろう?戸惑ってる奴もいるが、これまでよりも上手く回りそうなのは分かる。」
「そう言って貰えると 嬉しいな。」
確かに キャラキャラと楽しそうに「適当まじない」を試す子供達は、新しいおもちゃを手にした様で なんだかとても眩しい。
うん 良かった 良かった
なにしろとりあえず。
色々 試して チャレンジ して
失敗してもいい またやって
工夫して 「楽しんで」。
「やってくれたら いい なぁ。」
「…………なあ。」
「 ん?」
しかし、彼の話はそこで区切られて。
ふと 飛んできた小さなカケラが、子供達の視線がこちらを向いている事を知らせて きた。
「なんかね、「本当」の声がする。」
「そう、「濃い」の!」
「 え っ ?」
ん ? ???
口々に 飛んでくる可愛い声
高い声のそれは 私の真ん中に「ピッ」と刺さって。
「本物」
その 言葉にジワリとなにかが沁み込み始め、自分の意識がブワリと拡がったのが わかる。
そう この場を「すべて把握」する為に。
子供達の 言葉を チカラをカケラを
漏らさぬ様に 受け取る為 光の網が 開いたのだ。
「俺が思うに、話の密度が濃いんだよな。言ってる事はチビ達にも分かりやすく、難しくないんだけど。」
「そうそう。なんだろう、その言葉の意味が一つじゃなくて。色んな色が含まれてるんだ。」
いろんな いろが 含まれている
「お前、上手い事言うな?確かにこいつの色は………あっ?」
「いやいや、いいよ 今更。」
小さい子の話に注釈を入れてくれるハリコフ
横のグラーツが何に対して「あっ」なのかは、分からないけど。
私が 一応 女神だからなのか
それとも「多色」に ついてなのか。
でもまあ、どちらにしても今更だ。
今 なにも問題は ないのである。
しかし 既に 私の中では。
今し方聴こえてきた素敵なフレーズが くるくると回り初めて いる。
「 うーん。」
それに しても。
「ふぅん。ありがとう。でも、いいこと聞いちゃったかも。」
自分の「なかみ」と素敵に反応しそうなそれを、自由にくるくると舞わせながら 自分もつい回っていると。
「なあ。」
「ん?なぁに? 」
ツッコミではなく、普通に話し掛けられた。
「今なら、解るけど。あの時、シュレジエンが言ってた事はそうだったんだって。」
「 えっ?」
なんの こと ?
「ほら、あの時。「カッコつけ」って俺が言った時さ…。」
「 ああ!」
そうだ。
「お前が自分の行動?言葉?に、「責任を持ってる」って、意味。今なら、こういう事か、って解るんだ。あの時は分からなかった事、今ならお前の言葉がすんなり入ってくる事。多分、お前は変わってないんだろうけど。俺達が、変わったしだから余計に、意味が解る。チビ達がお前の言葉が「濃い」とか言うのも。多分、「それ以上のなにか」が、あるからなんだろうな。」
「 うん。」
ジワリと 沁み込む光に。
ピタリと回転を止めて じっとその静かな声を 聞く。
しっかりと強く光る青い 瞳
あの頃光って見えた薄茶の髪は、今 変化してほぼ金色に近く 見える。
隠れていた 眼差し
すっきりと切られた髪
子供から 少年へ
きっとこれから青年になってゆく 賢そうな顔。
あの時浮かんでいた防御の色 不信 拒絶
所謂「重い色」は もう彼の瞳には見えなくて。
それなら。
「うん。」
とても 嬉しいんだ。
もう一度、しっかりと頷き 返事をして。
くるりと そのまま作業へ戻っていったグラーツを 見送る。
ずっと前に 蒔かれた 種
拾ってくれたシュレジエン
育てていてくれたグラーツ
色んな形で 受け取ってくれたろう 子供達
それを 今 回収する 私。
「物事には必ず 起点が あって
それを回収する事によって
形になり 強固になり 根付いてゆく 」
それが実感として わかる。
だから 「今にあり」「気付いていること」
そうでなければ 蒔いていること
育っていること
回収することに 気付かないからだ。
「なるほど ねぇ 。」
しみじみと 頷いていると、なんだかワクワクの視線を感じる。
「ねえねえ」「あのさ、これは?」
「あ、うん それはね 」
いつの間にか見つかっていた姿
子供達の次から次の質問で、私の思考はポンと
弾けたけれど。
でも きっと 大丈夫
カケラになって 飛んで行った から。
きっと後で、また材料として反応し いい色になって出てくるだろう。
なにしろ大きな、ヒントになりそうな それ
それはきっと私の「声」に「言葉」に「おと」「振動」に。
「まるっとぜんぶ色」が 含まれてるって。
こと だよね ??
「 多分、だけど。」
ふと、質問の途切れた瞬間 その場を離れ
今し方飛ばしたカケラ達が回るのを 確かめる。
「私の ことば」 「色」
「濃い」 「本当」
「含まれるもの」
「本当の いろ」。
実際「私の言いたいこと」は 沢山ある。
「全部喋ろうと思えば」、子供達が眠くなるまで 話せると思うのだ。
でも。
「全部を言う」のが その時の最善かは、時によって判断しているし、確かに「濃い話」を沢山されると。
眠くなってしまうんだ 慣れてない人は。
私の話がポンポン飛ぶのに慣れてる人は いい。
内容は飛ぶし、抽象的だし 範囲は広いし
現実的な事 所謂ファンタジー的な事
事実と想像、自分の信念
それが織り交ぜられて いるから。
「まあ。分かり辛いんだよな 。」
でも 別に
私は私の話が「全て正しい」と 思っている訳ではないし
しかしきっと その「本質」が。
「どちらも含み」
「可能性」で 「なんでもあり」で
「無限」だから。
「だから 濃い、そう思いたい。うん。」
なんにしても「どちらの面もある」し、それは「まるっとぜんぶが オッケー」であるのだ。
だから 複雑
単純じゃ ない いろ。
「ことば」では 難しいけど。
「チカラ」に 「いろ」に 「エネルギー」に
それが含まれてるなら、いいと 思うんだ。
「でも。 子供達が、そう言ってくれるなら そうなんだろうな。」
そう信じる事も 受け入れる事も大切だ。
それなら 私は。
皆まで言わず とも。
そう 「わかる」よう に
「染み込む」ように
この 「場」に 「無限色」を 撒こう ぞ。
そう 思って、徐ろに船の上に上がり ヒラヒラと羽衣を靡かせ銀色の飾りから「可能性のカケラ」を 撒く。
思うに 子供達は勿論、「人間」は。
一人一人、違って、やり方に正解は無いし
合う合わないが ある。
「染み込むスピード」も「深さ」も
「何を受け取るか」もみんな違うんだ。
だから
そう みんなが
この 「可能性の場」
「無限の場」で
それぞれが最大限 「拡大できる」様に
基盤を創るのだ。
「せかい」の 様に 「プール」の
「海」の 様に。
そうして 自然に その 「なか」を
泳いで いたならば。
「 そう なる。環境が 人を創るし 空気が エネルギーが。人を育むと 私は思うんだ。 そう 即ちそれ自然である。 うむ。」
ん?
でも? て いうか これが ?
あの「ワクワクの基盤」
「いつでも夢の国」
そんな 感じ じゃ ない ???
ボーッと 自分の光を見つめる私の前には
ヒラヒラ キラキラが 降り注ぐ
新芽の空気の造船所
「変化」「移行」 「芽吹」 「成長」
この エネルギーの 中で
みんなの 色が 光が 上がって。
きっと また 変わる。
それを確信しながら、一人 ぐっと胸に手を当てて。
「 よし。」
頭上の天窓を眺めながら、きっと今も サポートをしてくれている「みんな」に。
すべての「閃き」に 感謝していたので ある。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~
山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」
母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。
愛人宅に住み屋敷に帰らない父。
生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。
私には母の言葉が理解出来なかった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる