上 下
1,052 / 1,638
8の扉 デヴァイ 再々

友人

しおりを挟む
 
 ん? あれ ?

ポン、と軽やかに踏み出した一歩
 
その時
 フワリ 背後から私を追いかけてきた光

 優しく頭上に掛かった 白いヴェール。


「あ、ごめん朝。ちょっと先に行ってて?」

「えっ、なに?大丈夫?」
「うん、忘れ物しただけだから。」

「あらそう?」

大きな茶の扉に手を掛けた瞬間、私を呼ぶ様に光が何かを知らせて来たのが わかった。


その 白く垂れ下がる様な光がシャラリと
 目の前に 掛かった時に。

 フワリと浮かんだ イメージ

 届けられた カケラは「銀色の封筒」「緑の瞳」。


 そう 言えば?

食堂へ向かう朝へ手を振り、青の通路を戻って魔女部屋へと足早に向かう。
そう長い距離ではない。


 けれども でも  そう いえば
 見ていないんだ あの 優しい色 あの 瞳。

いきなり浮かんできた懐かしい色に、一抹の不安を感じながら扉の前に立つ。

そうして少し、ドキドキしながらもゆっくりと
繊細な蔦に装飾が変化しているそれに気付きながらもノブを掴んで 押した。

 後で ゆっくり見せてもらうからね
 待っててね 。

「 ん 」

一直線にいつもの見慣れた角へ視線を飛ばし、部屋全体もぐるりと確認する。
そして「やっぱりフォーレストがいない」と いう事に。
今更ながら 気が付いたんだ。


 えっ なんで

  大丈夫?  なんで いないの ?

フワリと被さる「心配」「寂しさ」の色
しかし混乱まで行く前に頭の中には「捜索」のカケラがくるくると回り始める。


  でも そうか

  いると すれば。

 あの子が「いたい」と 思うならば。

 「ディーのところ」それ即ち 私のところだけれど
 森へ行ってしまったから。


腕を上げ、キラリと光る 指輪を目に映して。


「それならきっと、姫様の所に いるよね 。」

自分を安心させる様に 呟く。
ディーもセフィラも、私の指輪の中だ。

 どう なっているのかは 分からないけど 。

しかしきっと あの二人は親子だから。
この指輪の中で 仲良く「共存」しているのだろう。

 でも きっとディーは 私の中にも いて
 でも結局セフィラも ??

くるくると廻る、共通した色の光
それは私達の色を示す「多色の白」、「透明な何色をも含む」欲張りな色でも ある。


 前にも思ったけど でもな なんせ
 「血が繋がってる」から まあ そもそも
 カケラは共存 共通しても いて ??

 でも 「物理的な」話じゃ ないんだ
 だからきっと。

そう 「私が そう 思えば」。


「うん、とりあえずはそういう事で。繋がってるのは、間違いないんだし。」

自分の中で区切りをつけ、目を瞑り
ブワリと感覚を拡げ、黒の中へ 光を通す。


 デヴァイ       黒の廊下

    茶の廊下   礼拝堂

  姫様      シンラ

     腕輪       人形神


      「護りの 二人」。


その、色を感覚で探り 遠くではあるが「存在」の粒子が感じられると、その色を思いながらもそっと 目を開ける。

なにしろあの二人のカケラがあるのはもう、デヴァイここでは姫様の側
セフィラの作った服や、腕輪
そもそも人形に込められた 色だけなのだ。


「ごめん 。じゃないけど ごめん。」

そこまで想像が及ぶと共に、ジワリと溢れた涙

でもきっと。

 フォーレストが 寂しがっていないのは
 わかる。

 なんでかは わかんないけど
 多分 は 本当に「雲」だから。


ジワリ 沁み込んでくる 馴染んだ「姫様色」
その側にある、ふわふわとした雲の感覚と 美しく透けた白と青緑の粒子。


今、思えば。

やはりディディエライトも相当特別で、自然というかスピリットに好かれる質だったのだろう。


その時は きっと
 今よりは まだもっと「重い」「せかい」の成分
 それでもいつでも共にあってくれた「せかい」
 きっと話し掛け合っていた「両者」
 でもまだ緩りと流れる「風」は重く
 それが直接 繋がり合うことは なくて。


 だけどもずっと 窓から眺めていた灰色の空
 いつもそこにある 塗り込められた灰色の世界
 
 ずっとずっと 同じ 灰色の雲の中に。

  時折流れる 淡い 青緑の雲
  それはきっと ひとかけらの星屑で
  流れて来ていた「せかい」からの 光で。


  いつも自分に話し掛けてくる 寂しげな少女に。

 きっと 応えてくれた自然

   空   風   空気と 水

  この「せかい」に蔓延る「見えないなにか」。


きっと ディーが 潰れてしまわない様に
私まで 光を繋げられる 様に。

 手を貸してくれたのだろう 優しい「せかい」が。


目に 浮かぶは小さな白い少女
ただ「なにか」を思って見つめる 窓の外

 まだ「大粒」な「世界の粒子」
  「準備の整っていない」「いつかの私ディディエライト

  
  「時代」   「時」   
              「重み」

    「風の無い」

           「世界」

   「まだ」


 「その時」が 来ていない 世界の流れの 中で。


しかし確実に繋がり合っていたそれは 途切れる事なく今 「最終地点」の私に受け継がれて いるんだ。


「えっ なにそれ。 どう しようか。」

 
 私達は 護られていた

  ずっとずっと  「せかい」に

  どの 「」も 。


  見守られて ここまで来たんだ。


そこまで思いが行き着くと、とてつもなくあの緑の瞳に会いたくなってきた。

が、しかし
今日はこれからお茶会の予定である。

「 うん。でも、会うならゆっくり 会いたいしな。」

「なに、どうした。あの羊の事だろう?」


 あっ

「えっ?どこ 行ってたの???」

いきなり背後から声を掛けてきたのは、久しぶりの極彩色である。

この、大分派手な色が 私の中の空白に色を差して
 パッと切り替わった 私の中身
 事態が動き始める 予感。

そう、無意識のうちにその切り替わりを感じながらも遠慮なく 開く口は。
やはり少し、安堵した私の心の内を表している様でもある。


「えっ てか。来てたの?」

「なんだ、来ちゃいけない様な口ぶりだな?」

「いや、そうじゃないけど。ベイルートさんしか、一緒じゃないと思ってたから。えっ てかシリーは大丈夫?向こうは??」

矢継ぎ早に質問する、私を手で制し
フワリと髪を靡かせ首を振る 大きな男。

 てか。 人型 久しぶりに見たかも。

変わらぬ鮮やかな髪を眺めながら、そんな事を思う。


「シリーはそもそもザフラがいるから心配いらない。街も落ち着いてるし、俺もこっちの方が。いいかと、思ってな?羊には先に伝えておいてやる。しかし、お前が来てるなら知ってる筈だろうな。」

「 確かに。それはあるかも。」

なんとなくだけど。

私の中のディーとフォーレストは繋がっているのだ。
それならデヴァイここへ来た時点で、きっと気が付いてはいるのだろう。


「えー、なんか。神域にいるからかな?でも、別に心配はないよね?」

「それはな。害される様なでも、ないだろう。」

 まあ そうだよね うん。


少し、他のスピリットとは違う フォーレスト
しかしこの狐とずっと黒の廊下を歩いていた時も。

特に問題は無かったし なんなら調度品達と仲が良くて、馴染んでもいて。

「ふむ?もしか したら ??」

私の撒いていた星屑の名残が あるのかも知れない。

「あー、それに。光も、繋いで行ったしね?」

「そうだな。それなら人形の側でお前の光の網を感じられる方が、居心地は良いんだろう。」

「なら、いいの。」

千里もそう言うのなら、安心だ。

しかし、この色が現れた事によって 色々な事が早まりそうな予感にフルフルと首を振った。

 いかん、その予感は 要らない予感。

 私は 自分の周りを ゆっくりとまわって
 確かめながら 進みたい のよ そうなの

  うん 。


「なんだ、壁は高い程燃えるんじゃなかったか?」

「ちょ、 止めてよ。ホントに。いいもん、もう行くから。」


 危ない この色は 危険よ。
 それに 私食堂に行く途中だったんだし ?

そう思い出したは良いが、きっともう朝食時間は過ぎて少し中途半端な時間の筈だ。

 それなら ホールか 私の部屋か
 とりあえずここから脱出する べし。


そうしてぐるりと銀色を探し、キラリと私を呼ぶ封筒を見付けると。

パッと、机の上に置いたままだった それを手に取りキュッと胸に抱える。

「じゃあ ね?」

そうして背後にニヤついた視線を感じながらも。
振り向かぬまま、魔女部屋を後にしたので ある。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

婚約者の幼馴染?それが何か?

仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた 「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」 目の前にいる私の事はガン無視である 「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」 リカルドにそう言われたマリサは 「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」 ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・ 「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」 「そんな!リカルド酷い!」 マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している  この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」 「まってくれタバサ!誤解なんだ」 リカルドを置いて、タバサは席を立った

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...