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8の扉 デヴァイ 再

観照者

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異色違和感を見つけ出す」
その工程の中で。

「内側」を見ることと「外側」を見ること
それは両方同じくらいに、大切な事だ。


日々、混沌の鍋を掻き混ぜたり青のホールでくるくると踊ったりしながら、私は時折「外」を覗きにも行っていた。

 「沢山の色を 必要としている私」
 「含みたい私」「纏いたい私」
 「どの側面も 併せ持つ私」

それを実現する為に、ある時ふと思い付いた「屋根裏探検」。
いや「探検」ならぬ「徘徊」じゃないかと、あの狐には言われたけれど。


そう、姿を現さない様言われている身では実際他の区画へ出向く事は、できない。
廊下は彷徨いているものの、基本的にあそこは人通りは少ないし時間帯も選んでいる。
念の為、ラギシーも使っているし。

私の目的、「純度を上げる」為に「人のいる場所」を求めてはいるけれど、「会ってはいけない」状態なのである。


一番良いのは、ラギシーを使って他の区画へも出入りできる事なのだけど。

しかし居住区内はやはり、人も多いしも、多い。

実は、「好きなもの」を見つけてしまうと蝶が舞い出るか星屑が漏れる事が多い為、廊下は良いが区画内への出入りは禁止されていた。
私の姿は見えなくとも、星屑や蝶は見える可能性が高いからだ。

まあ、私としてはあちこちで「キラキラが降り始める」なら寧ろ良い宣伝になるかと思ったのだけど。

 「変化してきている」

その予兆とも言えなくもない美しい光景、星屑は光の靄の様に見えてとても良い感じに、間違い無い。

しかしやはり「まだ駄目だ」と、その案は速攻却下されてしまった。
確かに。
時折目にする外の光景からは、あまり変化は感じられなかったし、きっと本部長には本部長なりの作戦があるのだろう。

それは私の頭では理解できない部分………いや、したくない部分…かな??


けれどもやはり、「異色」や微妙な「違和感」を感じるのは「人間ひと」からの事の方が、多い。
複雑さを含む柔らかな「感情それ」は、やはり「もの」には無い「脈動」があるのだ。

勿論廊下の美術品達や調度品、「もの」から感じる「こと」も多いのだけど。


「もう、結構回ってるしね………。」

何度もぐるぐると周り、あの黒の廊下はほぼ攻略して、大分馴染んだあの色に少し物足りなさを感じていたのだ。

  もっと できる 取り込める
  どの 「いろ」 をも 含む

そこで思い付いたのが「こっそり覗き見」作戦である。

この、黒に覆われたデヴァイという「空間」に慣れた私は何故だかここを上から眺められる事を知っていた。
何故かは解らないけれど屋根裏から覗き見る様に、この空間を上から「見れる」と思っていたのだ。

もしかしたら、あの時外から見た「図形」が関係あるのかも、知れない。
何が、どう関わりがあるのかは解らないけれど。

きっと私の中では、ああやって上から図形の様にここを眺められるならば「景色」の様にみんなの姿を見る事だって。
「できる」と、無意識に「感じて」いたのだろう。


そうしてある時「もう廊下も飽きちゃったし、他の区画の中へ行ってみたいな」という願望を抱きつつ廊下をフラフラしていると、一瞬「フワリ」とした感覚がして。
いつの間にか、暗闇の中を歩いていた。

そしてその、足元には。
黒の中、見知った白い礼拝堂のある、白い空間が広がっていたのである。


 知っている黒の中 馴染んだ いろ
 あの 廊下を走った 時。

 私を透った あの 「黒」一体化した
 あの 空間に支えられているのが わかる


なんだか「この空間デヴァイ」が私を「受け入れてくれた」様な気がして、嬉しい。

あの時、馴染んだからか 「この子も 生きてる」と思ったからか。

大分馴染んだその「黒」と一緒に、見守る気持ちで「どれどれ」と所々にある「穴」を確認して行く。

黒く柔らかな「靄の絨毯」、その上を歩く自分。
所々に光が漏れる大小様々な「穴」があって、そこから景色が見えるのである。

「ふむ。」

しかし、プライベート空間を覗き見るのは流石にいただけない。
その私の心中を察したのか、黒い靄はプライベート空間は隠してくれている様だ。
見える景色は通路や店先、礼拝堂や公共のスペースらしき場所。

それならいいかと、つらつらと「色」を探しに歩き始める。
きっと誰かの「想い」や「色」に、私が反応する筈だ。

 まだ 持たぬ色  発現していない色
 自覚していない色  思い違いをしている色

そんな「魅力的な色」を探しながら、ウキウキとドキドキ半分で。

この黒い空間の中を散策し始めたのである。



基本的にデヴァイの女性達は、外に出る事が無いので各区画のお茶会は頻繁に行われている様だ。
もう「お茶会」と言うよりは、「いつもの休憩時間」の方が近いのかも知れない。

なんとなく馴染みの良い、白の区画をそのままつらつらと歩いていた。

きっと他の色でも同じ様に、休憩のお茶会は開かれているのだろう。
しかし、フリジアのいる白は。
フリジアがだからなのか、悩みや心配事、なんとなくの愚痴等等。
「相談」に来る女性も多く、それをいつかの訪問で聞いていた私は無意識に白のお茶会を探していたのだろう。

それに、やはり「覗き見」である。
「見ている事を知っている」人が、いるのといないのとでは私の気持ちが違うのだ。
やはり「狭間」とは言えども、成り切れてはいないのだろう。

そんな私の気持ちを知ってか、フリジアからは「心配無い」とは言われてるけど。

そもそも本部長やイストリア、フリジア辺りは、私が「こうなった変容した」所為で「自由に行き来 見聞きできる」事に対しての違和感が、ほぼ無い。
どうやら「当たり前」「そんなものだ」くらいの認識なのである。

「そんなものなのかな………てか、あの人達が特殊……いや、凄いのか。」

でも………。
まあ、安心して、聴けるしね………。


思い出し苦笑をしながらぐるぐると穴を回って行く。

見えて来た白い部屋、フリジア達が休憩をしているという場所は流石に魔女部屋とは違う所にあった。

礼拝堂近くの少し広い作業場の様なその建物は、工房側の端にある店舗を改装した様な外見だ。
お茶のしやすい様に内装が施された部屋は、すっきりと白で纏められており余計な物は無いが居心地の良い空間になっている。

きっと店には出せなかったろう、作りかけの彫刻や額、白には合わない個性的な棚などもあって中々面白い。
もしかしたら「売り物にはならない」と、ここに仕舞われてしまったのかな、なんて想像を巡らせながら「決められている物を作る」事を同時に思う。

あれからユークレースは自由に作品を創れているだろうか。
あの人ならば、会っても大丈夫そうだけど??


そうしているうちに。

 「ポーン」と響く 透き通った 音

 黒の 柔らかな空間の中を 
        高く 澄んだ弦のが走り
 私にその「いろ」を 知らせ
   空間の 隙間 密度が 一段細かく調整されたのが わかる


「おいで?」

無意識に撫でていたフワフワを引き寄せると、下ではお茶会が始まった様だ。
合図の様に、ウンのリュートが響き私に「いろ」を伝えて来ているのが、わかる。

屋根裏散策ではフォーレストはお休みだ。
多分「重さ」は関係無い筈だけど、なんとなく「大きい」あの子はやはり少し窮屈そうな気がして。
だからここでは大概、私の「なかみ」と一緒である。

丁度良い穴の横に腰を落ち着けた私に寄り添うのは、フワフワのウン。
その極上の癒しを膝の上に乗せ、途中から耳に入って来た言葉に私の密度を合わせて行く。


多分だけど。
私の「気になる言葉」「話題」「異色」が出ると、それを弾き出し知らせる役目をしているのがこの子達なのだと、思う。

ウンや、蝶達の動き、リュートや笛の音色、その時々で表されるものは「動き」や「音」、それぞれ違うけれど。
その「色」や「音」から感じる違和感、少しのズレと微妙な振動の、違い。

それを辿って行くと、その「違和感」の正体に辿り着く事が多いのだ。
そうして「異色それ」が、また私の持つ「一部」になる。

どこがどうなって「そうなる」のかは、分からないけれど私の中では「そうなっている」ので、不都合は無い。

そうして、手に触れる柔らかさを染み込ませるのと同じくらいの集中力で、その「色」に耳を澄ませ始めたのだ。
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