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9の扉 グレースクアッド

矛盾の楽園 2

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「私達、人間ひとは。「愛したくて」、「愛されたくて」。「愛」を、求めてて。でもなんで、どうしてに、気付いてないんだっけ?」

つらつらと一人、歩きながら呟いて、いた。


極楽浄土の様になっている、海底墓地。

とりあえず奥へと歩いている私の元にも、あの蓮の香りはまだ届いている。
きっともう、奥までは届いていて。

しかし「何らかの理由で」、まだ残っている「死んでいる私」がいる筈なのだ。

でもきっと。

「この香り」が、届いているなら大丈夫、そう思って。
テクテクと、歩いていた。

ほんのりと発光している、桃色の光の粒を、灯り代わりに、して。


そして、何故私がいきなり「愛について」の独り言を言っていたのかというと、やはりこの沢山の「死んでいる私」が、死んだ理由、死ななければならなかった、理由が。

それ」が無かったからじゃないか、と思ったからだ。
 

きっとずっと、「まだ」だった「私達」。

その、時は。
まだ、私も知らなかったし。

周囲も、勿論知らなかったのだろう。


 「愛」というもの

それは。
未だもって、私達の中でも解っている人は殆どいないという、その事実。

私だって、正直はっきりと「わかってる」と、言えるかどうか不安だ。
しかし、いつも背中を押してくれる、イストリアやフリジアが、そう言ってくれるから。

自分でも、それを受け入れようと、思えるけれど。


「見えない、からねぇ………。」

じゃあ、何故 人は。

 「愛してる」なんて。

 言うのだ ろうか。

私は勿論、これまで言ったことは、無いけれど。


「………なんか、「いいものだ」と思って、言うのかなぁ。ポロッと言える様な、ことじゃないと思うんだけど。………まあ、でも。その人が、「愛だ」と、思えば。………まあ、無粋ですよね、はい。うん。」

イストリアとのやりとりを思い出して、一つ頷き大きく息を吐いて、前を見た。

ぼんやりと歩いていた私は、勿論周囲はあまり目に入っていなかったし。

そろそろ、突き当たりなのか、奥なのか。
この場が「終わり」に近づいている事だけは、解っていたからだ。


なにしろ私の空間ですからね………。

とは、言えども。
思えば、「海底墓地」から「極楽浄土」へ、転向したこの場は、あの「闇」の中なのである。

「だから結局………やっぱり、「何色をも、含む」ということであって………白の裏は、黒で、両方あるから美しい………うん?」

何か、見えた気がして目を凝らす。

多分、「まだ」蝶に変化していない「死んでいる私」だということは、分かる。


分かるん、だけど………

 なんか

  変 ??


 多分  「いろが 違う」?



一番、奥に。

横たえられている、「私」はなんとなく覚えがある、「大人の女性」の私だ。

でも。

なんでか、「一番最後の私」なのは、わかる。

いや、一応「最後」は「今の私」の筈なのだけど。

多分。

  その 「絶望」と「諦め」で 死んだ

  最後の 私 なんだ

それは。
わかる。


 うん? でも?

 なんで。 「いろ」が  違う んだ ろう?


これまでの「死んだ私」は、粗方蝶に変化したがやはり暗色で濃い色が多い。

これから沢山、美しいものを見て。
飛ばして、飛んで。

また、その衣を脱ぐ様に、変化していければ、いいのだけど。


だがしかし。

この「死んでいる私」は、明らかに他の私と違うのだ。

 何が 
 なんだ ろう ?

とりあえず、近づいてじっと見る。
見ているだけで、解るかは分からないけど、なにしろ見ない事には始まらないからだ。

それに、なんとなくだけど。

「この私」は、硬くて「なか」が見えそうにない。

さっきまでの「私達」は、「なか」も覗く事ができた。
だから、その「なかみ」が「絶望」と「諦め」だと。

解った思い出したのだ。


ゆっくりと「その私」の周囲を回りながら、じっと見つめ試してみる。

しかしやはり、探れない様だ。

「なか」に、入れる気がしないし、なにしろ「その私」は。

 
 「死に続けている私」の集大成の 様な

  「いろ」をしていて。

 それが 未だ 強い チカラを放っていると。

解った からだ。


えっ
 でも

   なん で。 ??


 死んでる  いや 死んでるよね?


  うん 大分前に 死んだ のは わかる


「自分」に訊いてみるけれど、やはりだ。

「確実に 死んでいる」。

おかしな、言い方だけど。


 え じゃあ なんで?

 チカラ???   

 なんか 持ってる とか?  石とか

 なにか   うーーん?


そのままぐるぐる回って見ても、何かを持っている、様子は無いし。
石は、持っていれば多分「わかる」と思うのだ。

しかし何も、反応は無い。


 多分 まあ 「同じ理由」で 死んだよね
 うん それは だわ

 どこが? 違う?
 色が濃い  厚い? 深いし なんか 痛い

 硬いし  なんだろう  なにも

 どれも  なにもかも 全てを。


   受け付けない よう な

   この    感じは   覚え が ?

     ある     な ?



 あれも 嫌 これも 嫌   どれも 嫌

 あの 生々しい 視線

 あの  隠れている 「なかみ」「素顔」

  必ず 人間ひとが 持っている


   あの  いきなり 「くるり」と


   ひるがえ る  あれ  が

 とてつも なく   






「えっ  」

もしか して

 あれ  ?



 そう  奥の  奥


   「海底墓地」の   最後


   一番 奥に    あった のは。



閃いたと、言うよりは「思い出した」「それ」。

凡そ私の予測の付かない、夥しい数の「死んでいる私」「死に続けている私」の、最後の最後は。


 やはり、この「海底墓地」に相応しい「私」で

 あったのだ。




  は。


  人間 に 対する

   
    「絶望」  と。


    「諦め」  で。



   は。

 「自分人間」も、含めた。

 「人類全て」に 対して の


 「諦め」だったんだ。





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