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8の扉 デヴァイ
星の祭祀 始まり
しおりを挟む繊細で 丁寧な「いろ」が
幾重にも 重ねられた 夜空
きっと
遠く 果ての 隅 隅までも
きっちりと
一部の隙なく 塗り込められた
完璧に 創り込まれた 空間
その 深く 濃密な 青が 重なった 空 は。
どこまでも 果てしなく拡がっている 様でしかし
その 濃密さから 私達を護る様に
包んでいるのも わかる
丁寧な
丁寧な その 仕事から
「 ああ やっぱり 宇宙は
私達を 見守り 包み 護っている」
それが ありありと 感じられて。
そう その 在り方からして
「 全ては 世界の 一部」 で あることを
まざまざと 見せつけられた 夜
まだ 何も していない
祈っていない
謳っても
願っても
口を開けてすら いないのに
用意された様に
既に空には 星達が瞬き
その 幻想的に 散りばめられた 夜は
まるで
「 そう 在る ように できている 」
そんな風に 言っている様な 気も して。
「ああ そう なんだ 」
素直にそう 思って
ただ 胸がいっぱいのまま 空を見上げて いた
この 芸術の様な 星空
散る 星達の 美しさ
しかし どう 足掻いても 人間には
到底実現できなそうな
美しい その 星の配置
いいや? しかし。
きっと 私達も。
「やろう」と 「思えば」
できるし。
「やりたい」と 思う こと
「再現したい」「創りたい」と 思える こと
やはり 「そういうところ」から
芸術は 生まれているのだろう
宇宙 太陽
星 月
自然
空 風
海
山
川 湖
躍動する大地 唸りを上げ 吼える火山
全てを押し流す 水と
全てを燃やし 再生へ向け 灰にする 炎
全てを強い 勢いで 塵にする その空を舞う風
目に 見えない もの 力
しかし 確かに 「そこ」に ある
「生きている 大きな なにか」
そう きっと ずっと 前から
人間は 知っていたんだ
「地球は 生きている」
地球を「地球」と 認識する
ずっと ずっと 前から。
何も 知らなくとも 知識は なくとも
一番 「大切なこと」は。
知っていた んだ
今は 忘れてしまっていること
「知って」は いるが 「解って」いないこと
大切に されることなく
「もの」として
「資源」として 扱われている もの
「役に立たない」「役に立つ」
「価値がない」「価値がある」
「より 良い方」
「利益を生むか どうか」
でも。
それって。
ずっとずっと 前に 思ったこと
「私達は 籠の鳥なのか」
「人間として 生きられるのか」
そんな事とも よく 似ていて。
私達も「資源」なのか
やはり ひと は。
「そこ」から 抜け出せないのか。
どう すればいいのか 分からない
すぐに 迷子になる 複雑な世界で
なにを 祈る?
どの 世界へ 行っても
「いい」とか「悪い」とか
それを決めているのは 誰?何故?
何度も 何度も 繰り返して
やり方は 変われど
「やっていること」は やはり 「同じ」で。
しかし もう 決めた
解って いるんだ
「あれ」も 「それ」も
「どれ」も「これ」も。
「ぜんぶ」は 繋がって いて
全部が 全部 私達自身の 「選択」で
できて いて。
そこから 逃れたいのならば。
美しい 世界を この目で見たいならば
「自分で」出る しかないんだ
足掻けど。
もがけど。
同じところへ帰って来る 自分
「知った」「解った」「思い出した」
でも 繰り返す「変えたい」という
想い
「ただ そこに 在る」 ことの 難しさ
でもきっと。
それで いいんだろう。
誰も私に 完璧なんて 期待してない
いつも ヘマをして 泣いて 怒って 笑って
それを 何度も繰り返して
勝手に走って。
でも 「それで いい」「それが いい」と
言ってくれる みんな が。
いるから。
「今」の 精一杯の 「私」で。
謳おうじゃ ないか。
お誂え向きに 既に空で瞬く星は
きっと 私を応援してくれているのだろう
何故だか雲が晴れ 今日に限って
濃密な 色を見せている空は
まるで 「今日 星の謳を 謳う」ことを
「知って」いたかの様だ
そして。 私も。
きっと 「謳えば 流れる」
それは 知っていて。
だから 上を見上げ
この 美しさしかない 夜を見上げて
遠くの「色」を想うんだ
グロッシュラーに ある
今の色
ネイアの黄と灰色
クテシフォン始め 今は増えた色
白い魔法使いの色
セイアの少しだけカラフルな色
アラルに渡した石が光るのが見える
ロウワの小さいけれど鮮やかな色
造船所の面々
レシフェの黒
レナの灰色も私の色が混ざって深みを増した
あの複雑な色は イストリアだ
貴石の色 紫が綺麗
デヴァイからの 色
他にも 沢山 沢山の 「色」が今は見える
ああ それに。
あの 金色も。
しかしまだ あの色に捕まる訳にはいかない。
それは、全部が終わってからだ。
そう
自分を夜空の深い青に 拡げ
遠くまで「私の 夜」に仕上げ
この 島を
ぐるりと囲ってゆく
そう すると。
上にも 下にも 星は あって。
そう この島は 空の上に あるから。
「ふぅん?」
それなら。
四方から 星は 降るな?
どうなっているのかは 解らない
でも
それは 問題じゃ なくて。
「私」が。
「できる」と 知っているなら。
「できる」んだ。
さあ 時間だ。
子供達が眠くなる前に 始めようか。
この 伝説にでも 残りそうな 「星の祭祀」
それを。
ありったけの
今の 想いを 込めて。
心は、静かだ。
辺りも、静か。
ただ、側にあるのはウイントフークの白い気配だけで。
辺りは既に、人払い済みだ。
一応、こちらの神殿に偵察に来た人はいたが事前に見回りに来た金色に回収されて行った。
何処へ連れて行かれたのだろうか。
でもきっと、向こう側で。
祈っているのかも、知れないな?
私の望まない事をしないであろう、金髪を思い出しながらも今一度、空を見上げた。
今回も、場所は「あの場所」に立っている。
イストリアのまじない空間も、いいかな?と思ったけど。
「実際の空」に、どう星が降るのか見たかったしやはり空間全体を把握するなら外の方が、いい。
そう思って同じ場所にした。
珍しく背後のウイントフークは急かす事なく私の「準備」を待ってくれたし。
何度も繰り返した「心の準備」を、「今、もう一度」やるかは迷ったけれど、やはり私には必要だったのだろう。
星が、心なしか増えてきているし。
私の「なかみ」も、充分潤った様だ。
やはり、祈りに対する「気持ち」は大切で。
「なに」が「どう」、発現するのか
「可能」「不可能」を決めるのも、私の「真ん中」だから。
欠かせない、精神統一ならぬ一人ぐるぐるを経て、今日も祈るのである。
でも、案外心は落ち着いていて、前回の雨の祭祀でノリノリだった自分とは別人の様にも、感じられる。
今日の、私は。
きっと、「私」を外側から見ている「もう一人の私」でも、あって。
「あの時の今」と「今日の今」は、確実に違っていて、それを楽しいと思える自分を観察している、外側の、自分。
外から見ると、よく、分かるのだ。
違うのは「今」という「時間」だけでなく、「私」もそうだし「環境」も違う。
あの時も「ぜんぶ」を感じて、「風」を感じて、祈った筈だけれど。
今日の「ぜんぶ」は、もっともっと広い、この世界もどの世界をも、含む「全部」だ。
私の世界で起こる地震、グロッシュラーでの風、デヴァイでの震え。
それも、どれもこれも「生きて」いるからこそ起こる、「呼吸」「動き」そんな様なものなのだろう。
だから、やっぱり全ては繋がっていて。
世界はきっと、一つの「生きもの」みたいなもので。
一部だけ、どこかにだけツギを当ててみてもきっと駄目で。
祈るならば、謳うならば「全て」に対して繋げなければ、ならない、そう、すればいい。
そう、思ったんだ。
その、包み込む「なかみ」の大きさが雨の祭祀より拡大していることを嬉しく思い、自分の成長をジワリと感じてまた口角が上がる。
そうしてふと、我に返ると冷静に状況を確認しながら余計な事まで考えている自分が可笑しくなって、一人で笑っていた。
しかし、背後の眼鏡がキラリと光ったから。
そろそろ始めた方が、いいだろう。
さあ。
何から?
謳えば、いいかな?
揺れる 星空
流れる 箒星
それなら。
思い 描くは あの温室の花達
私の歌声と共に 揺れる 生命のチカラ 光
その それぞれが持つ 美しさと 輝きが
優しく揺れ それに 共鳴して 流れる
そんな 謳が。 いい な?
結局、何も考えずに口を開くと出てくるのは
いつもの、謳だ。
そのまま頭を使わずに、口から息を吐いて「こえ」を乗せる。
今日、やはりこの地に吹く風に、乗せて。
緩やかに 飛ばせ。
そう あの 「星の謳」 を。
そして存外静かに、「星の祭祀」は始まったのだ。
「 私は 小さな 星
夜空で 一番に 光る
今は まだ 何も 光っていないけれど
寂しく ないよ きっと
みんなが 空を 見上げるから 」
背後でウイントフークがキョロキョロと空を見上げ、回っているのが、分かる。
青い光が金色に飛んだのだけは、分かった。
でも、続けて謳うけれど。
「 私は 大きな 星
みんなで 瞬き 合う
それぞれ 好きな 色で光れば
ほら 世界を 彩る 星で
また 光が 満ちる 」
「 それぞれ 好きな場所で光り
みんなが 自分の場所で 在れば
それが やがて 大きな星になって
きっと 世界は 合わさり
ひとつに な る 」
「 私が 」
「おい!」
ん?
何番か、分からないけど。
途中、本部長の声で目を開けた私。
どうやら流れ星を見ようと思っていた割には、目を瞑っていた様だ。
「えっ、わぁ~~、綺麗!凄くないですか???」
「いや、それは想定内だがお前、ガラスはどうした?」
「あ。」
忘れてた。
急いで臙脂の袋をポケットから取り出して、勢い良く手を突っ込む。
大量のガラスを仕舞うのにも活躍したこの袋は、勿論本部長とレシフェの作ったアレだ。
「よし、行っくぞ~?」
そーー、れっ!
本題を忘れていた自分に可笑しくなりながらも、その勢いでそのまま、振りかぶる。
最初は、一掴みずつ、手で投げようかと思ったけど。
あの量を思い出して、袋を掴んでそのまま、ぶち撒けたのだ。
そう、「ぶち撒けちゃえば、いい」、自分で言っていたその内容を、そのまま。
忠実に、実行、したのである。
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