上 下
665 / 1,588
8の扉 デヴァイ

ラピス エローラと私 3

しおりを挟む

「まあ、確かに。だと思うわよ?だって別にヨルは「その人達」じゃ、ないんだから仕方が無いわ、それは。何が問題なのかって言うと………。」

「何だと思う?」
「うーーーん。」

暫く下を向いて唸っていた、エローラは。

パッと顔を上げ、キラリと瞳を輝かせるとこう、言った。

しかも、得意気に。

「問題、無いんじゃない??」
「へっ?」

「だって。。多分、それでいいのよ。」

「え、エローラさん、意味が分かんないんだけど………。」

「あのさ。ヨルは決着付けたいのかも、知れないけど。やってない事は、分からないのよきっと。知ってるだけじゃ、駄目なの。ほら、本で読んだじゃ。解らない事って、あるでしょう。」

「まあ、うん、そうだね?」

「でもヨルは「それ」をやってきた。経験したと、感じてるけど。でも結局、多分やっぱり「自分」で、やらないと本当のところは解らないんじゃない?それに、「わかるわからない」は、別にするとしても。「解らないまま、進んでもいい」って事よ。」

「………ほ、う。」

成る程?

「それにさ。なにしろまた色々考えてたって、駄目よ。ヨルなら進まなきゃ。進んで、見えて来る事だって、沢山あるだろうし。なにしろ考えるタイプじゃ、ない。」
「う、うん。はっきり言ってくれると、なんか、うん。」

「私が思うに。ヨルは、「やったけど理解してない」のが、嫌なんじゃないかと思うの。納得してない、と言うか。でもね、多分。」

「うん。」

「それはね。…………「その時」が、来ないと。解らないんだと、思うわ。」

「?………その時?」

「そう。なんでもやりたいし、やってあげたいし、理解したいのも、分かる。ヨルはそういう性格だし。だからきちんと「解って、進みたい」のも、分かるの。でもきっと「その時」が来ないと解らない系の、問題ならば先に進んだ方が、いい。「その時」って。いつだって、「その先」に、あるものなのよ。そう、「恋」みたいにね。そう言われると、分かりやすくない?」

「…………なる、ほど?」

確か、に?

ある日突然。

「あ、そうか、そうなんだ」と。

気が付く事があるのは、私も解る。
解る様に、なった。

「恋」に、気が付いて。


顔がポッポと熱くなってきた気がして、頬に手を当てる。

急に金色の分量が多くなってきた私の上から、優しいエローラの声が降って来る。

「それに。多分、ヨルは優しいから。自分の「なか」の声を優先してると、思う。」

「中の、声?」

「そう。あのね、正直それそんなに悩む必要ない問題だからね??それはそれ、過去は過去。分かっただけで、ヨシなのよ。それでヨルはヨルの道を進まなきゃ。知れた事はラッキーだった。それでいいのよ。別に義理立てしなくて、いいと思うけど。」

「義理立て………」

「そうよ。そういう気持ちが、無かったとは言わせないわよ?多分、じゃないかなぁ。気になってる所。」

「そうなの、かも………?」

「多分ね、どれもこれも、ヨルならば。きっと、「今のヨル」には。精一杯、自由に。生きて欲しいんだと、思うけどな…。」

その、エローラの一言を聞いて。

急に込み上げてきた「なにか」、私の「なかみ」達が全力で頷いている様な、気がして。

涙が。
出てきてしまった。


「………ほらね。………だから、よ。」

静かにそう言って、ハンカチを差し出すエローラ。

それを受け取りながら、やっぱりエローラは凄い、と思う。


ラピスここへ、来て。
友達になって。

シャットへも一緒に行って、私のおかしな部分をずっと見てきたエローラは、一度だって疑問を口にした事は、無いのだ。

いや、恋バナについては、突っ込むけれど。

思い返して、泣き笑いになる。

いつだって、ブレないこの友人が。

心底、大切だと思うんだ。


だから。

みんなの、為に。

どの、世界も、変わりなく幸せであって欲しいと。
思うんだ。


多分、過去の私も、今の私も。

どんな「なかみ」も。

 エローラも マデイラも  ハーシェルもティラナも

 しのぶ    レシフェ  パミール

ウイントフーク  フローレス   レナ

  ベイルート   …


沢山、沢山の人に出会って、どれも大切じゃない人達なんて、いなくて。

今居る、「場所」は、違っても。

「世界」は 「存在」としては。

おんなじ で。


だからこそ、みんなが幸せにならないと「本当の幸せ」ではないと思うし、私はきっと。

「一部」では、納得できないのだろう。

「変える」とか  

「救う」とか。

そんな、大層なことじゃ、なくて。


 今の、私ができること

 やりたいこと

 みんなの為に。  

勝手に、走り出したい所は、何処だ?



「うーーーーん。でも全然成長してない私ができることって………変えたい、じゃなくて。やっぱり、「見せる」ことかなぁ。」

グズグスと鼻を啜りながらも、ブツブツと独り言を漏らす。

すると、静かにお茶を飲んでいたエローラが口を開いた。

「「成長してない」、ね。そうでもないと、思うけど。」

「………えっ、ホント?そこんとこ、詳しく。」

涙を拭い、頬を叩いてエローラからの激励の言葉を、待った。
私には背中を押してくれる肯定の言葉が、必要だ。


「まあ、「成長しなくていい」、とも言うわね。」

「へっ???」

ちょっと、ズッコけましたけど?
エローラさん??

しかし、私のそんな様子を見ながらもしれっとエローラは続ける。

「当然じゃない」とでも、言う風に。


「あのね、ヨルのいい所って。沢山の事を知って、それでもそうやって素直に泣ける所よ。それって、私達にはできない、所よ。そっちの方だと、どうだか分からないけどね。でも、きっとレナの所だって、他の場所も。きっと、窮屈なんでしょう?想像だけでも、解るわ。」

「私達は。ヨルあなたを、見てるだけでも楽しいもの。元気を、貰えるの。レナとも何回か話したけど、ヨルは何かを振り撒いてる。きっとみんなの力になる様な、「なにか」をね。だから結局、私達の世界を繋いで帰って行くんだろうし、それが、できちゃうだろうなって。本当に、思うわ。」

その、エローラの言葉を聞いて。

あの金色の言葉を思い出した。


「泣いても、笑っても。怒っても、精一杯足掻くさまが。………美しい、なって………。」

「そうそう、そんな感じ!いい事言うじゃない。」

「う、うんありがとう?」

「なにしろ。とりあえず、考え過ぎずにいつもみたいに突っ走ってれば。多分、ゴールに着くわよ。いつの間にか、ね。」

「…………ゴール…。」

「あ、勿論ゴールは気焔との結婚?ハッピーエンド?そんな感じよ。そこは間違えちゃいけないわ。うん。」

鼻息荒く、ブレないエローラについつい爆笑、する。

泣いてるんだか、笑ってるんだか。

分からない、この時間が最高だと、思うのだ。


「まあ、何に悩んでてもいいけどさ。ヨルは、ヨルの、幸せを。達成すべく、向かえばいいのよ。きっとそれが。みんなの、幸せになるから。」

「そう、かな………?」

「そうよ。だってきっと………フフッ、凄いわよ多分。」
「え?なにが??」

「だってさ、きっと二人が結ばれた暁には世界が金色の光に包まれて全てが潤い、色鮮やかに踊り出してなんちゃら………みたいに、なりそうじゃない?」

「ちょ、エローラさん………」

私は一体、エローラの中では「何」なのだろうか。

ちょっとそれが心配になったけど。


しかし、やっとこさひと段落ついた私達の話が、ここで終わらなかったのは。
言うまでも、ない。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄したい悪役令嬢と呪われたヤンデレ王子

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「フレデリック殿下、私が十七歳になったときに殿下の運命の方が現れるので安心して下さい」と婚約者は嬉々として自分の婚約破棄を語る。 それを阻止すべくフレデリックは婚約者のレティシアに愛を囁き、退路を断っていく。 そしてレティシアが十七歳に、フレデリックは真実を語る。 ※王子目線です。 ※一途で健全?なヤンデレ ※ざまああり。 ※なろう、カクヨムにも掲載

淫獄桃太郎

煮卵
BL
鬼を退治しにきた桃太郎が鬼に捕らえられて性奴隷にされてしまう話。 何も考えないエロい話です。

エリザベート・ディッペルは悪役令嬢になれない

秋月真鳥
恋愛
エリザベートは六歳の公爵家の娘。 国一番のフェアレディと呼ばれた母に厳しく礼儀作法を教え込まれて育てられている。 母の厳しさとプレッシャーに耐えきれず庭に逃げ出した時に、護衛の騎士エクムントが迎えに来てくれる。 エクムントは侯爵家の三男で、エリザベートが赤ん坊の頃からの知り合いで初恋の相手だ。 エクムントに連れられて戻ると母は優しく迎えてくれた。 その夜、エリザベートは前世を思い出す。 エリザベートは、前世で読んだロマンス小説『クリスタ・ノメンゼンの真実の愛』で主人公クリスタをいじめる悪役令嬢だったのだ。 その日からエリザベートはクリスタと関わらないようにしようと心に誓うのだが、お茶会で出会ったクリスタは継母に虐待されていた。クリスタを放っておけずに、エリザベートはクリスタを公爵家に引き取ってもらう。 前世で読んだ小説の主人公をフェアレディに育てていたら、懐かれて慕われて、悪役令嬢になれなかったエリザベートの物語。 小説家になろう様、ノベルアップ+様にも投稿しています。

身体検査が恥ずかしすぎる

Sion ショタもの書きさん
BL
桜の咲く季節。4月となり、陽物男子中学校は盛大な入学式を行った。俺はクラスの振り分けも終わり、このまま何事もなく学校生活が始まるのだと思っていた。 しかし入学式の一週間後、この学校では新入生の身体検査を行う。内容はとてもじゃないけど言うことはできない。俺はその検査で、とんでもない目にあった。 ※注意:エロです

転生貴族の気ままな冒険譚〜国を救うはずが引退してスローライフを目指します〜

 (笑)
恋愛
異世界に転生した元OLのアリア・フォン・ヘルツォークは、名門貴族の令嬢として生まれ変わる。前世で過労死したアリアは、今度こそ「働かずに静かなスローライフを送りたい」と心に決めるが、彼女の優れた魔法の才能が周囲に知れ渡り、次々と王国の危機に巻き込まれていく。何とかして目立たず、のんびりと暮らしたいアリア。しかし、王子フィリップとの出会いや学院での生活、さらには魔物との戦いなど、彼女の望みとは裏腹に、次々と大きな試練が彼女を待ち受ける。果たしてアリアは、理想のスローライフを手に入れることができるのか?

ヒーローの末路

真鉄
BL
狼系獣人ヴィラン×ガチムチ系ヒーロー 正義のヒーロー・ブラックムーンは悪の組織に囚われていた。肉体を改造され、ヴィランたちの性欲処理便器として陵辱される日々――。 ヒーロー陵辱/異種姦/獣人×人間/パイズリ/潮吹き/亀頭球

「おまえを幸せにする」と約束して敵国に潜入し死んだはずの夫と二年後、そこで幸せな家庭を築く彼と再会しました。~愛も幸福も絶対に逃さない~

ぽんた
ファンタジー
「かならずや生きて戻り、おまえをしあわせにする」 そう約束し、敵国に潜入した夫が死んだ。そうきかされた。 そして、三年後、夫の死を信じられないまま、わたしも敵国に潜入した。夫と同じように。元上司である大佐の妻役として。 そして、その敵国で出会ったのは、妻子と幸せに暮らしている夫だった。 死んだはずの夫は、わたしとではなく敵国のレディと息子と家庭を築き、しあわせに暮らしていた。 夫ベンは、記憶喪失に違いない。彼の記憶を取り戻すべく、極秘の活動を開始する。が、それがうまくいかないどころか、王子やら謎の人物やらに絡まれつきまとわれるように。しかも命まで狙われるってどういうことなの? わたしはただ夫ベンの記憶を取り戻し、どこか静かなところでしあわせに暮らしたいだけなのに。夫と彼との子どもたちといっしょに。それなのに命を狙われたり王位継承の謀略に巻き込まれたり、いい加減にしてほしい。 わたし、いったいどうなるの? ベンを取り戻せるの? また彼に愛されるようになるの? 彼に愛されたい。彼に心も体も愛撫されたい。ただそれだけなのに……。 ※ハッピーエンド確約。いわゆるスパイものです。初のR15指定。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。 ※申し訳ありません。カテゴリー変更に伴い、「私は、最愛の夫と別の妻との幸せを見守らねばなりませんか?~「おまえを幸せにする」と約束した夫は敵国の美女と二人の息子と幸せに暮らしています~」よりタイトルを変更しています

【完結】呪われ王子は生意気な騎士に仮面を外される

りゆき
BL
口の悪い生意気騎士×呪われ王子のラブロマンス! 国の騎士団副団長まで上り詰めた平民出身のディークは、なぜか辺境の地、ミルフェン城へと向かっていた。 ミルフェン城といえば、この国の第一王子が暮らす城として知られている。 なぜ第一王子ともあろうものがそのような辺境の地に住んでいるのか、その理由は誰も知らないが、世間一般的には第一王子は「変わり者」「人嫌い」「冷酷」といった噂があるため、そのような辺境の地に住んでいるのだろうと言われていた。 そんな噂のある第一王子の近衛騎士に任命されてしまったディークは不本意ながらも近衛騎士として奮闘していく。 数少ない使用人たちとひっそり生きている第一王子。 心を開かない彼にはなにやら理由があるようで……。 国の闇のせいで孤独に生きて来た王子が、口の悪い生意気な騎士に戸惑いながらも、次第に心を開いていったとき、初めて愛を知るのだが……。 切なくも真実の愛を掴み取る王道ラブロマンス! ※R18回に印を入れていないのでご注意ください。 ※こちらの作品はムーンライトノベルズにも掲載しております。 ※完結保証 ※全38×2話、ムーンさんに合わせて一話が長いので、こちらでは2分割しております。 ※毎日7話更新予定。

処理中です...