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7の扉 グロッシュラー

考えること

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「でも、なんだかんだ、結局。」

そういうこと、なんだと、思う。


光るものが、見たい。

キラキラした、もの。

明るいもの。

何かもう、兎に角、キラッとした、もの。


そう思ってお風呂に入っている、私。

今は夜だ。

あの後普通に、図書室へ行って色々して食堂へ行ってご飯を食べ騒めきの中でぐるぐるし、再び図書室でウンウン唸った後、夕食を済ませて部屋へ帰って。

「なんか、光が見たい。」

突然頭の中に閃いた、キラリとした眩しい光。

そんな明るいものが見たくて、でもここには、ない「それ」。


もし、太陽があれば。

きっと明日の朝にも、見れたろうし何かを反射して光らせたり。
前庭の池にでも行けば、水に映るキラキラが沢山見れるだろう。


しかし、今現在は「無い」それ。

だから代替え案として、お風呂に入ってキラキラを降らせているところなのである。


「でも。大丈夫、大丈夫…。」

二人と話して、明るくなって。

でもふと不安にも、なる。

けれども確実に明るい未来を描こうとしている二人の気持ちも嬉しくて、笑顔になって。

また、ぐるぐるも、して。


「おんなじ所を、ぐるぐる………。」

そう、回るのである。


それもこれも、もう祭祀も近づいてきっと準備もラストスパートで。
自分の中で迫り来る何かがあって、心が落ち着かなくて。

まだ、迷っているのかも、しれない。

どうするのかは、決めた。


お兄さんと「フリ」をするのも、決まったし。

ギフトの内容も、あれにする。

あとは、心を込めて祈るだけ。


「いよいよ、か。」

「不安なのかな?」

「でも。それも。仕方ないし、それも含めて、祈っていい。」

「とりあえず、あるもの、全部。出して、いいんだから。」


そう、私が我慢してちゃ、始まらない。

不安だって、口に出す。

いい事も、悪い事も。

全部抱えて、祈る。



「何だろうな、でも。何が、…………うーん?どう、思う?」

私が話しかけているのは、目の前に並べた石や小物達だ。

お風呂の中にはお気に入りの石や、小物が相変わらず沢山あって今日も私の癒し担当を買って出ている状態だ。

湯船に渡した銀板の上を、一つ一つ、確認する。


マスカットグリーンの原石、ピンクと紫が可愛い原石。
自然のままの形に心が癒されて、それと共に自然の偉大さも、思う。

カットが凝ったアンティークの小瓶、滑らかな肌の陶器の小皿。
金銀だけの彩色が細かく入った、派手だが落ち着いたその佇まいが気に入って貰ってきた新入りの彼。

自分で作った余りの石は、乳白色のマーブルが柔らかく私を迎えて。
「意外と自分も癒せるかも」なんて、思う。



なんだろう、今、私の心が。

求めている、もの。

何か光る、もの。

圧倒的に眩しい、「それ」が見たくて。


わかっている。

心の声を聞く事の、大切さ。

何を意味しているのかは、分からないけど。

でも多分。

意味がきちんと、あって。

きっと、それをして私が感じて、自分の中で、それが成れば。

「ちゃんと、カタチになって。何かが、生まれるんだよね………。」
 

それが、何なのか。
祈りなのか、光なのか、力なのか。

それともまた別の、何かか。

それは、分からない。


でも意味の無い様な事に見えても、きちんと心の声を聞いて実行すること。

それをする事によって、「自分が満ちて」何かが生まれること。

自分から、何かを生み出す事が、できる、こと。


「どうして、「知って」るんだろう…。」

混ざり合う色のお湯を、掬う。

両の手から溢れるそれは、やはり透明で何の色も、無くて。

しかし湯船に戻ると、あちらはグリーン、こちらはピンク。
なんとも不思議な、色の共存。

目の前にあるそれを不思議な思いで見つめながら、この頃の自分についても、考える。


「成功体験」があるからだろうか?

いつも、ぐるぐるしているから?
なんとなく、分かるのかな?

経験から、なんとなく?

何故、わかる?

何を、私は、知っているの?


自分の頭の中にある、なにか以上の。

心の中にある何か、以外の、もの。


まだ、知らない私があるのか。

それとも何か大きな力が働いているのか。

人智を超えた。

おおきな、もの。

「運命」なのか「神」なのか、「宇宙」なのか、それとも「自然」か。

それともやはり、全ては「私」の中なのか。


わからない。

でも。

「分かんないから、面白いのかも、ね?」


全てが解っていたら。

安心だろうか。

つまらないだろうか。

それが私の行きたい道だったと、しても。

ある意味「敷かれたレール」に、見えるだろうか。


例えそれが、成功への道だとしても。

全てが、解っていて。

なぞるだけの、道だとしたら。

「それはそれで。やっぱり、つまらないんだろうな………。贅沢。」

自分で自分にツッコミながらも、色々な考えが浮かんでくるのが面白い。


きっと私の知らない私もまだまだ沢山ある。

だから、みんなの中にも必ず、それは眠っているのが分かるし。

それを、どうやって。
見つけて、もらうのか。

どうやって、気が付いてもらうのか。

考え、試して、迷って、また考えて。

一つ一つ、やっていくしかなくて。

きっと、地道にやるからこそ叶うこともある。


「うん。」



小さい頃から。

何か原因の分からないモヤモヤが、私の中に巣食っている事があった。

「それ」が何だか分からなくて、モヤモヤすること暫く。

数時間の事もあれば、数日、はたまた数週間の、事もあって。

その、「モヤモヤ期間」。

その正体に、気が付いたのはいつだったか。


多分、少し大きくなってからだと思う。

気が、付いたのだ。

そのモヤモヤは、私の越えるべき困難であって、それが終わるまで。
それを、乗り越えるまでは、モヤモヤが続くのだということ。

それが、その状態が嫌ならば。

私は、考える必要がある。
自分の頭の中を総動員して。

できる限りのことを考えて、対策を練り自分を安心させるしかないのだということ。

それを積み重ねて行く事によって、得られる経験値と安心感によって、モヤモヤ期間が短くなる、もしくは無くなるのだということ。

何事も、努力なくして。

なし得ることは、無いのだということ。


小さな事かもしれないけど、そんな事の積み重ねがきっと、今の自分を作っているのがここに来て、よく、分かる。

一つ一つを、選んで。

それをすること。

私を作る、なにか。

しかしそれ以外の働く、チカラ。


「くっ。………これが、運命?いや、それはまだ分からない。」


ふと、イストリアが言っていた言葉が思い出される。


『時には努力と意志だけではどうにもならない、運命の悪戯も訪れるかもしれない。だがね?全てが、思う方向に転がるばかりでも、面白くないだろう?

神の意志など、余興だとでも思っておけばいいんだ。君は、君の輪を軽く、風の吹くままに転がし楽しむ権利がある。』


そうだ。

そうだよね………。

やっぱり、イストリアさん面白いな………。



私が一つ、確実に思うこと。

それは人に恵まれていると、いうことだ。


この、世界に来て。

出会ったティラナとハーシェル。

なんだかんだでここまで一緒のウイントフーク。

初めの印象は最悪だった、レシフェはいつも私に欲しい言葉をくれるし。

子供達との間に入ってくれたのは、シュレジエンだ。

ここ、神殿でも「悪い人」って、本当にいなくて。

未だ分からない事もあるけれど、協力してくれる人もいるし、何より私が信じられる、人がいる。


だから。

きっと。

この、モヤモヤでも、抱えて進めば。

また、新しい道が開ける事も、分かるんだ。



ハラハラと降る、小さな光。

それは今日はピンク、マスカットグリーン、金銀と少し紫、水色。

沢山の色が混ざり合って。

どこから来た色だろうか、でもそれは必ず私の中にあるどこかの色で。

沢山の事に影響されて、私はできている。
沢山の事に影響されて、私は変わる。


手のひらに、小さな星屑を受けて。
また、この光すら取り込んで私の糧にして。


もっと、美しいものが、見たい。

色々な、ものが。

私の、まだ知らないもの。

きっと沢山ある。

私は、楽しみたいんだ。

沢山の、美しいものが見たいんだ。


そうして、感じて、感動して、それを取り入れ取り込んで。

糧にして、再び、光に変えて、放つ。

光でなくとも。

何かに、変えて。

生み出すこと。

自分の中で何かを変換すること。

「自分の色」を、着けること。


そうしてみんなが、それができて。


世界が、沢山の色で、溢れたならば。



「それ即ち、最高であって………。うむ。」


納得。


私の中で一旦決着したぐるぐるを仕舞って、お湯から出る。

うわぁ、結構フラフラするわ………。

思ったより、長湯していた様だ。

暫く落ち着くまで湯船に腰掛け、頭を戻す。
きっとこのまま立ち上がれば、転ぶ自信がある。
うん。


むわり、とした湯気の中ボーッと眺める、白い浴室。

お気に入り達の並びを目に映して現実と繋げる。

パチンと指を弾くと、少し空気がスッキリしてきた。


「うーん、イケる、か?」

のそりと立ち上がり、拭き布を手に取って。

ここからまたノタノタと支度を、するのだ。


並んだ化粧水の小瓶、ルシアの店とイストリアの店がパッと思い浮かんでそれもまた楽しくて。

「よし。」

きっと、待ってる。

長湯をしているから心配してるだろう。

ベッドに座る金色を想像して思わず口元が緩む。


そうしてゆっくりと化粧水を手に取ると、ピタピタと頬に馴染ませまだまだ支度は、続くのであった。




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