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7の扉 グロッシュラー
お昼休憩
しおりを挟むそうして話がひと段落した後。
パミールの入れてくれたお代わりを飲み終わると、みんなで昼食へ向かった。
何故かというと、私よりも先にガリアのお腹がなったからだ。
一瞬、自分かと思ってお腹を抑えた私。
パミールが隣でそれにウケていて、それを見て私も笑い出してしまった。
そうなったらなんだかみんな、お腹が空いてきて、続きは昼食後にしようという事になったのだ。
「それに、トリルがいたら誘いたいし。」
私が階段を下りながらそう言うと、ガリアも「捕まえようか。」と言っている。
「多分、図書室じゃない?気付いてない可能性高いから、寄っていきましょうか。」
確かに、鐘が鳴っても暫く気付かない可能性は高い。
パミールの提案で私達は図書室へ寄って、食堂へ行く事にした。
どうせ同じ、深緑の館なのだ。
昼食後に誘うならば、一緒に食べた方がいいに決まっている。
待ってるのも、あれだしね?
図書室へ寄り、タイミングよく現れたダーダネルスに「いつもの所にいますよ。」と教えられ、トリルを捕まえた私達。
四人で静かに本棚の森を歩いていた。
トリルはいつもの一番奥、一人用の机に居たのでみんなの勉強スペースを通る。
チラリと見えた、見事な空色の髪と、金茶の髪。気が付いたパミールが私をグイと前へ押して、背の高いパミールの影にしてくれる。
やはり、二人はそう思っている。
あの人が、私を見に来た事が解っているんだ。
そして、守ってくれようとしている。
その事実がまた私の目の前にグッと突き付けられて、なんだか心がキュッとした。
私も、みんなの為に何かしたい。
以前からあった、想いだけれど。
それは私の中で少しずつ、着実に大きく、育ち始めていた。
「それで?私抜きで、何の話をしてたんです?また、恋愛とやらの話ですか?」
そう言いながらも楽しそうにパンをちぎっているトリル。
「いや、全然、そんな話じゃなかったわよ、ねぇ?」
「そうね。」
そう、話す二人の空気も軽い。
話す事で、みんながスッキリ出来たなら良かったけど…どうかな?
そう思いつつも、話題は最近の図書室の事になった。私も気になっていた、人が増えた図書室の事だ。
トリルはやはり、気に入らない様だ。
「煩いんですよ。まぁ、小さな声で話してはいるんですけどね?それも人数が多くなると中々の騒めきな訳で。」
「それはそうよね。私ですら、思うもの。」
「えっ。ガリアが?」
「どういう事よ?」
キャッキャしながら、話は進む。
「それに。あの人達。ちょっと、目障りですね。」
「え?なんで?」
黙って本読んでるんじゃないの?
そう思った私は、反射的にそう質問する。
しかしため息を吐いたトリルは眉間にシワを寄せながら、こう言った。
「いや、あの青い髪の子は、まだいいです。一応、本は読んでますから。あの、隣の男。アレが、煩いんですよ、首が。喋ってないけどすごい、見てる。周りを。しかもずっとキョロキョロ。何しに来てんだろ。」
トリルにしては珍しいくらい、イライラしているのが判る。
確かに静かに勉強したい彼女からすれば、突然沸いた彼らは邪魔以外の何者でもないのだろう。
相当、ウザいんだろうなぁ………。
確かに目の端に映る人が、いつもキョロキョロしてたら嫌だ。
それにどうやら、彼が銀ローブな為周りのセイアに落ち着きがなくなっているのが、余計に煩く感じるらしい。
「続く様なら、自室で勉強しようかなぁと思ってた所です。気分転換に誘ってもらえて良かった。」
「ふぅん…お役に立てて、何よりだけどそんなに気になるものかな?銀ローブって?私も、だよ??一応、だけど。」
「彼は、銀の家格でも一番の家の、後継ぎだからよ。」
そう、パミールが教えてくれた。
ふぅん?
権力者だから?
でも、それって私達と、関係あるの??
多分、顔に出ていたのだろう。
トリルが説明してくれる。
「ここに、いるセイアは何年かしたらデヴァイへ戻ります。あそこは、所謂コネで動いてますから。あの人に、睨まれるとまずいんですよ。」
ふぅん?
ていうか、デヴァイって普段何してるんだろ??
何も、作ってる訳でもなく?
趣味とか?あの、綺麗なカードはデヴァイだって言ってたしな………。
勉強は、ここだし?
祈ってるってのは、少し聞いたけど。
後はなんだっけ、あの胸糞悪いあ、いかんいかん…胸糞とかうん、まぁ、そうなんだけど。
私が一人ぐるぐるしている間に、食堂は一瞬、シンとしていた。
と言うか、私自身は気が付いていなかったけれど。
「行こうか。」
「うん。」
「はい。」
「……………………えっ?」
みんなが席を立った事に気が付いて、焦る私。
幸い、食べ終わっていたので「なに?待って?」と立ち上がり、トリルが手伝ってくれトレーを纏める。
ガリアがみんなの分を片付けに持って行き、さぁ入り口で待とうかと席を立って、やっと状況に気が付いた。
少し、離れた所で。
アラルエティーが立って、こちらを見ていたから。
「ヨル、行くわよ?」
二人はもう歩き出していて、私は少し、迷ったけれどペコリと彼女に頭を下げて二人を追いかけた。
あの、男の人はいなかったけど。
もしかして、仲間に入りたかったのかな………?
そう、考えつつもガリアと合流して再びパミールの部屋へ向かったのだった。
再びパミールの部屋へ入ると、手際よく二人はテーブルをいつもの様に奥へ移動してくれる。
そうして私とトリルが座ると、パミールは再びお茶の支度をしてくれ、ガリアはベッドに腰掛けた。
さっきから沢山飲んでるから、お腹は結構いっぱいだ。しかし、お喋りにお茶は欠かせない。
食後の茶葉を選別しながら、パミールが話し始めた。
「ヨルはあの子と、話した?」
「ヨルの事、見てたのよね?多分。」と続ける。
私は頷きながら、階段での事を話そうとしたが内容が内容だ。
えっと、どう、話そうかな?
二人は勘がいい。
きっとそのまま話せば、気がつくに違いない。
でも、プライベートな事だしなぁ……………?
迷いつつも口を開いた。
「この前、ちょっと、だけね。でも挨拶程度だよ。みんなは?話した?挨拶とか、するの??しなきゃいけない?」
トリル以外の二人はため息を吐いている。
トリルだけは、パミールの本棚を眺めていたが眺め終わったのだろう、話に参加する。
「で?何ですか?」
「いや、あのアラルエティーと話した?挨拶とか、したかなと思って。」
「ああ、あの人そういう名前なんですね………。本当はこちらから行った方がいいんでしょうが、予想通り私は未だですよ。タイミングが悪いのです。」
自分で言う様に、予想通り彼女の名前すら知らないと言うトリル。
クスクス笑っているとガリアがすかさずツッコミを入れている。
「タイミングなんて測ってないくせに。私は一応、行ったわよ?後から何か言われても嫌だしね…あの、あいつがいなければ行かないかもだけど。」
「あいつって、あの男の人でしょ?」
「そうそう。すぐ、帰るかと思ってたけど意外と長く居るわよね…。いつ帰るのかしら。」
「本当、さっさと帰って欲しいですよね。」
トリルだけは意図が違いそうだが、みんなの意見は一緒らしい。
パミールも心配そうに私に注意を促す。
「ヨルは関わらない方がいいわ。「どんな風に」言われて来てるのか、分からないけれど。罠かもしれないし。ヨルは、断れないでしょ?」
「うっ、まぁ………。」
確かに、冷たくする理由が無い。
みんなは毛嫌いしているようだけど。
何か言われたり、頼まれたりしたら聞いちゃうかも…?
それに、あの人の事…。
私の中のお節介虫が、ムズムズしているのも確かなのだ。
いかんいかん。
みんなに心配かけるのは、本意では無い。
よって、話題を変える事にする。
そもそもまだ、神様の話は始まってもいないのだ。
また脱線する前に話を戻そう。
「ねぇ、ところで。その、私の聞きたい事、訊いていいかな?」
頷いてくれるみんなの顔を見ながら、少し考える。
なんて、訊こうかな?
とりあえず。
ストレートに、訊いてみようか。
「ねえ?神様って、いると思う?」
そうしてやっと、私達の神様談議は始まりを迎えた。
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