上 下
13 / 26

11日目 洞窟の中で授業を受けるインド人

しおりを挟む
太陽の光が眩しい午後12時半。

ジャグナフさん 男性 27歳 インド在住

ジャグナフさんの第一印象
英語での会話がメインだったが、訛りが強く聞き取れない箇所が多かった
明らかに洞窟の様な建物の中でレッスンを受けていた

※全編英語でのレッスン(時々日本語も含まれる)

「ジャグナフさん?聞こえます?」

「はい、聞こえます」

「レッスンのご予約ありがとうございました」

「どういたしまして」

「今はどこにいますか?洞窟のように見えるけど」

ジャグナフさんが笑う。

「そういう造りなんです。洞窟に見えますか?」

「はい。ジャグナフさんの声も響いているし、まるで洞窟ですね」

「それはそれでクールでいいですね笑」

「はい笑 今回は初めてのレッスンなので最初に自己紹介しましょうか」

「はい」

「私は講師のエリです。日本の北海道に住んでいます。読書や料理が好きです。宜しくお願いします」

「ジャグナフです。インドにいます。27歳です。英語の先生をしています。宜しくお願いします」

「27歳なんですか! 私と同い年ですね」

「そうですか笑」

「あとは英語の先生をしてるんですね~」

「はい。先生はずっと日本語の講師として働いていますか?」

「いえ、実はまだこの仕事は半年目です。以前は別の仕事をしていました」

「そうですか。私も大学では物理学を学んでいて研究者になりたかったんですが、今は英語を教える仕事をしています」

「そうなんですね~。私も大学生だった頃は日本語講師になるなんて微塵も思っていませんでした」

「先生は大学ではなにを勉強していましたか?」

「日本文学です。主に落窪物語や源氏物語などの古典文学を学んでいました。これらの物語が書かれたのは平安時代で、現在の日本文化や日本語の基礎が出来たのはこの時代だと言われています」

「そうなんですか。日本文化にも興味があります」

「日本文化のどのような部分に興味がありますか?」

「食べ物や日本の伝統などです」

「食べ物ですか。好きな日本食はありますか?」

「実はまだあまり食べたことがないです。しかし、和食は多様ですから色々と試してみたいです」

すると、画面越しに数人の男達が歌を歌い出す声が聞こえ始める。歌といっても遠吠えのようで、ジャグナフさんがいる洞窟の様な住居の中で響き渡る。

「これは、なんの音ですか?」

「ははは~、うちのドラえもん」

「ドラえもん...?」

「はい、ドラえもんです」

ジャグナフさんは笑っている。

「ドラえもんって、アニメのですよね?」

「そうです」

駄目だ...。全く理解出来ない。

「ドラえもんが近くにいますか?」

「いえ、近くにいるわけではありません」

それからジャグナフさんは私にノートのようなものを見せた。そこにはドラえもんの絵や日本語の漢字を何度も書いて練習した痕跡が残っていた。

「わあ、ドラえもんですね。それに漢字も沢山練習してるんですね」

「はい。ドラえもん好きです。先生は好きですか?」

「えーと、今はあまり見ていませんが子供の時はよく見ていましたよ」

画面越しに男たちの謎の遠吠えのような声が大きくなっていき、洞窟の様な住居の中で響き渡るが、これ以上それについて触れないことにした。

「先生は北海道出身ですよね?」

「はい」

「ドラえもんののび太の出身は北海道」

え?そうだっけ?東京じゃなかったっけ...。

「確か東京だったと思いますけど」

「いえ、北海道です」

ジャグナフさんは譲らない。

「そうでしたっけ...。まあ、いいや。ジャグナフさんはアニメも見るんですね」

「はい。沢山見ます」

「日本語を勉強してどのくらいなんですか?」

「一年間です」

「日本語を勉強し始めたきっかけは先ほど言っていたように日本の文化に興味があるからなんですか?」

「はい。小さいときから日本の文化全般に興味がありました。それに。旅行に行きたいです」

「旅行ですか。良いですね」

「はい」

この辺りからジャグナフさんの周りの遠吠えの様な声が聞こえなくなり安心する。

「日本には来たことがありますか?」

「2歳の時に行きました」

「ええっ、本当に小さい時ですね笑 その時の事を覚えていますか?」

「いえ笑 殆ど忘れてしまいました笑」

「小さい時の記憶というのはあまり覚えていないものですよね」

「はい。それ以来は日本に行っていません」

「その時は日本のどこに行ったんですか?」

「えーと、確か東京と大阪に行きました」

「そうですか。次の旅行ではどこに行きたいとか、希望はあるんですか?」

「そうですね。北海道に行ってみたいです。雪があるし、食事が美味しいと聞きました」

「そうですか。是非遊びに来てくださいね。北海道は広くて移動は大変ですが、その分、綺麗な自然の景色が沢山見られますよ」

「良いですね。先生は海外旅行にいきたいですか?」

「はい、行きたいですよ~殆どの国に行ったことがありませんから。インドはどうですか?」

「楽しい国ですよ。日本とは全然違う。驚きも多いと思いますが、刺激的な旅になる事間違いなしです」

「へー、それは良いですね。インドはカレーのイメージが強いですが、料理も多様だと聞きました」

「もちろんです。地域によって全然違いますよ。ただ、カレーをよく食べるのは間違いないです笑」

「あとは少し前にインド人が日本の激辛料理を食べる動画が流行りました。彼が、日本人が舌に痛みを感じるほどの激辛料理をなんでもないような顔であっという間に完食してしまったのを覚えています笑」

「もちろんインド人でも辛いものが食べれない人もいますが、殆どのインド人は辛さに強いと思います。日本のカレーとは全く比べ物にならないほどこっちのカレーは辛いですよ」

私はインドカレーが大好きで、よくランチにインド人が経営しているインドカレーの店に食べに行くが、そこのカレーは日本人向けなのだ。一度友達と都内の本格インドカレーの店で、辛さが普通のマトンカレーを食べた時に火を吹くほどの辛さだったのに加えて、味わったことのない様な不思議な味の調味料が調合されていたのを覚えている。それ以来インドカレーを食べていない...。

「私、インドのカレー食べれないかも...」

「ははは~、辛いのは苦手なんですね」

「はい。インドで美味しいスイーツはありますか?」

「沢山ありますよ。丸いドーナツのようなスイーツのラドゥーというものやバルフィというナッツや穀物を使ったお菓子もあります」

「うわ~、それがいいなあ」

「お菓子にしても北東南西でガラッと種類が変わります」

「インド料理も中々奥深いんですね...」

レッスンの終わりの時間

「ジャグナフさん、今日はレッスンありがとうございました。インドのお話しも沢山聞けて良かったです~」

「はい、こちらこそありがとうございました」

「今回は英語でのお話しが中心になってしまったので次回からは日本語を使ってお話しできるように頑張っていきましょうね~」

「はい、頑張ります。それではまた」

「はーい、さようなら~」

ジャグナフさんと話した感想
好青年という感じのジャグナフさん。訛りが強くて多少聞き取りづらい部分もあったが、お互いの国の文化についてお話しできて良かった。
あとはジャグナフさんの洞窟の様な住居から聞こえた男達の遠吠えの様な声が気になった...。ジャグナフさんが言うドラえもんとはなんだったのだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

夜の公園、誰かが喘いでる

ヘロディア
恋愛
塾の居残りに引っかかった主人公。 しかし、帰り道に近道をしたところ、夜の公園から喘ぎ声が聞こえてきて…

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

処理中です...