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第2

26話

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「こいつも駄目だ。こいつも……あぁ!こいつに知られた日にゃ即国王の耳に入る!……あー本当にいないな、使える魔法士が」

ザっと並ぶ魔法士の名前。王都に在籍する魔法士の一覧を作り、片っ端から精査していく。フワームは自らの足で魔法士を捜し、噂を集め人柄を吟味していた。そんな努力をする友人の隣でマザメスがあっさりと魔法士の一覧を出してきた。呆気に取られたフワームはマザメスに”本当にお前のそういう所だっ”と食ってかかったが、シュシュルに宥められた。腹の虫が収まらないフワームはシュシュルを揶揄ったりした。本気の愛に自分で気付いていなかったとマザメスにバラしてやった。
一悶着あったが、冷静さを取り戻した同期三人組は改めて魔法士一覧が書いてある紙と向き合っていた。

「理想なのは、腕良くて秘密厳守…なんだけど…いないんだよ!」

フワームが嘆く。王都にはここで暮らす人達を診るには困らないほどの魔法士がちゃんと存在している。なのにその恩恵を受けられるのは、ほんのひと握り。城下町で暮らし、よりミリー城に近いところで暮らしている裕福な者ばかりだ。その中でも王室に意見する者は恩恵を受けるのに苦労するらしい。

「ここまで王室と魔法士がズブズブだったとは」

「なんだ、知らなかったのか?やっぱり第1隊じゃないとミリー城の内部には疎いのだな」

「あんだと?馬鹿にしてんのか?」

今日のフワームは、やたらとマザメスに突っかかる。魔法士の一覧をあっさり持ってきた事が余程悔しかったらしい。

「俺は、今まで…ここまで魔法士に注目した事が無かったんだよ!だから…城下町の外れの方に住んでいる人達が、どういう扱い受けてたか…魔法士がどんなに横柄でいけ好かない奴らか…詳しく知らなかったんだよ。ちょっと町中で聞いただけでも、わんさか聞いたよ…」

「確かに、国として考えた時には問題だな」

マザメスも顎に手を当てて考える。

「質の良くない魔法士ばっかの国なんて…クソだ」

幼子の母に涙ながらに話を聞いたフワームは相当ご立腹だ。

「王室の考える質とは、腕が良い。これ一点だろう」

マザメスが即答する。冷たく見えるマザメスだが、フワームほどでは無いにしても内心かなり怒っている。だから今回も積極的に協力してくれている。

「後は、王室の言いなりかどうか、だ」

シュシュルが吐き捨てるように言う。

「さ、話を戻そう。少しの譲歩を考えると、当たってみてもいいのはこの二人だと俺は思っている」

マザメスが魔法士の一覧が書かれている紙を指さした。その中には名前の下に下線が引かれた二つの名前。

「一人は、新人故に腕が少し心配だが…あまり王室に染まっていない。まだまだ正義感溢れる魔法士のキコヌ・ノーロだ」

フワームとシュシュルはその名前に注視する。

「そして……これは、消去法で浮かんできた名前だ…スオ・テウリ」

「え!?アイツ??」

フワームが思わず声を上げる。シュシュルも目を見開く。

「確かに……消去法だな……」

スオ・テウリ、彼は異色の人物だった。最初は騎士団に入った、が直ぐに退団し魔法士にと転職したのだ。それだけ聞くと大したことではないように聞こえるが、そうでは無い。騎士団の内部を散々引っ掻き回し、問題行動の尻拭いに走らされた同期三人組。記憶に苦いその名前、スオ・テウリ。魔法士適正があるにも関わらず、何故か一度騎士団に入った変わり者。経験してみたかったと悪びれること無く言ってのけるスオ。己の欲望そのままに行動する彼は抑圧された騎士団の内部でも密かに羨ましく思うものもいた。

「あいつかぁ…」

スオは読めない男だ。何を考えているのかさっぱり分からない。不思議なことにそこに魅力を感じてしまう者も少なくない。どう行動するか予想できないこの男は今回の件に関しては吉と出るか凶と出るか不安で仕方ない。

「奴は駄目だ、ナノニス様に近付けさせたくない」

きっぱりと言い切るシュシュル。その顔は厳しいものだ。

「不確かな奴にナノニス様を任せられる訳無いだろう?そのくらい分かってるはずだ」

静かに怒りを滲ませるシュシュルはマザメスを睨みつける。

(だから、本気の愛なんだから不要なこと言っちゃ駄目なんだってば)

フワームはヤレヤレと言わんばかりに首を振る。

「しかし、傷を治す能力は光るものがある」

「……それは……分かっている……」

完璧に治してくれそうな人物か、口の硬そうな人物か、迷うところではある。

「二人を足して割ったような人はいないもんかなぁ」

魔法士と向き合い続けたフワームは疲れて来てしまっていた。心がすり減る感覚だ。心温まる話はどこかに落ちていないもんかとため息を着く。

「ここで唸っていても話が進まん。この二人に絞って探りを入れてみる…これで良いな?」

「なんだよ、最初から決まってたみたいな言い方じゃんよ」

今日のフワームはついつい文句を言ってしまう。

「まぁ……予想はしていた……しかしフワームが言質を取ってくれたのは……まぁ…デカイな」

「ん?ん?」

ニヤニヤっとした顔を近付ける。

「まったく……大変だったな、大分……力になったよ……感謝する。これでいいだろ!」

「そうそう、足で仕事した友人に感謝は大切だよ~」

やっと満足したフワームだった。
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