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第1
3話
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次の日、案の定熱が出て寝込んでしまったナノ。ナノはこの半年の間に何度も熱を出している。身体と心から悲鳴が上がっているかのように熱が出てしまうのだ。
(今日さえ乗り越えれば、明日は定休日だったのに…僕って使えないやつだ…)
いつもと比べれば比較的辛くない熱の高さだった。無理をして店に出ようかと思っていたが、女主人のシュガーレに目ざとく見抜かれてしまい強制的に休まされた。
「ほぅ……」
熱っぽい溜息をつき天井を見る。ナノが大人しくベットに横になっているからか、ラシューも机の上に置いてある小さなクッションの上で寛いでいる。
(寝たくないな……)
熱を出した時は決まって嫌な夢を見ていた。毎回うなされて、汗をかいて起きるのだ。時には泣いている時もある。起きるとラシューが心配そうに羽をパタパタと鼻や目元にあてて、ナノを起こそうとしている姿を見る。その姿を見ると、現実はこちらだと思える。
寝返りを打ってうつらうつらしてくる。熱を出すと身体が休みたがってベットに横になっていると睡魔がやってくる。ドロリと身体が泥の中に沈む様に眠りに落ちる。その瞬間ナノはあぁまた夢を見るのか、と泣きたい気持ちになる。
(もぅ……終わったことなのに…嫌だ……夢なんて…見たくない……)
睡魔はナノの気持ちにはお構い無しに、無情にもナノの全身を襲い尽くす。
┉ ┉ ♦ ┉ ┉ ♦ ┉ ┉ ♦ ┉ ┉
いつもの如くうなされ、ラシューに起こされて、次の日の朝に起きたが今回は熱があまり高くなかったからか熱が下がっていた。
「おはよう、ラシュー。いつもありがとうね、今日は動けそうなんだ。いつもは2・3日高い熱が続くのに…もしかして、体力が回復して来たのかな?」
定休日の今日は、もちろんナノもお休みだ。1日だけだが、ずっとベットに寝続けた身体は流石に動きたがっていた。
(今日は、あのお店まで歩いていってみようかな)
朝の支度を済ませて下の階に降りる。静まった店内に、休みだとういのにシュガーレと旦那のストムがいた。
「おはようございます」
「おはよう、おや?もぅ大丈夫なのかい?」
テーブルに向かい合わせで座っていたフドー夫婦がナノの方を向く。
「はい、今回はそこまで高い熱ではなくて…もぅ大丈夫みたいです……あの…昨日は、ご迷惑をお掛けして…」
「良いんだよ!それより良かったよ。軽い熱で、心配する人がナノにはいるんだから…普段から無理しないんだよ!ね、あんたっ」
「おぉ……ゆっくりやんな」
2人の暖かい表情と言葉にナノの心も暖かくなる。
「あり…が…とうございます。いつも僕はご迷惑しか掛けてないのに…」
眉が八の字になり言葉に詰まるとシュガーレは立ち上がりナノの髪をクシャクシャと混ぜ、ポンポンと軽く叩いた。休みの日は帽子を被っていないナノ。この2人には顔の傷跡を見られても大丈夫だった。
「ナノ、あんたを拾ってから子供のいない私達にとってあんたは私達の子供なんだよ」
「シュッ……シュガーレさん……」
「勝手な話だけど…私はそう思ってるんだ。だから子供が迷惑とか考えるんじゃないよ」
にかっといつもの明るい笑顔で言い切るシュガーレは女主人だが、カッコイイ。旦那のストムは口数が少ない頑固親父なので優しい顔で見てくれるだけで受け入れられていると感じられた。
「あんな…大怪我してまだ半年だろ?ゆっくりでいいんだよ、ナノ」
「はい……本当に…本当にありがとうございます」
ナノは深々とお辞儀をした。
「それで…あの、ちょっと出かけるので…」
「…そうかい……無理だけはするんじゃないよ?具合が悪くなったら乗り合い馬車にでも乗って帰ってきな」
「い、いいえっ……そんな…あの……歩きたいんです……僕」
「まったく…変なとこで強情なんだから。それじゃ、くれぐれも!分かったね?それと、帰ったら新作メニューを試してもらうから、遅くなるんじゃないよ!」
「はい」
優しい小言に返事をしてナノは帽子をかぶり店を出た。
定休日に身体を動かす目的もあり、ナノの足で20分程かかる店に通っていた。美味しい飲み物を売っている店で、飲み物を買い一休みしてからまた20分程かけて帰って行く。色んな果物が混じったジュースはナノの楽しみになっていた。
今日もゆっくりと歩いて店に着き、いつものジュースを頼む。肩に掛けている斜めがけのバックからお金を出してジュースを受け取る。店の前には広場があり座れるようになっているので、いつもそこで休んでいる。
(あぁ……今日も美味しい)
両手でジュースを持ち、チビチビと飲んでいく。広場からジュースのお店を眺める。この店はナノが幼い頃見かけていた店だった。何度か前を通った事はあっても買ったことは無かった。今のナノの様に広場で座って飲む幼い自分と同じくらいの子供が羨ましかった。いつか飲んでみたいという想いからもこの店に通っていたのだ。
(今日は人の通りが多い気がするな)
ボンヤリと広場を行き交う人々を見ていると、2人組の若い男から声を掛けられた。
「やぁ!1人なのかい?お嬢さん」
ナノは小柄なためか性別を間違えられる事があった。副団長のように不躾に男か女かどっちだと聞いてくる人はいなかったが…
「待ち人が来ないのかな?それなら俺達と一緒に遊ばない??」
ナノがビクビクとジュースを握りしめる。自分より大きく、頭上から話しかけられるのが怖くて苦手なのだ。早く去ってほしかったが2人組の男達はしつこく話しかけてくる。
「ね、ね、さっきからボーッとしてるし暇なんでしょ?俺達と遊ぼーよー。1人だとつまんないでしょ?」
縮こまっていたナノだったが、これ以上ここに居たくなくてフイと立ち上がりその場を離れようとする。
「ちょちょ、待って待って~」
肩と腕を取られて軽く引っ張られてしまう。ナノはまたしても急に触られて大袈裟にビクッと身体が揺れてしまう。
「ごめんごめん、そんなに警戒しないでよー」
「それとも…俺達とイイ事する?」
ニヤリと一人の男が笑った。
「ひぅっ」
ナノの喉奥から掠れた音が出る。ズリズリと後ずさるが離してもらえない。嫌だと顔を振るが男達はお構い無しだ。
「ちょっとよく顔を見せてよ」
帽子に男の手が掛かろうとした時、その男の肩に誰かが触れてきた。
(今日さえ乗り越えれば、明日は定休日だったのに…僕って使えないやつだ…)
いつもと比べれば比較的辛くない熱の高さだった。無理をして店に出ようかと思っていたが、女主人のシュガーレに目ざとく見抜かれてしまい強制的に休まされた。
「ほぅ……」
熱っぽい溜息をつき天井を見る。ナノが大人しくベットに横になっているからか、ラシューも机の上に置いてある小さなクッションの上で寛いでいる。
(寝たくないな……)
熱を出した時は決まって嫌な夢を見ていた。毎回うなされて、汗をかいて起きるのだ。時には泣いている時もある。起きるとラシューが心配そうに羽をパタパタと鼻や目元にあてて、ナノを起こそうとしている姿を見る。その姿を見ると、現実はこちらだと思える。
寝返りを打ってうつらうつらしてくる。熱を出すと身体が休みたがってベットに横になっていると睡魔がやってくる。ドロリと身体が泥の中に沈む様に眠りに落ちる。その瞬間ナノはあぁまた夢を見るのか、と泣きたい気持ちになる。
(もぅ……終わったことなのに…嫌だ……夢なんて…見たくない……)
睡魔はナノの気持ちにはお構い無しに、無情にもナノの全身を襲い尽くす。
┉ ┉ ♦ ┉ ┉ ♦ ┉ ┉ ♦ ┉ ┉
いつもの如くうなされ、ラシューに起こされて、次の日の朝に起きたが今回は熱があまり高くなかったからか熱が下がっていた。
「おはよう、ラシュー。いつもありがとうね、今日は動けそうなんだ。いつもは2・3日高い熱が続くのに…もしかして、体力が回復して来たのかな?」
定休日の今日は、もちろんナノもお休みだ。1日だけだが、ずっとベットに寝続けた身体は流石に動きたがっていた。
(今日は、あのお店まで歩いていってみようかな)
朝の支度を済ませて下の階に降りる。静まった店内に、休みだとういのにシュガーレと旦那のストムがいた。
「おはようございます」
「おはよう、おや?もぅ大丈夫なのかい?」
テーブルに向かい合わせで座っていたフドー夫婦がナノの方を向く。
「はい、今回はそこまで高い熱ではなくて…もぅ大丈夫みたいです……あの…昨日は、ご迷惑をお掛けして…」
「良いんだよ!それより良かったよ。軽い熱で、心配する人がナノにはいるんだから…普段から無理しないんだよ!ね、あんたっ」
「おぉ……ゆっくりやんな」
2人の暖かい表情と言葉にナノの心も暖かくなる。
「あり…が…とうございます。いつも僕はご迷惑しか掛けてないのに…」
眉が八の字になり言葉に詰まるとシュガーレは立ち上がりナノの髪をクシャクシャと混ぜ、ポンポンと軽く叩いた。休みの日は帽子を被っていないナノ。この2人には顔の傷跡を見られても大丈夫だった。
「ナノ、あんたを拾ってから子供のいない私達にとってあんたは私達の子供なんだよ」
「シュッ……シュガーレさん……」
「勝手な話だけど…私はそう思ってるんだ。だから子供が迷惑とか考えるんじゃないよ」
にかっといつもの明るい笑顔で言い切るシュガーレは女主人だが、カッコイイ。旦那のストムは口数が少ない頑固親父なので優しい顔で見てくれるだけで受け入れられていると感じられた。
「あんな…大怪我してまだ半年だろ?ゆっくりでいいんだよ、ナノ」
「はい……本当に…本当にありがとうございます」
ナノは深々とお辞儀をした。
「それで…あの、ちょっと出かけるので…」
「…そうかい……無理だけはするんじゃないよ?具合が悪くなったら乗り合い馬車にでも乗って帰ってきな」
「い、いいえっ……そんな…あの……歩きたいんです……僕」
「まったく…変なとこで強情なんだから。それじゃ、くれぐれも!分かったね?それと、帰ったら新作メニューを試してもらうから、遅くなるんじゃないよ!」
「はい」
優しい小言に返事をしてナノは帽子をかぶり店を出た。
定休日に身体を動かす目的もあり、ナノの足で20分程かかる店に通っていた。美味しい飲み物を売っている店で、飲み物を買い一休みしてからまた20分程かけて帰って行く。色んな果物が混じったジュースはナノの楽しみになっていた。
今日もゆっくりと歩いて店に着き、いつものジュースを頼む。肩に掛けている斜めがけのバックからお金を出してジュースを受け取る。店の前には広場があり座れるようになっているので、いつもそこで休んでいる。
(あぁ……今日も美味しい)
両手でジュースを持ち、チビチビと飲んでいく。広場からジュースのお店を眺める。この店はナノが幼い頃見かけていた店だった。何度か前を通った事はあっても買ったことは無かった。今のナノの様に広場で座って飲む幼い自分と同じくらいの子供が羨ましかった。いつか飲んでみたいという想いからもこの店に通っていたのだ。
(今日は人の通りが多い気がするな)
ボンヤリと広場を行き交う人々を見ていると、2人組の若い男から声を掛けられた。
「やぁ!1人なのかい?お嬢さん」
ナノは小柄なためか性別を間違えられる事があった。副団長のように不躾に男か女かどっちだと聞いてくる人はいなかったが…
「待ち人が来ないのかな?それなら俺達と一緒に遊ばない??」
ナノがビクビクとジュースを握りしめる。自分より大きく、頭上から話しかけられるのが怖くて苦手なのだ。早く去ってほしかったが2人組の男達はしつこく話しかけてくる。
「ね、ね、さっきからボーッとしてるし暇なんでしょ?俺達と遊ぼーよー。1人だとつまんないでしょ?」
縮こまっていたナノだったが、これ以上ここに居たくなくてフイと立ち上がりその場を離れようとする。
「ちょちょ、待って待って~」
肩と腕を取られて軽く引っ張られてしまう。ナノはまたしても急に触られて大袈裟にビクッと身体が揺れてしまう。
「ごめんごめん、そんなに警戒しないでよー」
「それとも…俺達とイイ事する?」
ニヤリと一人の男が笑った。
「ひぅっ」
ナノの喉奥から掠れた音が出る。ズリズリと後ずさるが離してもらえない。嫌だと顔を振るが男達はお構い無しだ。
「ちょっとよく顔を見せてよ」
帽子に男の手が掛かろうとした時、その男の肩に誰かが触れてきた。
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