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第1

0.はじまり

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 ショリ…ショリ……ショリ…

ごろん

ショリ…シャリシャリ……

「ふぅ~……」

足元には山のような芋が置かれている。
高さ50cmくらいの小さな丸椅子に座り次の芋を手に取る。そして皮を剥いていく…
右手にはナイフ、左手には芋が握られている。その左手の甲には長めの袖からチラリと見える傷跡。肌が縮れたように見える、火傷の跡のようだ。

フと手を止めてだらんと下げる。天井を見上げてまたため息をつく。芋を置き、左手をブラブラと振りその手に視線を向け、グーパーグーパーと握ったり開いたりする。

「っち……」

眉間に皺がより険しい顔をする。
その表情は目深に被ったつば付きの帽子であまり見えない。

「…先に掃除にするか」

立ち上がったその姿は大きめの服を着た少年だった。
ナイフを置き、箒を手に取り場所を移動する。ドアを開ければそこはテーブルとイスがずらりと並ぶ食堂だった。
ざっと箒で掃き、次にモップで床を拭く。次はテーブルを布で拭いていく。その時左手はほとんど使わない。添えているだけだ。

「裏は終わったのかい?」

女性の声が後ろから少年に掛かる、ここの女主人だ。

「あと少しです」
「手が空いてる奴がいたから、そいつにまかせるよ。休憩にしな」
「…すみません」
「返事は『はい』だよ!」
「あ……は、はい…」
「ふふん。そうそう」

満足そうに離れていく女主人は気の良いおばちゃんだ。その背中をじっと見つめ、自分の左手を見る少年。大きく息を吸ってゆっくり吐く。暗い瞳で休憩に向かう。その足取りは時たま右足を引きずる。今日は曇りなので調子が悪そうだ。

「そろそろ…また来そうだ…」

ボソリと呟いた言葉は誰も聞いていなかった。
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