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番外編
緋縁と皇輝のある朝
しおりを挟む外は夏の気配が近づいて、じめっと暑い日が増えてきた。武通学園の寮の中は快適な温度で保たれていた。外の体感と違い、いつまでも惰眠を貪れるベッドの中。疲れが見える顔で緋縁は寝ていた。その首から胸元まで赤い跡が散らばっていた。最近の土曜日の朝によく見られる光景となっていた。
(髪、サラサラ…いつ見ても美味そうな唇してるんだよな……白い肌に赤い跡ってエロいよな)
皇輝は隣に寝ている緋縁をじっくり観察していた。週末は決まって部屋に泊まらせていた。本当のところは、2人部屋に帰したくない。寧ろここに住めば良い。嫌、部屋から出なくて良い。と鬱々とした想いを抱えていた。
(いつも恥ずかしがってじっくり見せてもらえないんだよな……)
皇輝はこの朝の時間が好きだった。心行くまで可愛い恋人を見ていられる。
「ん~……うぅ…………スー……」
見ているだけでは我慢が出来なくなり、頬や唇を撫ではじめる。そしてたいがい、身体に腕を回して抱きしめてキスをする。さすがにここまでされると緋縁が起きる。
「んっ……あ、わっ……また……もぅ…朝くらいゆっくり寝かせてよ」
「唇が誘ってたから、仕方ないだろ」
「…………ねぇ…コウって…そろそろ大丈夫?」
(頭、お花畑の状態っていつまでなの?)
「緋縁こそ、そろそろ自覚して貰えないか」
「…何を」
「自分の魅力についてだ」
「分かってるよ、ちょっとは見た目が良い方だって…誤解されやすい方だってさ……」
「ダメだ……分かってない。なんで分かろうとしないんだ……自覚するって回路どこかに落としてきたのか?」
「バカにしてんの!?睡眠の邪魔されて腹立ってるんだから、ほっといて。誰かに寝かせてもらえなかったからまだ眠いの!」
「……分かった、緋縁は寝てて良い」
「これ、デジャブだ……先週と同じ気がする」
「お?察しが良くなったな。偉いじゃないか」
「俺、部屋戻って寝る」
「じゃあ、この後の展開も分かってるんだろ」
「分かってるから俺の部屋に戻るの!寝たいの!」
「よしよし。ここを撫でてやると腰砕けになるんだよな、緋縁は」
「ぎゃあっ!!服きてない!裸じゃん!やぁっん」
逃げようと皇輝に背を向けてベッドの端に手をかける。無防備な裸体の背を向ければどうなるか想像している場合では無かった。
「なんだ、やっぱり緋縁もその気なんだな。俺に可愛い尻を向けて」
「なんちゅう解釈だっ!」
皇輝の片手は緋縁の尻に、もう一方の片手は前に回り握られてしまう。やわやわと両方を揉まれて、行く手を遮られる。
「やだっやだっやだっ!まだ痛い、まだ痛いからやだぁ!!無理なの~っ」
「ははは、元気だなぁ。あれ?ちょっと腫れぼったいかもなぁでも解れてる。明日も休みだし、良いんじゃないか?」
「んやっ………う、触るなぁ………ひ、他人事だと思ってぇ……可愛い恋人が!いやだって頼んでるのに聞けよぉ…可愛い恋人なんだろ~……」
(これ言ってて、頭噴火しそう……)
「ふふふっそんな可愛いこと言われて離してやるほど枯れてないんでね」
「無理無理無理!無理だってぇ……やだぁ……昨日のでお腹いっぱいだから…」
「俺ので?」
グイッとベッドの真ん中に戻され、耳元に唇をつけて吐息と共に囁かれる。
「誘うの、上手いよな。緋縁って」
ねっとりと言われる。ずくんっと緋縁の身体の奥が心臓ではない場所で鼓動を感じた。
(そんな、エロエロボイス……耳元で喋んなよ)
足を絡められ、逃げられなくなる。
「やったら、口聞いてやんないからなっ」
「ほ~……さすが緋縁。俺を煽るのが抜群だな」
「ひっ!嘘です。ごめんなさい」
「嘘ついたのか?」
「やだ、本当に……身体キツいもん~」
(こうやって、時々総長の顔覗かせるっ!)
涙目でびくびくと振り返る。緋縁の瞳の魅力が存分に活かされる。ゴクリと生唾を飲み込む音が聞こえた。
(ごくん、ごくんって聞こえたよ……)
「や、優しく…お願いします……」
判決を待つ心境だ。
「緋縁っ!」
それから、鳴きに鳴かされたのは言うまでもない。
「緋縁のあの時の声って子猫が鳴いてるみたいで可愛いよな」
と感想をもらったので、しばらくの間は全力で声を出さないように頑張っている緋縁だったらしい。
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