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高等部のころ
《31》
しおりを挟む(は、は?え、は?何で…何で風紀委員の人ばっかりいるの?え、風紀って真面目の象徴じゃないの?えぇ…何で。うそ、皆…不良ってことなの?それともこれが普通なの?いやそんな訳ない、え、え…進、進もそうなの?いやいやいや……ダメだ考えが全然まとまらない。何これ、僕ここにいていいの?いやだって……うわっ……どうしよう、本当にどうしたら…)
項垂れるように下を向いて考えに没頭していたら、またしても笑い声が上から聞こえてくる。
「ふふ……百面相の次は物思いにふけるの?忙しいね?サトくん?」
「え、あ……名前……」
「サトくんの方がいいのかなって…違った?」
「いや……ありがとうございます」
「この店はね、ハクってチームとガードってチームの子たちがよく来るんだよね、知ってたかな?」
「全然……何にも……知らないです………すみません、僕今ちょっとパニックで……あー……僕みたいな一般人にはお金持ちの世界……まった分からないです……」
「そうかな?彼らもかなり子供っぽくてそこら辺の子と変わらないと思うけどなぁ」
「いや、夕先輩の言葉をそのまま鵜呑みにした僕がいけなかったんです…すみません…あの、オータ…くんにも怪しまれちゃったし…僕、ここに来ちゃ行けなかったみたいですね」
「待って待って、違うよ。来ちゃ行けないなんて無いよ。ましてやあの夕くんの後輩くんでしょ?大丈夫だって。オーナーの俺が言うんだから…」
「あ、三井さん、オーナーさんなんですね……」
「うん、いちようね。さっきのオータの言った意味は、彼ら目当ての迷惑なファンの子じゃないよね?って意味。ミーハーは遠慮しますって事だから」
「え……ファン……」
「顔が良いのがあっちこっち居るでしょ?だからだよ、サトくんは大丈夫」
「え、え?」
(あーそっか夕先輩は所属は親衛隊だけど、目的が違ってたし、僕も、本当はファンじゃないしな)
「あの……聞いてもいいですか?」
「答えられることならどうぞ」
「えーと……チームって……なんですか?」
「……本当に何も知らないんだね……まったく…夕くんも後輩くんが困るだろうに…」
「すみません…」
「サトくんは悪くないよ、素直に聞けるって大事だから。チームって……そうだな…俺から言わせたら、仲良しが集まってグループの名前を付けて遊んでるだけって事なんだけどね…」
「はぁ……なるほど……」
(やっぱり…僕には分からない…)
「僕には…その……そーゆー友達がいないので…ちょっとよく分からないんですけど…あの……悪いこととかは…」
「あ、はは…そうだよね、そうかそうか、イメージ悪いよね。ちょっとヤンチャなだけで悪い奴らではないよ」
「はっ……そうですか……」
残りのジュースを一気に飲み干す。
「僕、今日は帰ります」
「もう?彼らとは話していかないの?」
「……ちょっと……」
「またいらして下さい」
「また、来ても良いんですか?」
「もちろん」
「あ……はい。じゃあ…また来ます…」
帰るために立ち上がり<ハク>と言われた店の端のテーブルに集まっている人たちに意識を向ける。そちらを見ないようにカウンター向こうの三井に会釈をしてドアから出て行く。ふわふわとした気持ちのまま帰路につく里葉。
カランカラン
と鐘の音と共に閉まったドアの向こう、店の中でのその後の会話は知らない。
ハクのいつものミーティングが終わり、央歌はカウンターを見る。先程までいた小柄な客がいなくなっていた。
「三井さん、ここにいたお客さん帰っちゃったんですか?」
「そうだよ、ふふふ」
「……何でしょう…その笑いは」
「いやー久しぶりに可愛らしい子と話たな、と思ってね…」
「オヤジじゃないんだから…」
「サトくんなら大丈夫だよ。怪しい子じゃない」
「めちゃくちゃ避けられました俺…」
「ははは…可愛い反応だったよね」
「可愛い……ふっ……そうかも……思い返せば必死感あったかも……」
「また来るって言ってたよ」
「本当ですか?……また会ってみたいなぁ」
そう言う央歌の表情はいつもの優しい笑顔ではなくどこかいじめっ子の雰囲気ただよう笑顔だった。
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