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高等部のころ
《27》
しおりを挟む「剣…様……」
ここ、親衛隊の教室に顔を出したのは本川剣(ほんかわ つるぎ)生徒会の人間だった。
不意をつかれた顔をしているのは夕だった。里葉は状況が飲み込めなくキョトンとしている。
「なぜ?ここに……ご用事でも……」
「お~川口夕。お前だけ?そいつは?1年?」
「あ、はい。そうです…僕のチームの子です」
「へぇ……お前のチームねぇ……」
そう言うとズカズカ入ってくる。大きな人で真上から見下ろされている。
「1年、俺の事知ってる?」
「あ、はい……あの中等部の時にお見かけしました。生徒会の副会長様ですよね……」
「そう、ちゃんと知ってるな。よしよし。ん~中等部の時もいた?1年坊主…」
「……はい、あの僕はあまり目立たないので…」
「そっかぁ?悪くない顔立ちしてんじゃん…何?川口のチームなの?マジで?」
3年S組 生徒会副会長 本川剣、見た目通りの豪快な人だった。
(なんか……めちゃくちゃジロジロ見てくるんだけど…夕先輩も何も言わないし…)
「名前は?」
「へ?……あ、森です」
「ばーか下の名前だよ」
「里葉……です…」
(ば、ばーか!?)
チラリと見た夕は何やら手をおでこにつけて苦悶の表情で俯いている。
「里葉、俺の相手にならね?」
「え、えぇ!?」
「ちょっと、剣様!言いましたよね!?彼は僕のチームです。お手伝いチーム!相手はしません!」
「まじかぁ?俺がしたいっつってんのに?」
「こ、ここ困りますぅ…」
「くくく……焦ってボロ出てるよ里葉」
「え、え、え?なんの事ですかぁ?」
「お前の目、媚び売ってねぇぞ」
「え"……」
「あっはは……まじ良い!おい川口、俺に寄越せよこの子。可愛いがってやるから」
「ダメです!」
「ふぅん…庇うねぇ」
夕も里葉も黙ってしまった。何故かこの男の前では嘘が通用しないのだ。人を見る目が抜群で騙されてくれない。
「里葉は?俺じゃダメなの?親衛隊に入ってるくせに…本当は誰が狙ってる奴がいるのか?」
「僕は…1年の生徒会の皆様が…」
「はぁ?まじ?アイツらかよ……じゃ、あの中じゃ誰?居るだろ」
「いや、皆様が……」
「嘘つけ、剥ぐぞ」
(何だっこの人!!とんでもないなっ)
「あ、あの……」
「ほれほれ、俺に抱かれれば気持ちよくしてやるからさぁ。なんなら里葉一人だけ寵愛してやってもいいぞぉ?」
(江戸時代か!)
「くっ……」
「決まり、俺に部屋に来いよ」
「キイチ様!1年のキイチ様です…」
「……え……貴一?村上貴一?」
「はい、そうです……」
「あーなるほど……まじかぁ……里葉の事気に入っちゃったんだけど…え、無理?試しに俺に抱かれてみない?」
「しません。ごめんなさい」
「まじかよ……あーアイツに操立ててんのかよ…勿体ねぇなぁ」
「剣様、貴一様は大事にされている恋人がいらっしゃいます。それでもお手伝いがしたいという里葉くんのいじらしい気持ちを汲み取ってください」
夕がペラペラ喋り出す。
(ナイスだ僕!前に、何かの時のために考えてて良かった…)
里葉は満足気な顔で息をつく。
「でもさ、気が変わったら何時でも言ってこいよ。里葉、よーく覚えたぜその顔。育てがいが有りそうな面してるのな」
暇つぶしにここに寄ってよかったと言いながら去って行った剣。
「嵐が去って行った……」
出て行ったドアを見ながらボソリと夕が呟く。そして里葉に向き直り頭を下げる。
「ごめん、里葉くん……」
「え、いや夕先輩が謝ることでは…」
「あいつ…剣のバカ…ん"ん"……剣様……あれね……さっきのあれ」
「はい、大丈夫です。冗談ですよね?ちょっと分かりずらかったけど、唐突すぎてびっくりしました」
「あー……本気」
「へ?」
「だから…奴は本気だよ。あれ」
「嘘だ……いやいやそんな、夕先輩ったら」
「変な虫に気付かせちゃったぁ~」
夕は頭を抱えて天を仰ぎ見る、フルフルと顔を振ると悔しがった。
「あ"~僕だけが里葉くんの魅力に気付いてたのにぃ!僕の独占だったのにぃ!!」
キッと涙目で見られ
「しかもごめん~。本当に気を付けて!あれでも人気あるし~。報復する様な親衛隊は剣派にはいないと思うけど…でもでも3年だからすぐ卒業してくから…」
若干支離滅裂になりながら、珍しく夕が謝って来た。予想外のことが起きて軽くパニックなっているらしい。
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