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中等部のころ
《15》
しおりを挟む次の日、里葉も意地になってきていた。教室を見回し、きゃぴきゃぴと可愛らしい容姿のグループを観察する。少し近くに行き、会話の内容を盗み聞きする。
「ねぇ今日の副会長見た?」
「見たよ~カッコよかったね」
「僕はね~今はまだ見習いの1年生を注目してるんだよ~」
「あーコウキ様でしょ~」
「もちろーん白井学園の時からの追っかけだもん」
(あ、これはビンゴ)
前田がいない隙に情報収集を進めようと考えていた。あわよくば、そのまま入ってしまったって良かった。なるべくニコニコしながら近づく里葉。
「ねぇねぇ……あの……ちょっと聞こえちゃったんだけどさ…生徒会の話…」
「え?なに?」
「あ、僕もカッコイイなぁって思ってて……」
「え!そうなの!?そうだよね!!」
思った以上の反応でびっくりする。
「誰?誰派!?」
「あー……えと……僕も…同じ1年生の…」
「コウキ様?キイチ様?ショウ様?もしかして…ヤナ様!?」
「え……と……個人的って言うより…皆さんが、カッコイイなぁって…僕と違うから…」
「あーそうなんだぁ…でも分かるぅ~」
「じゃあ、誰か特別にファンの人がいるって言う訳じゃないんだ!?」
「う、うん……ダメかな……」
「ぜーんぜん!そっちのが良いよ~」
「ライバル減るし、穏健派かぁ良いんじゃない」
「穏健派だと上に行けないし、生徒会の皆様と接触余り無いけど良いのぉ?」
「え!」
(何それ!願ったり叶ったりじゃん!)
「うん、うんうん。それが良いの!親衛隊でもそーゆーポジションあるんだ!」
「あるよ~ってか親衛隊に入りたいの?」
「出来たら…どうしたらいいか知らなくて……」
「あー白井学園組じゃないとね~」
「じゃ、今日親衛隊の部屋に行く?」
「うん、行く!」
(やった!自分で行動して自分で決めた。自分の身を自分で守れる)
トントン拍子で話が決まっていく、里葉は周りの皆が何故そこまでして止めるのか、怒ってびっくりするのか分からなかった。里葉自身、権力のトップになろうなんて微塵も考えていなかったので、そういった事が関係しているのだろうと予想していた。
(今はたまたま、特殊な環境に居るけど…高校卒業したら自活して、武藤家に迷惑にならないようにしないと…)
元々、住んでいる世界が違うと感じている里葉。今は子供で何も出来ないからお世話になっているけれど、ぬるま湯に浸かるように何時までもこのままで良いはずが無いと思っていた。自分には分不相応で居心地も悪い。いずれ離れるつもりなら、最初からなるべく手を借りたくなかった。
(質問した事にストレートに答えてくれない事ばかりだ……そんな常識の世界にずっと居たくない)
放課後に親衛隊の幹部と会える約束をした丁度その時に前田が教室に帰ってきた。そして、里葉の姿を瞳にとらえると目が大きく開かれた。ズンズンと教室を歩いて里葉のもとに来る。
「森くん…何話してるの?」
「…何でもないよ、じゃあ後でお願いね」
そう告げると里葉は自分の机に戻った。その後を追いかける前田。
「ちょっと森くんっ」
少し責めるように名前を呼ばれる。自分の席に着いた里葉は前田を見上げてニコニコした。
「なに?前田くん…僕が何かした?」
「だって、親衛隊メンバーと何話してたの!」
「…僕の自由じゃないかなぁ」
「まだ入ろうって思ってるの…?」
「そんなに大騒ぎすることなのかなぁ…なんで?何が悪いの?」
「だから……それは……」
「誰も明確な答えを言ってくれない…それなのに、僕には聞けって言うの?」
里葉はイラついていた、思惑通りに動かない一般人だと言われている気分だ。どうして自分だけ皆の言うことを聞かなければいけないのか、ハッキリしない前田や進に腹が立つ。ふと、笑顔が消えた。
「自分で見つけるから……答え…」
それきり前田の方を見ようとしなかった。
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